アイドルの頂きを目指す「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」。4話、LizNoirによって目標(目印)を得た琴乃達は、己の不足を模索する。今回は、なぜその答えが芽衣の加入なのかをじっくり読んでみたい。
IDOLY PRIDE 第4話「もっともっとボリュームを上げて」
(公式サイトあらすじより)
1.早坂芽衣は何を見ることができるのか
今回新たにメンバー入りする早坂芽衣は、他の少女達と明らかに違った要素を持つ娘だ。彼女は長瀬麻奈を見ることができる。幽霊となり、牧野以外の人間には認識できなかった麻奈を見ることができる。芽衣には「見えないものを見る力」があるのだ。だが、見えないものとは幽霊のことだけだろうか?
初対面の際、高い坂から降りるのを手伝うよう芽衣に頼まれた牧野は梯子を探そうとした。梯子を使えば高所と低所は目に見える道で繋がり、安心して降りることができる。しかし芽衣はなんと、牧野にキャッチしてもらおうと坂から飛び降りてきた。彼女は余人の思いつかない、繋がっては見えない道をたどって低所へと戻ってきた――つまりそこで彼女が見たのも「見えないもの」には違いない。彼女には幽霊だけではなく、もっと多くのものを見る力が備わっているのだ。
人懐っこいのを通り越して不思議ちゃんにもカテゴライズできそうな芽衣だが、こうして「見えないもの」の定義を広げれば彼女が常にそれを視界に収めて行動していることも分かってくる。他の人からは突拍子もなく見える行動が当人には筋が通っていることは珍しくないが、彼女はその分かりやすい例と言えるだろう。そんな彼女を加えることは琴乃達にとって、自分達だけでは持てない視点を加えることに他ならない。
視点を増やすことは前回述べたところの目印を増やすことと対でもあり、そこには少ない視点では見えなかった様々な可能性が姿を現してくる。分かりやすいのは彼女の加入でメンバーの空気が自由で伸びやかなものに変わったことだが、他にも彼女が牧野と密会しているのではと皆が妄想を膨らませ部屋に突撃したことなどもそうだろう。今回起きたのは親族でもない異性との同居への抵抗が先立っていた他の面々では起きなかったトラブルであり、それは舞台裏のドラマの幅が広がったことを意味する。
牧野「メンバーのバランスは悪くない。デビューに向けての基準も、十分クリアしている。ただ……」麻奈「『そつが無さ過ぎる』?」牧野「お前もそう思うか?」麻奈「あの娘たちを見ててもあまり不安は感じない。それはいいことなんだけど、わたしの知ってる売れたアイドル達はどこかハラハラする娘ばかりだった」
芽衣の加入によって、琴乃達は良い意味で不安定になった。そつなくまとまっているが故の限界にぶつかり始めていた彼女達は、見えないものを組み入れることでその壁を突破したのである。
2.早坂芽衣が体現するもの、彼女と同じ力を持つ者
芽衣には見えないものを見る力がある。それが幽霊に限らないこと、琴乃達に必要なものであったことは先に示した。だが本作にはもう1人、見えないものを見る力を持った人間がいる。そう、誰あろう牧野だ。芽衣のような体質によるものではないが、彼もまた麻奈の幽霊という見えないものを見ることができる。
マネージャーである牧野に求められる「見えないものを見る力」とは、担当するアイドルの魅力をどうすれば引き出せるか"見抜く"力である。白紙の上に理想の未来図、ビジョンを描き出す力と言ってもいいだろう。
幽霊が見えることで芽衣が嘘つき呼ばわりされたこともあるように、見えないものを見る力を人に納得させることは難しい。人には見えないものなのだから当然だ。今回の牧野の行動にしても琴乃には当初、安易な増員や自分達に明るさやセンスが足りないという指摘に見えてしまっていた。けれど彼女も最終的には、芽衣の存在が自分達にどういうプラスの影響を与えているかを悟った。"見る"ことができた。
見えないものは存在しないものに極めて近く、しかし限りなく遠い。見えなくとも確かに存在しているものは数限りなくあり、それを拾い集めることでより大きな"見えないもの"にも手が届くようになる。そう、LizNoirやTRINITYAiLEの圧倒的な実力の前に今は見えないVENUSプログラムの頂点だって、その先には存在している可能性がある。
見えなかった道筋を微かにでも照らし出す灯り(ロジック)こそは、芽衣の加入がもたらす「見えないものを見る力」――すなわち"直感"だったのである。
麻奈「牧野くん、もっと自分の直感を信じなさい。あなたはこの長瀬麻奈のマネージャーだったんだから!」
見えないものである麻奈に己の直感を後押しされ、牧野は次なる一手を打つ。琴乃とさくらのどちらをグループのリーダーにするかの答えの先にあったのは、さくらにグループから抜けてもらうという宣告――今は見えないその意図に、果たして彼はどんな未来を見ているのだろうか?
感想
というわけでアイプラの4話レビューでした。HPのキャラ紹介を見て、芽衣はよくあるハキハキした感じの子かと早合点していたのでびっくり。見えないものではなく存在しないものを見ていたわけですね僕。ですが、こうして見立てを作ってみると芽衣のキャラはこれ以外無いなと思います。確かに、彼女の加入で増えた要素はこれまでの琴乃達の成長物語には無かった。あと画面に映せないさくらの胸元の手術痕という「見えないもの」を見たりとか仕事し過ぎである。
話が脱線しますが前回のレビュー、読み返してみると唐突に「仮面」という言葉が出てくる珍妙な内容になっておりました。6,7割ほど書いたところでキーワードの「目印」を発見して組み替えたものだったので、前後で齟齬が出てしまった次第です。推敲が不十分ですみません。話が通じるように一文だけ足しました。
さて、1話で描かれ今回も牧野が可能性を示唆したように、琴乃達のグループにはもう2人メンバーの追加があります。現時点では牧野への印象最悪と思われる怜、そして麻奈と同期である遙子。彼女達の加入にどういう必然が待っているのか、今回の芽衣を見ているとますます楽しみになります。
とはいえ目下まず気になるのはやはり、さくらに告げられた宣告の意図。来週が待ち遠しいです。