「ラブライブ!サンシャイン!!」12話レビュー~普遍のオンリーワン~

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©プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
予備予選の結果が発表される「ラブライブ!サンシャイン!!」12話では、エントリー番号順の合格発表を名前順と思い込み当落を勘違いする場面が描かれる。基準が1つとは限らないのは、この12話全体における発見だ。
 

 

<1つの基準の危険性>

物事にはそれぞれ違った事情があるもので、1つの基準だけで考えるとしばしば間違いを犯す。果南は魚という基準でしか考えなかったから合格祝いに干物か刺し身かしか思いつかなかったし、合格に加えてPVの再生数やコメントに喜んでいた千歌はそれが入学説明会の参加希望者増に繋がっていないと知れば(=入学希望者だけを基準にしてしまえば)打ちのめされずにおられない。そして「学校を救ったスクールアイドル」として、その基準はμ’sと自分達の違いに収れんしていき、東京でSaint Snowと再会することになる。
 
Aqoursは物語としても、出自としてもμ’sと同じ1つの基準で比べられる立場にいるが、劇中でも劇外でもスクールアイドルを巡る状況は全く別だ。同じ1つの基準で比べれば、どうあっても敵うことはない。それでも果敢に挑むのはA-RISEの方の後継であるSaint Snow、鹿角姉妹の役割であって、自分達ではないことを千歌達は知る。
 
 

<共有される基準、普遍の基準の可能性>

しかし、八方塞がりにも思える道を切り開くヒントは確かに示されている。予備予選でのパフォーマンスを褒められた鹿角姉妹は、PVの再生数ではAqoursの方が上だからと謙遜した。そう、基準は1つではなく複数あり、どの基準を用いるかによって合格発表の順番のように並び順は変わる。
μ’sは音ノ木坂学院に何も残さなかった。優勝の記念品や記録は素晴らしいけれど、それが1番大切なものではなかったからだ。唯一絶対の「基準」ではなかったからだ。
μ’sが本当に残していったのは誰かと追い抜き追い越しされる基準ではなく、別の、誰かと共有される基準であることを千歌は悟る。「何もないところを、何もない場所を思いっきり走ったこと」……それはラブライブでなくても、スクールアイドルでなくても、アニメでなくても、誰もが目指すことができる輝きの境地。その存在を示したことこそμ’sの叶えたみんなの夢、μ’sの伝説。
 

<たどり着く普遍のオンリーワン>

「0を1にしたい」……かくて千歌の求める「輝き」は羽化する。それはμ’sの基準を共有したから生まれた彼女だけの基準であり、同時に彼女から私達へ共有できる基準だ。かつてμ’sが自分達の行く末を決めた場所をそうと知らずに「聖地巡礼」する千歌達の姿は、μ’sと並んで空へはばたく姿なのである。
 
 
 
……というわけでサンシャイン12話のレビューでした。千歌が千歌だけでは受け止めきれないものをAqours全体で受け止めた前回から、だからAqours全体でμ’sの理念を継承できるという壮大さ。1期最終話前でここまでたどり着いちゃうか、すごいな。
「複数の基準」という意味では、前回の振り返りもヨハネがやると別の基準に染まるのが楽しかったです。なるほどラブライブは彼女基準になるとラグナロクになるのか。「私の姿を検知してる!?」が回り回って正解してる(ヨハネの方が検知する側になってる)とか本当に色々持ってる娘だ……
次回はいよいよ1期目の最終回。もちろん2クール目(と映画)もありますがこれも紛れもなく最終回なのは間違いないところで。次回、千歌達のはばたきがまずどこにたどり着くのか楽しみです。