友情のこども――「ワンダーエッグ・プライオリティ」11話レビュー&感想

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もがく少女達を描き続けた「ワンダーエッグ・プライオリティ」。11話ではアカと裏アカの過去、そしてフリルなる少女の存在が語られる。とはいえ裏アカの語りは一面的で全貌を見せてはくれない。今回はここでひとつ、妄想をたくましくしてみようと思う。
 
 

ワンダーエッグ・プライオリティ 第11話「おとなのこども」

 
 
桃恵の前に突然現れ生死を問い、パニックの命を奪った異形のモノ「ハイフン」。
エッグの世界の変化は、リカの元にも訪れ……。
一方、桃恵やリカに起きている事態を知らないまま、アイは地下の庭園に建つ屋敷に足を踏み入れていた。
膨大な資料があふれる部屋の中で裏アカと遭遇したアイ。
Jプラティの創始者で、かつて科学者だったという裏アカは、とある昔話を語る。

公式サイトあらすじより)

 
 
 

1.友情のこども

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アカ「おはよう」
裏アカ「……ああ」
アカ「コーヒー?」
裏アカ「朝メシはお前が作れ」
 
アカと裏アカの過去は出会いではなく、研究施設での同居生活から語られる。暮らすスペースは狭くまた二人のやりとりは自然体で、印象としては同棲とすら言えそうなほどだ。しかし共にあずさに惹かれた二人は紛れもなく異性愛者であり、そこに恋愛感情は存在しない。その関係はあくまで"親友"だ。そして親友について、1話でエッグから現れた西城くるみはこう言っている。
 

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©WEP PROJECT 「ワンダーエッグ・プライオリティ」1話より
くるみ「彼氏って別れちゃうけど、親友は永遠でしょ」
 
恋人に別れはあるが親友は永遠。そして二人が作ったAI少女フリルは14歳で固定され永遠に歳を取らない。夫々ではなく親友から生まれた彼女は、存在そのものが親友の永遠性を体現していると言える。フリルは恋愛のこどもではなく、友情のこどもなのである。
 
 

2.幾度もあった友情の危機

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親友は永遠だとくるみは言ったが、実際のところ、友情だって永遠に続くものとは限らない。事実、そんな素振り――あるいは自覚――こそ見せないものの、アカと裏アカも幾度も友情の危機を迎えている。
 
例えば二人は、保科あずさに共に恋をした。恋愛が友情にヒビを入れる例は枚挙に暇がない。
例えばアカとあずさの間には、子供が生まれようとしていた。幸せな3人家族の家庭に、裏アカが一緒にいられると断言できるだろうか。
例えばあずさの娘のひまりは、裏アカに恋をしていた。娘が自分のかつての恋敵に惹かれて、動揺しない父親がいようか。
 
アカと裏アカの友情は、本来ならとうの昔に破綻していてもおかしくない。しかし実際は、二人の友情は肉体の限界すら超越して続いている。なぜか? そう、フリルがいたからだ。
 
 

3.友情のかすがいとなっているのは

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裏アカ「閉鎖された社会の中で、俺達は家族のように暮らした」
 
「子はかすがい」とも言う。フリルの存在はそれがいかなものであれ、常にアカと裏アカの友情の継続に貢献してきた。監視される生活のストレスから二人を救ってくれたのはフリル製作に没頭し彼女と共に過ごしたからだし、フリルがあずさを殺したために裏アカが爪弾きにされる可能性はなくなった。またフリルがひまりを死なせた結果、あずさによく似た娘を巡るトラブルの可能性はなくなった。そしてこの母子の死は、大切な人をフリルに奪われた共通点すらアカと裏アカに与えている。
 

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裏アカ「止めなければ。死ななくてもいい少女達が死ぬことになる。俺たちの過ちのせいでな」
 
アカと裏アカの友情は結局、幾度もの危機にも関わらず、過去形にならず続いている。なぜか? フリルがいるからだ。
フリルが少女達を殺し続ける限り、二人はそれを止める共同作業を続けざるを得ない。フリルが存在する限り、二人は友情を維持し続けなければならない。
アカと裏アカの友情は、肉体の限界を超えて木偶人形になっても続く。それは、二人の子供であるフリルがいる限り続く永遠の友情である。
 
 

4.最後に姿を見せた、最初にエッグから現れた少女

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アイ「……ちくしょう」
 
フリルの考えも思いも行動の理由も、裏アカの視点を通してしか語られない今回で見抜くことはできない。ここまで述べたのはあくまで憶測、妄想の類に過ぎない。
しかし物語の終わりは迫っている。何らかの方法で、フリルの凶行は止められないければならない。そして人を超えた力を持つ彼女を止めるのは腕力ではない。リカのハサミはフリルどころか、その友達であるドットにいとも容易く砕かれてしまった。
 
必要なのはきっと、もっと別のものだ。これまでもアイは単に敵を打ち倒すのではなく、エッグに関わる少女に寄り添い救うことをこそしてきた。見て見ぬ振りをやめたり、尊厳を取り戻したり、少しでも素直にさせたり……ひとりひとりに、アイは寄り添ってきた。
アイは未だ小糸を蘇らせられていない。彼女にとっておそらく、フリルこそが最後の、そして始まりの"エッグから現れた少女"なのである。
 
 

感想

というわけでワンエグの11話レビューでした。前回はまとまらずメモになってしまってすみません。今回もレビューというよりは妄想ですね。自分の中で筋が通っても正解とは限らないのは今期何度も味わっているのですが、懲りないな僕も。
 
「ねいるも酷い目に合わせたのか許すまじ」「マンネンの健気さで最後がいっそうキツい」とか思ったりもしますが、フリルの存在をどう捉えたらいいのかに視線を奪われるとても強烈な回だったと思います。さて、次回いったいどんな結末が待っているのか。待ち遠しいし怖い。
 
 
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