正解よりも本質を――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」4話レビュー&感想

せつ菜のライブに心動かされたのは侑と歩夢だけではなかった。活動を再会した虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会には、新たに宮下愛と天王寺璃奈が訪れ入部を希望する。そして、同好会は新たなソロアイドルという新たな一歩を模索しており……
 
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」はこれまでの3話、歩夢・かすみ・せつ菜(菜々)と三者三様に悩める少女を取り上げてきた。それを侑が受け止めることで主人公の魅力が引き立てられてもしてきたわけだが、今回の主役である愛は侑に悩みを投げかける形を取らない。エマが言うようにこれまではスタートラインに立つための話であり、この4話こそは本作の「新たな一歩」の始まりなのである。
 
 
 
 

1.正解を見抜ける少女・宮下愛

新たに加入した部員の1人、宮下愛は一言で言えば「正解を掴む少女」だ。成績も良ければスポーツも助っ人ができるほど得意、おまけに人と打ち解けるのも速いのは、彼女がそれらどれもで勘所を押さえている証拠であろう。
象徴的なのは「スクールアイドルには何が必要なのか」と問われる場面で、かすみが言うようにこの問いにははっきりした答えなどはない。ならば愛が「分からない」と答えるのは無知ではなくむしろ本質的な回答であり、だからかすみも問いの意図の解説に繋ぐことができる。もちろん愛自身はそんなことまで考えてはいなかったはずで、つまり後にエマが指摘するように彼女は無自覚に――直感的に物事の正解を掴む優れた感覚を有しているのだ。
 
 

2.中川菜々=優木せつ菜=宮下愛!?

しかしそんな愛も、ソロとしてスクールアイドルをするという方向性には困惑してしまう。勉強でもスポーツでも人付き合いでも、彼女は相手の勘所を、正解を巧みに掴んできた。しかしソロアイドルでまず勘所を掴むべき相手は自分自身であり、そこには基準を定めてくれる他者はいない。ここで必要なのは他者由来の正解ではなく自己の中の本質であり、愛はそれを見つけられない。
 
先に触れたように愛はコミュニケーション上の正解を連発し、過剰なほどスピーディに皆に溶け込んできた。それは彼女がキャラクターとして「優等生」である証拠だが、物語に置ける優等生とは他者に出番を譲って埋没しがちなキャラでもある。「自分を後回しに」しがちなキャラでもある。前回は菜々とせつ菜という対照的に見える2人が実は同じ「優等生」という話だったが、彼女達とも対照的に見える宮下愛もやはり同じように優等生としての問題点を抱えていたのだった。
 
 
 

3.正解ではない、宮下愛の本質とは

正解もルールも頼りにならないから愛は悩むわけだが、本質は正解やルールに則っているとは限らない。ならば愛が本質を見つけるために必要なのは、一度そこから離れてみることだ。土曜のランニングの集合時刻は9時というのがルールだが、愛は早起きに任せて1時間早くレインボー公園を訪れそれがエマへの相談に繋がった。
そして愛は、エマの「そろそろ走ろっか」「9時だしもう行く時間だよ」という言葉を勝手に「ソロでそろそろ」「"くじ"でい"くじ"かん」と駄洒落として受け取って吹き出してしまう。言われて初めて気付いたように、エマ自身はそんなことを意識したわけではない。つまり愛の解釈はエマの言葉の解釈としては「不正解」だ。けれど結果的に、それは2人にとってとても楽しいものになった。ルールや正解から離れたことが、むしろ良い方向に働いたのだ。
 
そうして、続くエマの言葉に愛は自分の本質が正解を掴む力とは少し違うことを知る。自分が入ったことによって皆の笑顔が増えた。一度はバラバラになった集まりが、以前よりずっと滑らかに動くようになった。
4話の冒頭、皆は方針相談でめいめいの大好きを好き放題言っていたが、これがまとまったのは愛の一言がきっかけだった。思い返せば1話で侑と歩夢に同好会の部室に教えた時も、3話で猫のはんぺんの事情を説明した時も、今回璃奈の無表情をウキウキと説明した時も、愛はいつも全然関係ない(ように思える)ものを繋げてきた。アバンでだって、「未知なる道」と知らずに2つの言葉を繋げていた。愛の本質とは正解を掴む力ではなく、駄洒落のように繋ぐ力にこそあったのだ。
 
自分の本質が"ミチ"にあることに気付き、愛は歓びの歌を歌う。そしてファンたる侑は彼女の歌に共鳴し、他の皆の本質も見てみたいと希望を述べる。愛と皆という、全然関係ないものを繋げる。
愛が見つけ切り開いた道、未知なるミチは、全く違う道を歩む歩夢達にも道標になってくれることだろう。
 
 

感想

というわけでニジガクの4話レビューでした。「なんで駄洒落なのか?」というのが解けずに悩んだのですが、駄洒落に繋がるのが正解ではなく本質ではないかと思いついてようやく自分の中で話が通りました。キャラクター的な優等生というのも解釈の補助線になってくれた部分で、先週さんざん悩んだ甲斐があった……
前回との繋がりが特に顕著ですけど、1話2話も振り返ってみると本作は「自分を大切にしよう」というのが一貫したテーマなのではないかなと思います。他者をないがしろにすることが怖くて動けない娘達が、その優しさを失わず自分を強く持っていく。そんな物語が見られるのではないかな、と。
 
さて、次回はエマと果林のお話なのかな。となるとCパートのエマ、「全然関係ない」果林のことを考えて窓の向こうを見ている……?
 
かすみと菜々の眼鏡、全然違うものを繋げるスーパープレイ。