対峙すべきは――「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」7話レビュー&感想

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
アイドルデビューによって飛翔の始まった「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」。さくら達は次のライブバトルの相手に負けない意気込みを語るが、その相手がどんな相手かは語られない。それは端役だからではない。7話で彼女達が対峙すべきは、もっと別の相手だからだ。
 
 

IDOLY PRIDE 第7話「Shining Smile」

 
季節は夏真っ盛り。デビューライブ以降、月のテンペストとサニーピースは仕事をこなしつつ、順調にライブバトルで勝利を重ねていく。彼女たちへの注目度が高まるなか、かつて麻奈が決勝まで進んだNEXT VENUSグランプリが3年ぶりに開催されることが決まる。それを聞いて迷わずエントリーを決意するリーダーの琴乃とさくら。その後、ひさしぶりに1日オフをもらった彼女たちは、思い思いの夏休みをぞんぶんに満喫する。
 
 

1.NEXT VENUSグランプリが帯びているもの

さくら達の「サニーピース」と琴乃達の「月のテンペスト」のデビューからここまでは順調そのものだ。ライブバトルで連戦連勝、業界も騒然。そんな彼女達がいよいよ挑むのがNEXT VENUSグランプリ。冒頭の「次に挑む相手」の具体的な相手とはつまりこの大会であり、そしてそこにはもはや「新人アイドルの頂点を決める大会」という具体的な栄光を超えた意味が宿っている。
 
かつて長瀬麻奈が出場し、優勝間違いなしと言われていた大会。
決勝当日に麻奈が事故死し、決勝の幕の上がることのなかった大会。
それから3年間休止を経て、ついに再開の決まった大会。
 

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
NEXT VENUSグランプリを語る上でもはや、長瀬麻奈の伝説は欠かせない。この大会で優勝する者は長瀬麻奈の後継者、あるいは彼女を超えた存在としてその名を刻むこととなる。つまりこの大会への挑戦はLizNoirやTRINITYAiLEといった現在のアイドルだけでなく、長瀬麻奈という"過去"と競うことでもあると言える。
 
 

2.オフであってオフでない一日

再開したNEXT VENUSグランプリは、現在と過去を併せ持つ大会へと変化している。ならば琴乃達とさくら達もまた、現在と対峙するだけでは勝てない。彼女達は過去ともまた向き合わなければならない。
 

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
過去と向き合うと言うと大仰に聞こえるが、それは実際のところあちこちにあるものだ。例えば疲労は過去の労苦から回復できていない証拠だし、豊富な私物は過去に買ったものの証。家庭菜園の野菜は自分たちが育てた過去の結果だし、買い慣れた過去がなければバーベキュー用の肉を買う時にも戸惑わざるを得ない。それらと向き合う意味を持つなら、オフ日を描いたこの7話もけして単なる小休止ではない。
冒頭の宣言のようにさくら達琴乃達は今回、"過去"という手強い相手とライブバトルを繰り広げてもいるのである。
 
 

3.対峙したもの、今後対峙するもの

琴乃達さくら達はこうして、様々な過去と向き合う。沙季はいつもの(過去の)自分らしからぬ不安を千紗に打ち明け、千紗はそれが自分と同じものであるからこそ励ませる。琴乃はさくらが3年前に心臓の手術をした過去を心配するが最終的に受け入れる。牧野が撮影した楽屋映像で、さくら達は素顔の麻奈(という過去)を知ったり見つめ直すしたりする。
 

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
さくらは「今日は楽しかったな」と1日を(過去を)振り返り、琴乃は明日からの練習へ思いを馳せる。過去と対峙し、適切な距離を見つければこそ人は前へ進める。
月のテンペストとサニーピースの対決、つまり"対峙"――それは過去にも現在にもない、未来で勝ち取るべきものなのだ。
 
 

感想

というわけでアイプラの7話レビューでした。アバンで「見に来てください!」と呼びかけるさくらと、琴乃達を見る麻奈の顔が向き合うようになっているのが印象的で。それを起点に浮かんだことを書いてみたのが今回のレビューになります。他のディティールを挙げると「すずのやってなかった宿題」「すずのものなのでちょっとキツい水着」なんかも過去との関連になりますでしょうか。すず、愛されキャラだ。
 
琴乃とさくらが別グループとなった時はずいぶん驚きましたが、こうなってみると2グループの対決をぜひ見てみたいなあ。その時が来るのを楽しみに待つことにします。