太陽が照らす星々――「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」5話レビュー&感想

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
トップアイドルへ向けて模索の続く「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」。グループを2つに分ける決断をした牧野は、琴乃とさくらの光は別々の方が互いに輝くと言う。それは5話のテーマであり、別々の方が輝くのは2人だけではない。
 
 

IDOLY PRIDE 第5話「別の光 同じ気持ち」

 
琴乃とさくら両方の輝きを生かすため、牧野はグループを2つに分ける決断をした。さくらのグループには、ダンスで全国優勝の経験がある一ノ瀬怜と、星見プロの先輩アイドル・佐伯遙子が新加入する。さっそく2グループに分かれてレッスンを始める少女たち。だがさくらのグループでは、姉の沙季と別グループで活動することに不安を覚える千紗と、意識高くストイックな怜との間に溝が生まれ、グループに不穏な空気が流れてしまう。
 
 

1.陰から現れ始めた千紗という星

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
グループ分割を指示されたさくら達は当初、皆で頑張ってきた過去を理由に否定的な反応を示す。過ごした日々の分だけ人と人は分かち難くなるもので、ならば千紗が内心もっとも不安がるのも当然の反応だ。彼女は寮での日々より更に長い間、沙季と姉妹としての共同生活を送ってきたのだから。
 
ただ、姉の背中に隠れている限り千紗という人間は見えてこない。それはつまり、彼女の輝きが見えないということだ。姉と別グループになったことや自分の能力的な遅れへの不安を漏らす頼りない千紗の姿はしかし、これまでなら隠れていたものだ。それが見えるようになった時点で、彼女の成長は始まっているのである。
 
 

2.遙子という離れ星

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
琴乃のグループから分化したさくらのグループには、新たに2人のメンバーが加入する。ダンスの全国大会で優勝した一ノ瀬怜、そして既に星見プロ所属に所属していた佐伯遙子。この内、牧野が新たにスカウトしたのではない遙子の立ち位置は特に独特だ。2つ年下とは言え麻奈の同期である彼女はソロでは人気が伸びず、今後の身のふりすら考えるありさまだった。
 
しかし彼女がさくら達のグループに入ることは、互いに相対性の獲得に繋がる。「妹」に当たる相手がいるからこそ「お姉さん然とした」という評価は成り立ち、そこに輝きが生まれてくる。輝きを生む「別の場所」とは、けして所属グループの違いだけを指すものではない。
 
 

3.離れているが縁のない星ではなかった怜

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
先に示したように、またこれまでの話でも描かれたように、輝きは離れているからこそ生まれることがある。しかしそれは全く縁のない離れ方であっては意味がない。牧野が例えたように、月と太陽のような繋がりがなければ互いが引き立つことはない。一ノ瀬怜の加入と彼女が打ち解けるまでの出来事は、その重要性を教えてくれる。
 
メンバーの中では最後の登場となった彼女は一見して他の面々とは違った、つまり離れた存在だ。ダンスの全国大会優勝者でさくら達はもちろん遙子以上にその技術は優秀、厳しい口ぶりとそれ以上に厳しい練習への姿勢はおちこぼれを自認する千紗とは全く別に見える。
しかし何の接点もないように思えるなら、互いの輝きが引き立つことはない。だからさくらはどうにか、他人を寄せ付けない彼女の実像を手繰り寄せようとする。偶然とそこから踏み込んだことによって見えてきたのは、怜もまた案外ドジであったり、千紗同じように不安を感じているということだった。彼女の離れ方もけして、縁の無いようなものではなかった。
 
 

4.広がり始めたスポットライト

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
さくらをめぐる重大事から始まった5話は、他のメンバーの悩みや新たな一歩を描き出すものとなった。皆を励ませるリーダーとして相応しい気質を描かれてきたさくらだが、彼女1人ではきっと、今回そこにたどり着くこともその先を考えることもできなかったろう。遙子が(おそらく自分とも重ねて)怜の不安を言い当てたから、怜がどこか琴乃に似ていたから、そして自分と別の場所で同じ立場になった琴乃の頑張りを見たからこそ、さくらも前へ進むことができた。
 
離れることは、けして関係がなくなることではない。敬語をやめて年齢差から「離れて」しかし各人の距離は「近づく」。1人1人がそんな風に距離を見つめ直して、アイドルグループは出来上がっていく。月と太陽が皆を照らすと牧野が例えたように、琴乃とさくらの出会いから幕を開けたアイドルグループの輝きは、2人がそれぞれリーダーになったことで次のステージを照らし出そうとしている。
 

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
最後に描かれる記念写真がそうであるように、本作は10人全員へそのピントを合わせ始めたのだ。
 
 

感想

というわけでアイプラの5話レビューでした。なんだかべらぼうに書きあぐねたな、これまでの回でレビューの鍵に使ったテーマから1話分踏み出せているのか、迷ってしまったのが理由かしらん。
今回は麻奈の出番がかなり少なかったですが、今回の主役の1人とも言える千紗もまた「妹」なので、今回の彼女のあり方は琴乃と麻奈にも重なってくるものなんだろうなと思います。話のはばたきを感じた回でした。