アイドルの宿る場所――「ゾンビランドサガ リベンジ」2話レビュー&感想

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
再び蘇り始めた「ゾンビランドサガ リベンジ」。フランシュシュ2号・サキには人を引っ張る熱意がある。逆に言えば、1人ではその力は十分には発揮されない。腹筋も1人ではできない。2話はアイドルにこそ必要な「他者」を巡るお話だ。
 
 

ゾンビランドサガ リベンジ 第2話「ぶっ壊れかけのレディオ SAGA」

 
まるでゾンビィだった俺が目覚め、あいつらも安心したようだ。
たびたび青い顔を真っ赤にして俺を非難してくるが、俺が炎上している場合ではない。
フランシュシュが再び燃え上がるためには、大きな起爆剤が必要だ。
目には目を。歯には歯を。そして、伝説には伝説を。
竜が吐く火炎のごとき熱き想いを受け取れ。
たとえ肉体は滅んでも、魂が滅びることはない。
―――――《巽幸太郎》の日記より

公式サイトあらすじより)

 
 
 

1.ホワイト竜というアイドル

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
今回のゲスト・ホワイト竜はあらゆる要素で強い印象を残すキャラクターだ。車のフロントに乗っての初登場、くたびれながらも勢いよく動くリーゼント、いささか理解に苦しむほど詩的な言動、白竜によるいわゆるアニメキャラとは異なる声……どれを取ってもひと目見れば、一声聞けば忘れられなくなるインパクトがある。ロックスターという違いはあれど、彼には紛れもなくアイドル性が備わっている。
 
そんな竜は約30年、ロックスターとして佐賀のくすぶる若者の心を拾い上げ続けてきた。しかし拾い上げる力は拾い上げ「られる」力とは別だ。フランシュシュと竜をレポーターに呼んだ番組スタッフは、竜が何を言っているのかほとんど理解できない。いや、フランシュシュですらその言動についていけていない。竜についていくには、彼の心を拾い上げるには翻訳者が要る。その言葉が他の人間に伝わるよう「蘇らせる」人間が要る。その役を果たせるのはもちろん、熱烈な竜フォロワーたるサキをおいて他にはいない。
 

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
竜「何か掴むってことは、いつだって苦しいもんだ」

 

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
サキ「りゅ、竜さーーーん!」

 

不可思議に見える竜の言動も、サキのリアクションがあれば掛け合いとしては成立する。素晴らしい理念も言葉もそれだけでは宝の持ち腐れで、受け止めて己の中に蘇らせる相手がいて初めて力を持てるのだ。
 
 

2.蘇らせてくれる者あればこそ

サキは竜の言葉を誰より理解し、他人に伝わるよう蘇らせてみせる。ではサキ自身は己の思いを独力で他者に伝えられるのか――答えはノーだ。昔も今も。
 

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
生前、中学生時代のサキは世の中全部が敵だと思っていた。理解されぬ怒りを拳に変えても誰にも届きはしなかった。"魂の拳"たる竜の言葉を聞くまで。
死後も、サキは竜のラジオ番組終了へのモヤモヤを1人では言語化できない。フランシュシュの皆に気を使われ、さくらに過去を打ち明けて、初めてサキの気持ちは固まる。
 
他人を引っ張る熱意を持つサキは同時に、他人なしで存在できない。自分だけでは自分を表現できない。他人が引っ張られてくれて初めて、つまり他人の中に自分を「蘇らせて」もらって初めて自己が完成する。竜やサキは、いやアイドルとはそういう存在なのである。
 

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©ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会
ホワイト竜「俺はただいなくなりはしない。熱い魂を継げる奴にこの場所を託したかった」
 
サキという後継者を見つけられたから竜は格好良く番組を去れた。自分を取り戻せた。
 

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サキ「おいおい、なんでお前が泣きよるとや?」
さくら「だって、サキちゃんがぁ」

 

さくらが自分に釣られて自分以上に泣いてくれたから、サキはゾンビィでしかいられない悲しみから立ち直れた。自分を取り戻せた*1
 
それはどちらも同じ出来事だ。ファンが、仲間が、他人がアイドルに自分を取り戻させた=蘇らせた点で何も変わらない。時が流れても、命が失われてもそれは再び起きる。いや、再び起こすことに意味がある。
他者に受け継がれて蘇るその営みこそ"アイドル"の宿る場所なのである。
 
 

感想

というわけでゾンサガ2期2話のレビューでした。「いい感じにまわって」きますね、感情が。笑って燃えて泣いて最後は爽やか。最後の部分でちょっと書きあぐねたのですが、さくらが泣く場面への視点をそれによって泣き止むサキの方に移してみてなんとかまとまりました。もちろんああやって泣けるのは間違いなくさくらの美質で、そういう意味でサキとさくらって相性がいいんだな。
 
1話レビューでははっきり書けなかったのですが、「蘇る」1期に対してこの2期は「蘇らせる」お話なのかなと思います。1話がそうであったように、さくら達の意志がいっそう問われるようになるシリーズなのではないかと。
これからの話でフランシュシュが何を蘇らせていくのか、楽しみに見ていきたいと思います。
 
 
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*1:この場面に限らず、今回さくらはサキの行動を柔らかく蘇らせる役割を担っている