想像と現実は不均衡――「おちこぼれフルーツタルト」4話レビュー&感想

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
「おちこぼれフルーツタルト」4話の始まりは、テレビを食い入るように見つめる衣乃達から。駐車場でとはいえ見事に初ライブを成し遂げたフルーツタルトだが、翌朝のでの扱いは子猫のニュースにも劣る有様。
理想(想像)と現実には常に落差があるもので、緑へもが新メンバーとして加入する今回はその落差が鍵となる。
 
 

 おちこぼれフルーツタルト 第4話「にゅーふぇいす!」

 

1.現実はいつも理想のようにはいかない

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会

ライブがなかなか盛況でもニュースで取り上げられなかったように、現実は基本的には理想ほど上手くいかないものだ。衣乃達の知名度は未だクラス中にも届かないし、ファンレターも届いたら届いたでなかなか厄介そうなファンからのものだったりする。ネズミ荘は関係者以外立ち入り禁止になっていても現実にはロコ達はそもそも連れ込むような相手がいないし、水着撮影の企画を受けても予算不足でまともな水着すらなかったりする。
画面でこれがもっとも強調されているのはもちろん胸の話で、ロコもはゆももっと大きな胸でありたいと願っている(理想)が現実には年下のへもよりも小さく、仁菜の商品サンプルの水着から合うものを探すことすら苦労するほど。理想に届かない現実は、いつだって歯がゆい。
 
 

2.けれど現実が理想を飛び越えることもある

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
理想に届かない現実は悩みの種だが、しかし現実がいつも理想の下をいくとは限らない。ファンレターがきっかけではゆは自分が衣乃にとって邪魔になってしまうのではないかと想像した(逆方向の理想を抱いてしまった)が衣乃がそんな風になるわけはなかったし、クラスメイトでファンになってくれた利音の応援は2人にとって想像よりもずっと嬉しいものだった。
こうした逆の事例が、特にはっきり描かれるのが新メンバーの緑へも関連だ。衣乃と女の子が一緒に寝ていれば連れ込みだと想像するのが常識的な(?)反応だが、衣乃を慕うへもがドジっ子を装って部屋に侵入していた現実は生半な想像の遥か上を行っている。彼女の移籍についても引き抜きなんてしがらみが大変ではないかとロコは想像するが、現実はリリと穂歩の腐れ縁と飲みで円満解決済みであった。
 
だからこの4話自体もまた、現実の方が理想を飛び越える形でエンディングに移る。へもの移籍は簡単には済んだけれど、彼女自身はけして気軽にそれを選べたわけではなかっただろう。前回の衣乃への応援にもあるようにぐいぐい自分の意思を主張するタイプではないし、途中参加という身には引け目もある。衣乃への欲望へは素直でも、フルーツタルトへ溶け込むのが容易とまでは考えていなかったからこそ写真撮影で物分りの良い後輩になろうとした。そういう困難さを、へもはへもなりに想像していたはずなのだ。
けれど飛び込んで見ればロコ達はすぐに彼女を受け入れていていて、そこに序列や上限関係を作るつもりはなかった。遠慮してもらおうだなんて最初から考えてもいなかった。現実は、容易くロコの想像の上を行っていた。
 

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
理想を捉える想像力は力になるけれど、時に身をすくませる恐怖にもなる。飛び込んでみた現実が良い意味で想像を越えていたことは、へもにとって良い経験になることだろう。
 
 

感想

というわけで、おちこぼれフルーツタルトの4話レビューでした。前回へもが初登場した時「移籍って大変なのでは?」と思ったが、リリさんそれ本当に通せちゃうのすごいな…… 衣乃のアブノーマルぶりがどんどん過激になっているのに、他にも同類が増えていくので見ている側の基準が狂っていくのも面白い。
次回はサイン作りということで、ここにまたどんな出来事が起きていくのか。楽しみです。