掛け持ちが広げる世界――「ご注文はうさぎですか? BLOOM」10話

f:id:yhaniwa:20201215040335j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
夏から冬へ、季節も人も変わりゆく「ご注文はうさぎですか? BLOOM」。クリスマスを間近に控えた10話、ココアはフルール・ド・ラパンでも働き始める。バイトを「掛け持ち」しているわけだが、掛け持ちは人が役職を兼任するものだけとは限らない。例えばカメラで一度に2人を写すのは、見ようによっては1台のカメラが2人分のカメラを兼任――掛け持ち・・・・しているとも言える。今回は掛け持ちが視野を広げるお話だ。
 
 

ご注文はうさぎですか? BLOOM 第10話「ハートがいっぱいの救援要請」

 
 
 
冬がやってきて、クリスマスが近づいています。
ココアは、シャロと同じようにバイトを掛け持ちしてお金を貯めようとしていました。
書店のバイトでは青山さんのサイン会開催のお祝いとしてみんなが集まります。

公式サイトあらすじより)

 

1.掛け持ちするのはバイトだけとは限らない

 

f:id:yhaniwa:20201215040447j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
シャロ「ココアがいなくなってちょっと寂しいなんて、思ってないんだから!」
 
ココアの掛け持ちしたバイトはことごとくシャロとかぶっており、シャロは移動する度にココアの不在を寂しがっては打ち消す。シャロがバイトを掛け持ちするのは生活のためだが、ココアが一緒のそれは憩いの時間の意味も持ち合わせているのだ。つまりこの時、バイトはシャロの仕事と憩いを掛け持ち・・・・している。掛け持ちは大変なものだが、何を掛け持ちするかによっては楽しさも生まれてくることがある。
 

f:id:yhaniwa:20201215040500j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
シャロ「そんな!せっかく働いたお金なんだから、自分のために使ってよ」
ココア「使ってるよ?」
シャロ「え?」
ココア「私が楽しいから勝手にやるの」

  

掛け持ちしてまで稼いだバイト代はプレゼントより自分のために使うべき、と遠慮するシャロに、ココアは自分が楽しいからこそするのだと返す。そう、彼女にとってプレゼントとは、相手の喜びと自分の喜びを掛け持ちしてくれるものなのである。
 
 

2.新たな役を"掛け持ち"しよう

f:id:yhaniwa:20201215040515j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
前半の話から見えたのは掛け持ちという概念の拡大だったが、後半ではまた新たな可能性が見えてくる。ココアとリゼが多忙で手が空かないにも関わらず店に多くの客が訪れてくれるようになったラビットハウスでは、当然人手が足りない。チノが選んだ打開策は、甘兎庵とフルール・ド・ラパンで働く千夜とシャロにもラビットハウスの仕事を手伝ってくれるよう――つまり掛け持ちを頼むことだった。以前のままなら自分で頑張るだけだったであろうチノはしかし、そうでない自分を持ち合わせることができた。
 
そもそも掛け持ちがなぜ存在するのかと言えば、一人一役では不足があるからだ。それは別に生活費に限ったことではない。リゼだっていつも頼りになるお姉さんではないし、ココアだって時にはお姉ちゃんではなくサンタさんになる時もある。複数の役(ロール)を掛け持ち・・・・することによってこそ、人には幅というものが生まれる。ならばチノが切り開ける道もまた、自分の役を増やすことにあった。
「1人で無理せず、素直に人に頼れる自分」という役を掛け持ちできたことこそ、今回チノが遂げた成長なのである。
 
 

感想

というわけでごちうさ3期の10話レビューでした。「偽者」を裏テーマ的に見立てていますが毎度表に出すのはむしろ浅い、掛け持ちで書けそうだが後半をどうまとめたら……とウンウン悩んでこのような読み解きに。な、難題だった……
 
珍しく次回に続く話になったことで、これまでとちょっと違うしかしもっと素敵な話になる予感があります。前半のシャロの寂しがりな所や友達思いなところ、とても愛らしかった。感動的な話を続けつつワンパターンにならず、来週への期待が高まります。