魔力なき魔法――「魔女の旅々」2話レビュー&感想

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
フランの下で魔女となって3年が過ぎ、すっかり旅慣れたイレイナが描かれる「魔女の旅々」2話。今回彼女が訪れる国は文字通り魔法の使える人間しか入れず、またその最高位である魔女は相当にチヤホヤされるはずなのだがイレイナはどこの宿からも宿泊を断られてしまう。まるでイレイナの方が魔法をかけられたよう――そう、ここは「魔法使いの国」。
 
 

魔女の旅々 2話「魔法使いの国」 

 

 

 

サヤがイレイナにかけた魔法

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
イレイナがどの宿からもすげなく宿泊を断られたのは魔女の証、灰の魔女を証明するブローチをいつの間にか紛失してしまっていたからだった。やむなく泊まった安宿に務めていたのは入国早々ホウキでぶつかってきた魔導師のサヤであり、彼女はこれ幸いと魔女見習いの試験を突破するための師匠役をイレイナに頼むわけだが――それは出来すぎた偶然ではなく、サヤが狙って起こしたものだった。紛失したブローチは実はサヤが盗んだものであり、彼女はイレイナに一緒にいてほしくてそんなことをしでかしていたのである。
この世界において魔法とは原理原則の定められたものであるけれど、不可思議なことを巻き起こすものであることは変わらない。衝突事故を起こした相手から魔法を教わる不可思議を起こしたサヤは、杖を使わずともイレイナに魔法をかけていたのだ。
 
 

イレイナが解いた魔法、新たにかけた魔法

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
サヤはイレイナに魔法をかけていた、騙していたわけだが、彼女がそんなことをしたのは魔女見習いになるためではなかった。魔女になるため遠い国からやってきた妹が先に魔女見習いになってしまい、1人取り残された孤独に耐えられなかったのだ。孤独は心を病む、平常でいさせなくなる力を持つ。誰に呪われたわけでもなくとも、サヤもまた、この国で魔法にかけられていたのである。
 
だからイレイナはサヤの過ちを叱ると同時にそれだけでなく、彼女にかけられた魔法を解いてみせる。1人と孤独は違うものなのだと。何かに本気で立ち向かう時は1人でなければならず、しかしそれは誰とも繋がらないことではないのだと。イレイナの教えはサヤが孤独に負けないための、1人で立ち向かっていくための「魔法」だ。未だ魔女見習いにも至らぬ、幼い少女がもっとも必要としていた「魔法」。魔力なきその魔法は、かつてイレイナがフランから教わった世知と同じ種類のものなのだろう。
 
旅立つイレイナが授けたお揃いの帽子は、彼女が傍にいなくともサヤに1人と孤独の違いを教えてくれる。そしてその帽子はきっといつか、2人を再び巡り合わせる魔法の帽子ともなるのだ。
 
 

感想

というわけで魔女の旅々の2話レビューでした。ズルくて甘くて脆い、タイプが違うはずなのに似た2人のお話。イレイナがまるで昔の自分を見ているような気分になったのも「魔法使いの国」で起きた魔法と言えるかもしれません。イレイナがフラン先生みたいな言い草でキノコを押し付けるシーン、笑ってしまいました。割と好みの分かれる作品かなという印象も改めて受けますが。
サヤ役の黒沢ともよさんが新型コロナ感染とのことで、無事の回復をお祈りします……