色濃い過去と共に未来へ進む「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」。8話冒頭、さくらは琴乃に頷き返し皆と気合を入れる。二人は月と太陽に例えられるが、彼女達の関係は背負うものそのままばかりとは限らない。
IDOLY PRIDE 第8話「君は君のままでいい」
(公式サイトあらすじより)
1.看板に偽りあり?
長瀬麻奈という伝説を抱えて走る本作だが、今回は彼女に対する琴乃とさくらの関係が改めて描かれる。琴乃は麻奈の妹であり、さくらは麻奈そっくりの歌声の持ち主。共に麻奈の因子を持つ2人に牧野や三枝は2人に運命的なものを感じ、その直感通り「月のテンペスト」と「サニーピース」は躍進しているが――受けている評価はけして、2人が望んだそのままではない。
一方、麻奈のことをよく知らず自分の内なる「太陽」的な輝きを放ったさくらに向けられたのは、琴乃以上に麻奈に似ているという「月」としての評価であった。
月を志向する琴乃が月になれず、太陽のようなさくらが月になる。二人の現状は互いの背負っているものと逆で、だから2人は困惑する。しかしそもそも、二人の性質は本当に背負ったものそのままなのだろうか?
2.琴乃とさくらは同じ所にいられない
麻奈の再来との評価を受けたさくらは、歌い方を麻奈に似ないものに変えようとする。しかしそれは、麻奈とは違う存在だと主張したいからではない。もともと彼女は麻奈のことをそれほど知らない。
さくらが歌い方を不自然に変えようとする理由は、「琴乃の悲しむ顔を見たくない」一点に尽きる。逆に言えば琴乃が笑顔になってくれるなら、さくらが歌い方を変える理由はない。太陽を背負うサニーピースのリーダーではあるが、さくらの本質はむしろ「月」にあると言える。
かつて牧野が琴乃とさくらを別グループに分ける決断をしたのは、「お互いの光は、それぞれ別の所にいた方が強く輝く」と感じたからだった。しかし琴乃が月たろうとして月たり得ず、さくらが月の本質をあらわにした状態では二人は同じ場所に立ってしまっている。それが好意によるものでも、今の二人は互いが互いの光をかき消し曇らせてしまっているのである。
3.二人が別の場所で輝くために
同じ場所にいては輝けない。2人はあくまでも別の場所にいなければならない。悩む琴乃に答えを示してくれたのは、渚達「月のテンペスト」のメンバーであった。
グループを組んでこれまで一緒に活動してきて、5人は互いのちょっとした変化にも気付けるようになった。それは彼女達が互いにとって「月」になったということだ。そして月となったからこそ、渚達は琴乃に「太陽」の輝きがあることを証明できる。麻奈の妹であることとは関係なく、その歌声に魅せられていると証明できる。
芽衣の加入による変化を信じなかったことを琴乃が詫びた時、牧野は琴乃が皆のエンジンなんだと言った。琴乃は麻奈の「月」を目指してきたが、その姿は「太陽」だった。太陽を背負ったさくらの本質が月なら、月を背負った琴乃の本質は太陽にこそあった。
だから、琴乃が自分の中の太陽を認めたなら二人は、月と太陽は別の場所に立って輝ける。琴乃の笑顔に反射して、さくらもまた笑顔を輝かせられる。莉央がこのままでは進めないと告げた「その先」への第一歩は、そこにあったのだ。
感想
というわけでアイプラの8話レビューでした。琴乃とさくらのキャラクター性にいっそう深みの出る回だったなと思います。さくらと渚、それぞれ違った形で琴乃のことが大好きなのが感じられました。「離れることで近づく」のも一貫してるなと。
残り4話で対LizNoir、対TRINITYAiLE、決勝とやっていくなら割とストレートな構成になりそうですがどうなんでしょう。舞台裏のドラマは今後ますます味わい深くなりそうです。