大戸アイはなぜオッドアイなのか――「ワンダーエッグ・プライオリティ」1話レビュー&感想

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©WEP PROJECT
野島伸司の原案・脚本で注目を集める「ワンダーエッグ・プライオリティ」。刺激的な1話と共に目を引くのは主人公・大戸アイのオッドアイ設定だろう。「オオトアイ」が「オッドアイ」にひっかけた命名なのは明白で、ならばそこには物語の神秘が宿っている。大戸アイは、なぜオッドアイなのだろう?
 
 

ワンダーエッグ・プライオリティ 第1話「子供の領分

 
14歳の少女・大戸アイは、深夜の散歩の途中で出会った謎の声に導かれ、不思議な「エッグ」を手に入れる。
「エッグ」を持て余していたアイが、翌日昨夜の場所に再び向かおうと玄関のドアを開けると、そこはなぜか、どこかの学校の校舎に繋がっていた。
不気味な雰囲気漂う校内の様子に戸惑い逃げ込んだトイレで、アイは謎の声に促され、ついに「エッグ」を割ってしまう……。

 

 
 
 

1.大戸アイは隠す少女である

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物語はアイが明け方近い深夜を1人散歩する奇妙な描写から始まる。夜とは全てが隠される時間帯だが、いったいこの大戸アイという少女は「隠す」ことの多い少女だ。フードは顎まで締め、ベッドは周囲を遮る覆い付き、1人で階段に潜む……何を隠したいのかと言えばもちろん、左右で虹彩の色が異なる自分の瞳、オッドアイに他ならない。彼女が深夜に散歩するのは、夜は自分を奇異の目から隠してくれるからだ。
 

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ラクションを鳴らす車に振り向いたアイは不機嫌な顔をするが、それは振り向きながらではなく少し間をおいてだ。不機嫌になったのはクラクションのせいではない。
想像してみてほしい。人気のない深夜に出くわした少女が想像だにしない特徴を備えていた時、あなたは驚かずにいられるだろうか?
 

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 おそらく運転手は、あなたが想像したような反応を示したのだ。だからアイは不機嫌になった。
 
親友となった小糸に初めてオッドアイを見られた時もアイの顔は光に晒され、アイは橋の下に隠れるようにして逃げ出してしまった。アイにとってオッドアイは、隠したい自分の象徴だ。そして象徴であるなら、それはけして単なる身体的特徴ではない。
 
 

2.オッドアイを隠さないということ

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小糸にオッドアイなんだと指摘を受けた時、アイは「猫とか犬に多い」と返している。だからと言うわけではないが、彼女の容姿や声色には猫や犬――「愛玩動物」を連想させる愛らしさがある。ラストで現れた少女・青沼ねいるのスタイルの良さを羨むようにけして大人びてはいない、幼さと丸さの前面に出たいたいけな少女。
しかしもちろんアイはそんな天真爛漫な存在というわけではない。エッグの中から出てきたくるみのつっけんどんな態度には陰口を叩くし、初めてできた友達だった小糸の自殺について罪悪感を抱えるような行為をしている。彼女はけして、かわいらしさをただ愛玩されるような少女ではない。
 
アニメーション・キャラクターとして極めて秀美なデザインと、いじめなどの前面に出た物語は本作のオッドアイだ。それを宿すアイにもまた、異なる2つの性質は内在している。それは先に挙げた生の感情だけではない。巻き込まれるのが嫌で怪物「ミテミヌフリ」に襲われるくるみを追わず1人逃げる少女の中にしかし、もうそんな風に見捨てたくないという相反する気持ちがある。
 

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アイ「横断歩道は皆で渡っても怖いんだ。もう見て見ぬ振りは、しない!」
 
見て見ぬ振りをするとはつまり「隠す」ことである。自分のオッドアイを――小糸はきれいと言ってくれた異質な部分を――アイはこれまで隠そうとしてきた。けれど彼女はそれに目を向け始めた。わずかな時間の友達を本当には救えない欺瞞の繰り返しに、それでも親友を取り戻せる可能性があるのなら。
大戸アイがオッドアイなのはきっと、見て見ぬ振りをされ隠されてきたものを見るための、そして私達に見せるための瞳だからなのだ。
 
 
 

感想

というわけでワンエグ1話の考察・レビューでした。アニメじゃないと見られないものを見るっていいですね、これはまた面白そうな悪魔合体。えげつなさもあれば気持ちよさもあり、辛さもあれば美しさもある。よくよく感情を転がされている気がします。
 
アイ同様にエッグを巡る物語に踏み込んでいく他の少女たちにどんなドラマがあり、それがアイとどのように絡んでいくのか。まずはラストに登場した少女、青沼ねいるがどんな活躍を見せてくれるのか次回を楽しみにしたいと思います。
 
<特別編(最終回)から改めて書きました>