あなたあってのみんなだから――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」5話レビュー&感想

本作の登場人物、エマ・ヴェルデと朝香果林は仲がいい。ただ、それはかすみとせつ菜のような同好のライバル的な仲の良さとは少し違う。当初はアイドルとモデルでジャンルの異なる2人の仲の良さは、どちらかと言えば侑と歩夢のような仲の良さに近い。ならばエマを主体に2人を描く「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」5話にしても、そういう目線は援用することができる。
 

 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第5話「今しかできないことを」

 

1.エマの見つめ直す本質

今回の主役であるエマはスクールアイドルに憧れてスイスからやってきた留学生であり、なりたいアイドル像も前回の愛のようには悩まない。「見てくれた人の心をぽかぽかさせたい」……実際、彼女の牧歌的な言動は見ている者の心を穏やかにするもので、見る者はそこに惹きつけられる。スクールアイドル同好会の仲間も増えたことで、彼女の魅力は今までより多くの人に届こうとしている。
けれど多くの人に届くことは、それまで小数の人に届いていたものが疎かになる危険と隣合わせだ。エマの言動はこれまで誰より果林の心をぽかぽかさせてきたけれど、その魅力が広範に向けられるようになった今は以前ほどには届いていない。PV撮影で再把握を求められたように、エマは自分のアイドル像(本質)を再把握しなければならなくなっている。
 
 

2.果林が目をそらす本質

また今回のもう1人の主役、朝香果林はこれもまた自分の本質への意識を強く持っている。
 
「クールでかっこつけて、大人ぶって。それが私なの」
 
そうあることを自分に強いている時点でそれは彼女の本質ではないわけだが、果林はそういう自分に囚われている。というよりも、自分を守るためにそうあろうとしている。中川菜々は他者を尊重し過ぎるあまり、宮下愛は他者の正解を掴む能力が高いあまりに自分を後回しにしてしまっていたが、果林は自分を守るために自分を後回しにして傷つけてしまっているのだ。
嗜癖を含むと多少複雑になるが)自分を傷つける行為そのものを好んで行う人はまずいない。別の何かを守りたいからこそ人は自分すら傷つけ、時にはそれが更なる泥沼を生むのである。
 

3.あなたを大切にしてこそ、私は自分を大切にできる

以上のように、エマと果林の抱えている問題は全く別のようで「本質の見つめ直し」なのは同じだ。だから"アイドル"であるエマは果林を救いに行く。自分を見つめ直すことによって、救いに行く。
「見ている人をぽかぽかさせる」ことは1人だけに向けられたものではないが、まず目の前の1人を大切にすることから始まる。エマがぽかぽかさせたいみんなは果林も含めたみんなであって、果林抜きではありえない。「みんなの前にまずあなた」を大切にすることで、エマは自分を大切にすることができる。
 
そしてこの目線は侑がせつ菜を蘇生させた時と同じ目線であり、応援する相手が増えた今も歩むに対して向けている目線と同じものでもある。「皆のために」を理由に自分を後回しにしていた菜々を救ったのは侑が自分も同じように大切にしてほしいと願ったからだし、侑は歩夢の魅力に対する答えで彼女を「ぽかぽか」叩かせている。侑とエマはファンとアイドルという違いはあるけれど、目の前の1人を大切にする姿勢は変わらないのだ。あなたのことを私は見ているし、私のことをあなたは見てくれている。みんなを大切にすることは、自分を、あなたを後回しにすることじゃないよと2人は別の形で教えてくれている。
 
 
「会っちゃったら、自分の気持が止まらなくなりそうで怖かったの。それでも、動き始めたなら止めちゃいけない。我慢しちゃいけない」
「自分に素直になりたい」

 

 
 
かつて1話で歩夢が口にした言葉はそのまま果林に必要なもので、自分への鼓舞だったそれをエマは果林への励ましにする。
 
 
「スクールアイドル、できるかしら、私に」
「やりたいと思った時から、きっともう始まってるんだと思う」
「……うん」

 

 
素直な思いを口にして、それを受け止めてもらって。そうして、果林は素直に笑顔になれる。そこにこそ、その人の本質は現れるのだ。
 
 
 

感想

というわけでニジガクの5話レビューでした。果林はエマを見ているのが好き、というのがたくさんのカットで感じられて、コンビとしてにピックアップがとても活きていた回でした。対外的には整ってるけど部屋の中はちらかっている、というのもクールキャラで通してきた彼女の内面に合致していて印象的。
 
それとエマがあまりに美味しそうに食べるので今朝は卵ご飯(うっかり切らして醤油抜き)をにしてみたのですが、これがサバの塩焼きとすごく相性良くてですね。醤油が入ってないから塩気がないんですが、その分サバの塩気を卵が受け止めてとてもまろやかな辛さが味わえました。また今度食べよ。
 
さて、次回はOPで既に個性を爆発させている天王寺璃奈が主役のようで。どういう経緯でああなるのか、とても楽しみです。