偽りからこそ生まれるもの――「ご注文はうさぎですか? BLOOM」6話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20201115235628j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
変わらないように思える日々の変化を描いている「ご注文はうさぎですか? BLOOM」、6話はチノがうさぎをもふもふするべく作戦を練るも転倒、しかし普段と違って逃げられない……というやりとりから始まる。計画そのものは失敗したが、得たかった変化は起きている。怪我の功名という言葉もあるように、変化とは思わぬところから起きるものだ。
 
 

ご注文はうさぎですか? BLOOM 第6話「うさぎの団体さんも大歓迎です」

 

1.入り口は思わぬ場所からこそ

f:id:yhaniwa:20201115235640j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
今回の前半で描かれるのはチマメ隊のイメージチェンジ=変化だが、チノ達は変わりたいと強く願ったり計画したりしたわけではない。「どんな時でも自然体」と格好つけた時は本気でそのつもりだったのが、次第次第に心揺れていったものだ。またそのイメージチェンジ自体も、ヘアカットしているのが誰か勘違いしたことやアホ毛に関する悩み、冗談がきっかけのカットミスといった偶発的な理由に起因している。彼女達の変化は本来変化のためのものではなかった――偽物だったのに、結果的に変化の入口となっている。
 
後編になると「偽物」が変化をもたらす様子はいっそう具体的になっていく。チノのワイルドギース&あんこ降霊術は冗談(偽物)だったけれども彼女がココアに似てきたことをリゼ達に感じさせるし、スペシャブレンドへのシャロの反応は彼女特有のもの=他の人にとっては偽物だが興味を引く理由になった。またその一般的なコーヒーとは違う(偽物的な)味は凛が常連になる可能性をもたらしたし、コーヒーではなくココアに変えれば(偽物にすれば)子供だって飲むこともできる。
 
 

2.偽物だから証明できること

 
偽物はどこまでいっても偽物だが、そこから変化や真実は確かに生まれる。ココアの舌はコーヒーのブレンドの差を分かってはいないけど、そんな彼女がチノのコーヒーが美味しいことだけは分かっていることは喜びに繋がる。また、店を訪れた子供達に対するチノの接し方はまるでそのお姉さんになったようで、そんな風に彼女が振る舞えることにココアとリゼは喜びを感じずにはいられない。
 
「おじいちゃん、私少しは変われたんでしょうか」
 
ティッピーにそう問いかけるチノの前に現れたうさぎは、アバン同様にやはり逃げない。うさぎが逃げないことは、本来どこまでいってもそれだけのことでしかないはずだ。けれどそこに、チノは自分の変化を確かなものとして信じることができる。「変わった」とそのまま言ってもらうより、遥かにしっかりした実感を得ることができる。
 

f:id:yhaniwa:20201115235708j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
「偽物でも」ではなく、「偽物だからこそ」それは存在しているのだ。
 
 

感想

というわけでごちうさ3期6話のレビューでした。同じ髪型にしても姉妹同一にはならないのに、カットミスで生まれたおそろの髪型にはむしろ義姉妹感の出るココアとチノの仲の良さと来たら。意図的に揃えるよりずっと仲良しぶりが伝わる心地よさ。コーヒーが飲めるようになることをすぐ青山先生の徹夜原稿に繋げる凛もまあ、本当に。前回に引き続き素敵な話が続く。
 
 

f:id:yhaniwa:20201115235723j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
しかし千夜のこの格好の古典正統派美少女っぷりたるや。というか今回彼女だけ私服3種という素晴らしさ。