枯渇したのは魔法力とシリアスさ――「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」7話レビュー&感想

 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
お色気設定を普段遣いしながら展開そのものはシリアスな「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」。しかし、その7話はコミカルさ全開の内容だ。ヨーロッパで日本的な土偶が見つかるのもそうだし、ホラー作品のテンプレートのような展開をたどりながらも症状が巨乳化なので常に笑いが付きまとう。
抑揚(調整)は効いているが根幹の方がおかしい――そう、これは芳佳の現状と同じものである。
 
 

ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第7話「ポヨンポヨンするの」

 

1.芳佳の魔法力が枯渇する時、物語もまた飛べなくなる

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
5話で魔法圧の調整能力を取り戻した芳佳は前回こそ飛べていたものの、今回はアバンの出撃早々に飛行不能に陥ってしまう。原因は魔法圧というポンプではなく、その接続するプールに水=魔法力を注ぐ管が壊れたままだからというものだった。本ブログでは魔法圧の不調を芳佳というキャラクター、およびその物語の不調になぞらえて捉えてきたが、芳佳は確かにそうした面でも調子を取り戻している。自分が「変わる」「変わらない」を超えて他者を「変える」性質を5話で見せた芳佳は、キャラクターとしても物語のポンプ(制御)役を再び演じられるようになってきた。
 
しかし今の芳佳はポンプ機能こそ回復していても、肝心の魔法力が枯渇してしまっていて空を飛ぶことができない。それをこれまでと同じように捉えるなら、芳佳だけでなく物語からも魔法力に象徴される何かが枯渇してしまっているということだ。そして、この7話から決定的に枯渇しているものとはもちろん――「シリアスさ」である。
 
 

2.今回リーネが芳佳を守るということは

最初に述べたように、今回はコミカルさ全開だ。症状が巨乳化だからまず見た目だけで笑いに繋がるし、呪いに対するキャラの反応の誘う楽しさもある。通り過ぎたと思いきや別の場所から迫ってきて……などというマニアでなくとも分かる定番展開との合わせ技は、恐怖どころか安心感すら感じさせるほどだ。この7話は脚本の調整力(ポンプ)を完璧に機能させると同時に、根っこにシリアスさを持たせないことでその枯渇を表現していると言える。
バルクホルンが涙を流した前回までで本作は、シリアスさをひとまず使い切ってしまったのだ。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
ならば当然、芳佳を通して物語はその回復に務めなければならない。なにせ彼女は女の子の胸を揉めば一時的に魔法力が回復するおっぱい星人性癖の持ち主であり、彼女の魔法力が回復すれば連動して物語はシリアスさを取り戻せるのである。本作がシリアスな展開に戻るためには、芳佳が安心して女の子の胸を揉める環境の回復は絶対に必要だ。
 
「芳佳ちゃんは私が守る!」というリーネの言葉は大げさでもなんでもない。女の子の胸が病気の象徴になってしまうような世界は、「おっぱい怖い」なんて思ってしまう世界は芳佳が生きていける世界ではなく、この騒動の鎮圧は間違いなく芳佳を守ることに繋がる。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団


「リーネちゃん、あの時触れなかった分、触ってもいい?」
「え……だ……だ……駄目ぇーー!」

 

 
全てが終わった後、芳佳は再びリーネの胸を揉まんとする。彼女の魔法力、そしてそれを供給する管は未だ直ってはいない。けれど、回復する手段は一応取り戻すことができた。芳佳を助けたいのに事態を悪化させてしまったとリーネは気に病んでいたが、彼女は立派に芳佳を助けることができたのだ。
 
 

感想

というわけでストパン3期RtBの7話レビューでした。きみはじつにばかだな(褒め言葉)
本作のレビューには毎週なかなか手こずっていますが、今回も魔法力=シリアスさという紐付けがなかなか思い浮かばず、「何がしたいんだお前はー!」(byバルクホルン)状態でウンウン悩みました。浮かべば大変ノリノリで書けましたが。ギャグ回を真顔でレビューするのがたまんないほど好きなのです。
 
もちろん、その気持ちよさはゲラゲラ笑える楽しさあってこそ。各キャラが「(頭文字)ケケケーー」とかリーネが愛情たっぷりに微笑んで「芳佳ちゃん。おっぱいは、怖くないよ」とか正気にては大業はならずというレベルでした。脚本会議も収録も大変はっちゃけた感じだったのではないでしょうか。
シリアスさの魔法力が回復するまでどんな話が待っているか、次回も楽しみですね。