1人では甦れない――「ゾンビランドサガリベンジ」1話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20210409224453j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
およそ2年の時を経て帰ってきた「ゾンビランドサガ リベンジ」。2期でも本作の中心には「蘇り」があり、しかしそのまま同じではない。再臨の1話は、蘇りに何が必要なのか私達に語りかけるお話だ。
 

ゾンビランドサガ リベンジ 第1話「グッドモーニングリターンズ SAGA」

生きる屍達は、運命の中で蠢きつづけていた。
絶望が偽りの仮面をかぶった七つの願いを覆いつくしても。
私は肉を突き刺されたあいつを目にし、不敵に笑うだけだった。
再び生きる屍に天からの光が差した時、人々は聞くだろう。
狂乱の中に響き渡る叫びを。
その、反撃の叫びを。
―――――《巽幸太郎》の日記より

公式サイトあらすじより)

 
 

1.蘇りはいかな関係から生まれるか

f:id:yhaniwa:20210409224637j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
リベンジの物語は、愛達がそれぞれアルバイトに励んでいる不可思議な姿から始まる。ゾンビィでアイドルになった彼女達がなぜアルバイトをしているのか、なぜ以前よりも化粧で顔色を隠せていないのか――いきなり描かれる変化を視聴者は飲み込めない。ただ流れる物語は"蘇って"こない。前期からの物語が蘇るのは、さくらがあれから何があったかを私達*1に語ってくれてからだ。
 

f:id:yhaniwa:20210409224651j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
「前期最終回で500人規模のライブを成功させたフランシュシュだったが、その後に幸太郎が企画した駅スタでの3万人規模のライブは大爆死。失敗と莫大な借金に打ちひしがれて幸太郎は飲んだくれ、さくら達は借金返済のためアルバイトに励んでいる」……最初は不可思議に思えた状況も、経緯が分かればスッと飲み込める。物語は蘇ってくる。一方的な関係から"蘇り"は発生しないのである。
 
 

2.さくら達と幸太郎が立ち直れぬ必然

f:id:yhaniwa:20210409225126j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
アイドルとして蘇ろうと奮闘するさくら達だが、蘇りを必要としているのは彼女達だけではない。幸太郎もだ。
ボサボサに伸びた髪、ひたすら酒を飲んでぼんじりに1人話しかける姿にかつてフランシュシュを、さくらを強引に率いた力強さはない。アイドルプロデューサーとしての彼は、駅スタでの失敗で死んでしまった。
 
幸太郎に再起を促し借金返済に励むさくら達は健気だが、その言葉は彼に届かない。理由は、時を隔てて描かれる二つの台詞から見えてくる。
 

f:id:yhaniwa:20210409224716j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
さくら「いつになるかは分からんけど、きっと借金は返せます! いくら時間がかかっても、わたし達アルバイトしながら頑張るけん!」
 

f:id:yhaniwa:20210409224735j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
幸太郎「このプロジェクトは時間が限られているんだ!アイドル史上最大の失敗を喫し、莫大な借金まで抱え、こんな状態ではとうてい間に合わないことぐらいあなただって知ってるでしょ」
 
さくら達は幸太郎が爆死や借金のみならず時間的問題に苦しんでいるのを知らない。幸太郎はそれをさくら達に話していない。両者の話は互いに一方的になってしまっているのだ。先に述べたように一方的な関係から"蘇り"は発生しないのだから、そのままでは堂々巡りにしかならないのは当然の帰結だろう。
 
 

3.アンコールは双方向の証

蘇りは一方的な関係からは生まれない。独りよがりからは生まれない。それはそもそも、フランシュシュの低迷の原因となった駅スタライブにしてからがそうだ。集まった観客500人は3万人の席からすれば1.66%に過ぎないが、アルピノ同様500人規模のライブなら満席大成功の人数だった。あの夜の奇跡が"蘇る"のはけして不可能ではなかった。人数設定が一方的でさえなければ、あの時の奇跡は蘇っていたはずだったのだ。
 

f:id:yhaniwa:20210409224757j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
リリィ「結局、巽が焦ってた理由分かんなかったね」
さくら「でも、駅スタにかけてた気持ちは伝わってきた」

 

一方的でない関係は、相手を自分の中に抱き直してこそ――蘇らせてこそ生まれる。さくら達は幸太郎が駅スタライブを強行した理由を単なる過信と捉えず、何か理由があるのではないかと考え直す。今はまだ理由を掴めはしないが、それはゾンビィとして一方的に蘇らせられた関係から脱却する新たな一歩ではある。
 

f:id:yhaniwa:20210409224816j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
マスター「早く言いに行ってやれ。『サガントシュの力は信じられねえ、サガントシュはもう終わっちまったんだ』ってよ」
幸太郎「……サガントシュじゃありません。フランシュシュです!」

 

そして幸太郎もまた、マスターのフランシュシュへの侮辱的な言葉(の芝居)によってこそ力を取り戻す。彼女達はサガントシュではなくフランシュシュだと。自分のエゴで一方的に始めたのであっても、終わりまで自分のエゴだけで決めていいものではないと。フランシュシュの力を信じていると。まだ彼女達は、終わっていないと。幸太郎に必要だったのは自らに対してでなく、フランシュシュに対しての発奮だった。
 

f:id:yhaniwa:20210409224829j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
幸太郎「アンッコォォーール!」
 
かくて幸太郎のアンコール――駅スタライブではもらえなかった――を受けて、フランシュシュはかつて披露できなかった新曲を歌い上げる。さくら達に必要なのもまた、ファーストライブの場所で仕切り直したい一方的な思いではなく、それを求める声援の方だった。"蘇り"を求める声の方だった。共に蘇りを求める声が揃って、はじめてフランシュシュのライブ(live)は蘇ったのだ。
 

f:id:yhaniwa:20210409224841j:plain

©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会.
アンコールの声はすなわち、アイドルにライブ(live)の蘇りを求めるファンの声である。アイドルが一方的に押し付けても求められはしない。ファンだけが望んでも届かない。双方向のやりとりあってこそ再演は、蘇りは果たされより大きな感動が生まれる。それは本作に"アンコール"を送り続けてきた多くの人にとっては、もはや自明の理だろう。外的な声を更に取り込み広がるこの2期はいったいどんな展開が待ち受けているのか。これからが楽しみだ。
 
 

感想

というわけでゾンサガ2期の1話レビューでした。2期だと1期のテーマを読み解きの足かせにしてしまう場合もありますが、なんとか逃れられたかな。やー始まりいったい何が起きてるのかと思った。大転落劇をジェットコースターで描く早業にも恐れ入りました。あと焼き鳥食べたい。
筋立てだけ見れば直球なのに、ゾンビィ他普通に見えないテイストは相変わらず。これからの話も面白そうです。
 
 
<いいねやコメント等、反応いただけるととても嬉しいです>

*1:劇中の誰かにではない。前回の振り返り風の語りは、間違いなく私達視聴者に向けられている