「ラブライブ!サンシャイン!!」2期7話冒頭、地区予選の結果はチャートで発表されすぐには分からない。また、決勝に進出した結果を見ても千歌は夢ではないか確かめようとする。この2つに共通するのは、発表と判明や認識と実感に時間差があることだ。時間差、ズレ、つまり差異……この7話はそうしたものに千歌達が苦しめられ、救われもする話なのである。
ラブライブ!サンシャイン!! 2期 第7話「残された時間」
1.埋められない差異
最初に千歌達が味わうのは、差異がもたらすもどかしさだ。ラブライブ地区予選トップ通過という輝かしい結果を出しても、それは入学希望者の増加にはなかなか繋がらない。多くの人が見て興味を持ってくれることと多くの人が入学を希望してくれることの間には差異があるから、千歌達が奇跡を起こしたことがそこまで届いてくれるかは別の話になるのだ。
また、統廃合は翌日の朝5時まで判断を待ってもらえても、Aqoursにはもう入学募集のページを見守る以外にできることはない。時間の有無とできることの有無にも差異があるから、千歌達は前日の自分達の頑張りが時間差で報われることを期待するしかないのである。
最終的な入学希望者は98人。学校存続ラインの100人までわずか2人――そのほんのわずかの距離を、差異をしかし、千歌達は埋めることができない。二度も期限を伸ばしてもらった彼女達は既に十分に差異に助けられているのであり、都合の悪い差異だけ拒むことなど許されない。
差異にあがき差異を利用した浦の星女学院の統廃合への抵抗は、やはり差異によって終わったのだった。
2.差異のねじれの先
3話で示されたように、千歌達にとって学校存続とラブライブ優勝は異なるものでありながら不可分のものだった。振り返ってみるなら彼女達の戦いは、引き千切れそうな両者を繋ぎ止める、その間にある差異をどうにか埋めようとする戦いだったとも言える。
だが意地悪な見方をするなら、それは両者の心中へも続く道だ。片方が進めなくなれば、差異を埋めるためにはもう片方も歩みを止めなければならない。千歌達もそう感じたからこそラブライブ決勝出場を辞退しようと考えるわけだが――しかしそもそも、差異とは埋めなければならないものだろうか? 2話で描かれていたように、2年や3年は責任を感じても善子は感謝しか感じていなかったように、差異とは人をバラバラにするだけでなく、互いに手の届かないものへの景色を見せてくれる「広がり」でもあったはずだ。
3.差異は希望へ反転する
「ラブライブで優勝して、浦の星女学院とAqoursの名を歴史に残してほしい」……千歌にそう訴える友人達は、同じ屋上には立たない。Aqoursと彼女達の立つ場所には差異がある。けれどその言葉は、違う場所にいるから口にできたものだ。差異があるから言えたことだ。
学校が統廃合されてもラブライブに出られるのは、両者が差異ある別のものだから。
優勝に価値があるのは、それが誰よりも差異ある存在の証だから。
それを叶えられる可能性があるのは、千歌達が友人とは差異ある場所に立っているから。
千歌達を絶望させた差異はこうして、希望へと反転する。μ’sと決定的に異なるAqoursの道はしかし、だからこそ同じ頂きを目指す。その時きっと、千歌もまた穂乃果とは差異ある主人公として――怪獣として、私達の心にその名を残すことだろう。
感想
というわけでサンシャイン2期7話のレビューでした。これだけ積み上げても届かない現実と、みんなで声をあげて泣かないのが印象的で。泣いたらそこで終わってしまうから、今はまだその時じゃない。話数としても折り返しであるように、これは1話の再出発なのだと思います。
あー、卒業後に僕の母校も改編されてなくなってしまったのを思い出すなあ。ちょっとだけ歴史に名は残ってるので、それを見るだけで確かに懐かしくもなる。
頑張れ、Aqours。