木霊する輝き――「ラブライブ!サンシャイン!!」2期12話レビュー&感想

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
いよいよラブライブ決勝の時を迎える「ラブライブ!サンシャイン!!」2期。12話の始まり、千歌はかつて「0」だった時の紙を見る。曜は閉校祭を思い出し、皆は練習の日々を振り返る。それらはみな過去のリフレイン(繰り返し)だ。過去に戻ることはけしてないけれど、それはその消滅を意味しない。今回は過去を見つめ直すことで、千歌達が届かぬ過去に肩を並べるお話だ。
 
 

ラブライブ!サンシャイン!! 2期 12話「光の海」

 
ラブライブ!決勝がいよいよ明日に迫り、東京へ向かうAqours
神田明神へ参詣に訪れると、浦の星女学院の生徒たちが奉納した、Aqoursを応援するたくさんの絵馬を見つけ、浦の星のみんなの気持ちに胸を打たれる。
同時に、大勢のスクールアイドルがそれぞれの優勝を願って奉納した絵馬が並ぶ光景を目の当たりにした千歌。
応援に駆け付けた「Saint Snow」に、以前自分が尋ねた“勝ちたいですか?”という問いを返されるも、自分たちと同じ想いを持ってラブライブ!に臨むスクールアイドルたちの存在を改めて感じた千歌は、その問いにどうしても答えることができなかった──。

 (公式サイトあらすじより)

 
 

1.過去とは繰り返されるもの、自分に帰ってくるもの

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
東京を訪れ明日のラブライブ決勝に備える前半、こちらでも描かれるのは過去のリフレイン(繰り返し)である。かつて東京を訪れた時の苦い思い出であったり、再び登った神田明神の坂道に見る成長であったり、そこを訪れてくれていた仲間達であったり。そして千歌は聖良に、かつての自分の問いを投げ返される――「勝ちたいですか?」
 
千歌は問いに答えられない。聖良に問われて彼女は感じたのだ。過去とは繰り返されると同時に、枕投げのように自分に帰ってくるものでもある・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と。だから怖くもなる。初めて東京で歌った時のAqoursの得票は0だった。帰ってくるだけの過去は無いと突きつけられたのだ。ならば明日自分に帰ってくる過去は果たしてどうなのか、と。
だから決勝当日、9人が会場集合の自由行動を選ぶのは必然なのだろう。自分を見つめ直すことは自分の過去を見つめ直すことであり、つまり自分の中で過去を繰り返し自分自身と過去の枕投げをすることなのだ。
 
 

2.問いかけに込められたものは

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
自分を見つめ直す時の中で、Aqoursの皆はそれぞれ千歌に聞かれたことを思い出す。繰り返す。「勝ちたい?」と問われて、自分がどう答えたかを。
その答えは1人1人違う。かつて「0を1にする」ことを目標とした彼女達は既に個々が立派な1であり、1人として同じようには答えない。
けれどそれはAqoursが散り散りになることを意味しない。千歌達の1としての差異は互いを引き裂くものではなく、Aqoursを広げるものだ。
誰一人として同じ動機は持たず、しかし皆の中に勝ちたい思いがある。彼女達の答えを千歌は思い出す。自分の問いに答えてくれた皆の言葉を、自分の中で繰り返す。それはある種の「木霊」だ。反響して大きくなって帰ってくる、1人ではできないリフレイン。
 
千歌が聖良の問いに答えられなかったのは、自分が勝ちたいのか分からないからではない。勝ちたいと思っていいか分からなかったから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だ。今のこの自分の気持が一人身勝手なものではないかと、臆病になってしまったからだ。だから問いかけながら最初は描かれなかった千歌の表情は、皆の答えと共に明るくなっていく。自分の中の勝ちたい気持ちは皆への問いで反響し、大きく木霊して帰ってきた。千歌の思いはけして身勝手なものではなく、帰ってくるだけの過去は確かにあった。
だからかつての「0」は飛んでいく。その悔しさも今は全て、自分と自分達の「1」の中にある。自分の中に帰ってくるものになっている。
 
 

3.木霊するスクールアイドルの輝き

そしてこの自由行動からの集合は、過去が繰り返すものであることに二重の意味を持つ。
1つはもちろん、今回これまで描かれたように過去の肯定だ。バラバラの状態から集うAqoursの姿は、9人揃うまでのあの過去を肯定する。
そしてもう1つは、これが未来に繰り返される過去になるようにとの願いだ。ラブライブ決勝を終えれば、3年生が卒業すればAqoursは再びバラバラになる。けれど過去が繰り返すものなら、未来でもきっと9人は再び揃うことができる。それは今とは違う形かもしれないけれど、きっと。
 
過去は現在へ繰り返す。なら、過去に応えよう。
現在は未来に繋がる過去になる。なら、現在を精一杯の過去にしよう。
 

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!


それを知って進み、歌う千歌達の姿は見る者を魅了する。かつてμ’sの輝きに心奪われたAqoursの輝きが、見る者の心を同じように奪う。
μ’sに木霊して生まれたAqoursは、自らもまた誰かの心に木霊する存在に至ったのである。
 
 

感想

というわけでサンシャイン2期12話レビューでした。千歌が聖良に返された問いに答えられないのはなぜか、を考えたらAqoursのたどり着いた場所にまで繋がってくれました。すごいな、千歌達、本当にすごいところまで届いたんだな。千歌達は千歌達の物語をやり遂げているだけなのに、それがμ’sから続く存在であることと肩を並べる存在であることを内包している巧みさに座布団3枚あげたい気分です。もう1回言うけどすごい。
 

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あと前回と言い、千歌と笑い合う時の曜の声が聞いていてとても切なくなります。「今ここにしかないもの」がたっぷり感じられるというか。微笑みながら泣きそうになってしまう。
 
さてさて(劇場版あるけど)TVシリーズは次回でとうとう最終回。今回だけでスクールアイドルとしては1つの頂に至った感がありますが、残りで何を見せてくれるんでしょうか。