太陽の円環――「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」9話レビュー&感想

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
太陽と月を描く「IDOLY PRIDE(アイドリープライド)」。琴乃が太陽となる前回に続く9話は当然、「長瀬麻奈の月」として輝くさくらが太陽となるお話だ。しかし、太陽となるのはさくらだけだろうか?
 
 
 

IDOLY PRIDE #09「もらった勇気を抱きしめて」

 
本選1回戦を突破した月のテンペストとサニーピース。2回戦が始まる前、琴乃は3年前のNEXT VENUSグランプリ決勝で麻奈が歌う予定だった新曲を、さくらに歌ってほしいと言う。時を同じくして世間では、さくらに移植された心臓が麻奈の物ではないかと騒がれ始める。さまざまな思いを胸に抱えつつも、琴乃の希望を叶えようとするさくら。そんな彼女を前にして麻奈は初めて、琴乃とさくらに託したたったひとつの願いを口にする。

 (公式サイトあらすじより)

 
 
 

1.連鎖する関係性

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
さくらを中心に多くの人が揺れ惑う9話だが、共通点が1つある。「誰かが素直になると、他の誰かも素直になる」のだ。
 
琴乃が麻奈とは違う自分を受け入れたから、さくらは自分が麻奈の歌を歌うことを受け入れた。
さくらが自分の心臓への確信を話したから、牧野も検査の時に気付いていたことを正直に話した。
牧野が幽霊の麻奈の存在を明かしたから、芽衣も自分が幽霊の麻奈を見えることを明かした。
 
素直な胸の内を明かすことで、誰かの胸の内も明かされる。それは本作の鍵である「月と太陽」にも似ている。人は太陽になることで、月を照らすように誰かに光を当てることができる。そして、照らされるものは自力で輝けないわけではない。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 

2.輝きは連鎖し円環になる

麻奈はこれまで、傍観者あるいは助言者に過ぎなかった。幽霊の身でできる事などたかが知れているのだから、当然といえば当然のありようではあった。
しかし琴乃が麻奈とは違う自分を受け入れ、自ら輝く太陽になったのを皮切りに、麻奈もまた変化を迎えようとしている。自らの中の月と向き合うさくらに自分だけの輝きを見つけるようにという麻奈の言葉は、間違いなく彼女だけのものだ。
 

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション
麻奈「わたしの歌は、わたしだけのものだから!」
 
この時の麻奈は自ら動いている――輝いている。彼女もまた、太陽になっている。琴乃が太陽となったことでさくらも太陽として輝き始めたし、それによって麻奈自身も不可視の幽霊から輝きを放つ存在へ変わろうとしている。更には、それに照らされたさくらは麻奈の歌声で歌うのを終わりにすると決め、そんな彼女に琴乃もまた姉との関係の新たな一歩を踏み出そうとしている。照らされたものが輝く太陽の連鎖、いや円環とでも呼ぶべきものがそこにはある。自分に素直になることが、自分を解放することが誰かを解放することに繋がっている。
 
太陽になって誰かを照らすとは、誰かを自分の光を反射するだけの月にしてしまうことではない。誰かを照らすとは、新しい太陽を目覚めさせることなのだ。
 

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© 2019 Project IDOLY PRIDE/星見プロダクション

 
さくらの「song for you」はより多くのものを目覚めさせるだろう。好敵手となるLizNoirもTRINITYAiLEも、琴乃も、麻奈も、そしてさくら自身も。
麻奈の歌声で最後に歌うこの歌は、終わりではなく始まりの歌なのである。
 
 

感想

というわけでアイプラの9話レビューでした。さくらと麻奈の関係性がよく反映されたお話だったのではないかと思います。麻奈→琴乃&さくらではなく、3人が循環する関係ができてきたというか。ラストスパートに向けて、物語が螺旋状に加速していきそうですね。