闇鍋式アニメレビューの書き方その1~共通点を見つけ出す~

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「ブログでアニメについて書いてみよう」……そんなことを考えたのはおよそ10年前。当初はブログ更新をサボらないためのネタ程度でしたがどんどんその存在は大きくなり、いまや完全に生活の一部となりました。
 
10年も続ければ素人なりにやり方も生まれてくるもので、今回はそれを3本程度の記事にまとめてみようと思います。ちょうど富野由悠季監督作品の読み解きトップランナー、グダちんさんがアニメ批評について書いたタイミングだったりもしますし。
 
1クールに何十本とアニメが放送される状況にはおよそ不向きなやり方ですが、自分自身にとっての整理と、あわよくば同じような見方をしてくれる人が増えてくれないかなどと傲慢な期待を込めて。初回は「作品内の共通点を見つける見方について」です。
 
 

1.アニメを見る時はまず共通点を探す

僕はアニメを見る時、必ず探すものがあります。それは「共通点」。ロボットアニメでもスポーツアニメでも、ミステリーでもラブコメでもこれは変わりません。異なるキャラが異なる状況で同じような行動を取る、同じような言葉を口にする。そういうものを探して読み解きを試みます。
分かりやすい例としては「回をまたいで弟子が師匠と同じ言葉を口にする」といったシチュエーションがありますが、より小規模なものは1話1話の中にも見ることができます。今回は「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」19話「願いの重力」を見てみましょう。
 
この回はヒロインの1人クーデリアを地球まで護衛する主人公達が大気圏突入を試み、敵艦隊と戦闘するというお話。主人公・三日月達の母艦イサリビはその準備に大忙しで、劇中ではもう1人のヒロイン・アトラも荷物運びをする場面があります。
 
タカキ「無理しないでアトラさん、重いでしょ?」
アトラ「大丈夫、女将さんのところではもっと重い荷物も運んでたんだから」
ライド「なんだよ、はりきってんなあ」
アトラ「当たり前だよ、私だって……(先週のやり取りを思い出し)革命なんだから!」

 

なんてことのない場面です。カットされて進行がおかしくなるわけでもないし、あらすじにまとめたら間違いなく省略されるでしょう。ですが、ここで「重さ」について語られている点に注目すると話は変わってきます。この回の副題は「願いの重力」……「重さ」と無関係ではありません。そして重さ、重力に類する場面は他にも多々見受けられます。
 
モンターク「他者の心を掌握し、その先の行動を操るのは容易だ。過去を紐解く……ただそれだけで対象者が掴む選択肢の予想は簡単につく」
モンターク「嫉妬、憎悪、汚辱に恥辱。消えない過去に縛られて、輝かしいはずの未来は全て愚かしい過去の清算のみに消費される。それは私とて同じこと」
 
呪わしき過去の重力。
 
オルガ「もう重力に捕まってんだ、離脱できなくなるぞ!」
 
地球の重力。
 
クーデリア(三日月、ここで終わりにしないで。あなたの大きな手は、きっと大切な何かを掴める!)
 
そして「願いの重力」。
 
こうやって共通点を探し出すと。19話は「重さ」「重力」に関する話なのではないか……と仮説を立てることができます。この時、個々の描写はけしてバラバラの存在になりません。日常パートと戦闘パート、キャラ個人の魅力的な描写やリアリティあふれる設定といったものが全て1話1話の中で不可分に結びついて見えてきます。推論で言うところの「帰納法」に相当するやり方です。
共通点という観点を獲得すれば、不要に思える描写もけして無意味ではないことが見えてくるでしょう。
 
 

2.共通点のヒントはアバンにある

共通点とそれを探す意義について書きましたが、共通点の探し方はいろいろなものがあります。台詞や行動の反復は特に分かりやすい例ですし、画面の構図が似ている場面がないか探してみるのもいいでしょう。監督や脚本家の癖からひっかかるものがないか考えてみるのもいいかもしれません。アニメを見る上で自分が特に情報量を多く受け取れる分野を活かすのがもっとも良いと思います。
……が、僕は正直、これらのどれに精通しているとも言えません。「どうやって」探すかとなれば、僕よりずっと上手い人がたくさんいるはずです。
 
「どうやって」探すかに長けていないならどうするか。僕は「どこを」探すかでどうにかそれを補っています。共通点が生まれやすい場面、仮説通りのことが起きているか検証に使える場面が分かっていれば共通点探しはぐっと楽になる。共通点探しの重要チェックポイント――それはOP前、1話1話の始まりを務める「アバン」にあります。
 
アバンとはその回のフックであり、注目してほしい部分を提示する場面です。重要なゲストキャラやキーアイテムを登場させたり、特訓回であれば克服すべき苦手要素を強調したり……つまりアバンで描かれたことは必ず反復される。反復されるならそこには「共通点」がある。実は先程のオルフェンズ19話のアトラのシーンにしても、その回のアバンに他なりません。ここに着目すれば、仮説の精度を格段に上げることができます。いくつか例を挙げてみましょう。
 
 

例1.のんのんびより のんすとっぷ 第1話「カエルの歌を吹いた」

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/ 旭丘分校管理組合三期 のんのんびより のんすとっぷ1話より
この回は、つまようじが置いてある棚の上は小学生のれんげにはどうにも届かない場所だが、背の高い一穂には何程もないという描写がアバンとなっています。「ある人には覆し難い違いはしかし、他の人にとっては些細で容易に乗り越えられるものだったりする」わけですが、それは学年が違うのに机を並べている旭丘分校のありようや、高校生のあかねのフルートと小学生のれんげのリコーダーが一緒に演奏する場面などに通じている=共通点となっています。
 
 
 

例2.ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第6話「復讐の猟犬」

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団 ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN1話より
この回は、バルクホルンに起こされたエーリカがこの世界では必須の服であるズボンすら脱いでいたところがアバン。エーリカ救出のためバルクホルンが極限まで減量に挑み、また彼女が死んだと勘違いした時は普段の厳しい態度を「脱いで」絶望してしまう内容と共通します。
 
 

例3.ご注文はうさぎですか? BLOOM 第10話「ハートがいっぱいの救援要請」

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©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか? ご注文はうさぎですか? BLOOM10話より
この回は、プレゼントの代金を稼ぐためココアがバイトを掛け持ちしている姿がアバンで描かれます。この"掛け持ち"はけしてバイトに限りません。ココアが一緒なためシャロにとってバイトの時間は仕事と憩いが"掛け持ち"になるし、ココアにとってプレゼントは相手と自分の両方の楽しみを"掛け持ち"する行為だったりします。
 
 
例で挙げた内の2つがいわゆる日常系であることから分かるように、この「共通点」はストーリー性を前面に出した作品に限られません。また、2本立てで前半と後半が全く関係ない話の場合でも共通点は一貫したものが見つけられます。共通点とはジャンルも時間も問わず、アニメ1話1話を明確な1単位としてまとめるものなのです。
 
ただ、この共通点は劇中で「何に関する出来事が繰り広げられているか」までしか説明できません。アニメ1話1話が持っているものとして僕が探る「テーマ」は共通点の先にこそある。それがどういうものなのかは、次回の記事で書いてみたいと思います。
 
 

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