誤解も理解――「灼熱カバディ」8話レビュー&感想

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©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会
新たな仲間、新たなステージ。「灼熱カバディ」8話では新メンバーの加入とそれをきっかけとした宵越の葛藤が描かれる。今回宵越が得た学びとは、いったいどんなものだろうか?
 
 

灼熱カバディ 第8話「入部希望」

一年生の伴伸賢がカバディ部へ入りたいと入部届を持ってくる。伴は髪型がリーゼントで目つきが悪く、それなのに声は極小という変わり者だ。しかも、彼に誘われたと言って同級生の関隆太と人見祐希も体育館を尋ねてきた。実はこの伴という男、小学2年生の時に宵越と出会っていたのだ。それは、とても暑い日のことで……。
 

1.新メンバーの共通点

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©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会
試合定員の7人すら満たせていなかった能京高校カバディ部だが、今回は一挙に3人もの新メンバーが加入する。伴、関、人見……容姿も性格もバラバラ、統一感があるとはお世辞にも言えない面々だ。しかしその実、同時に加入する彼らは1つの共通点を持っている。
 
伴:リーゼントで強面のおっかない男、と見せかけて声がとてつもなく小さい
関:ぽっちゃり体型の運動とは無縁の男、と見せかけて相撲経験者
人見:かわいい女の子、と見せかけて男子
 
そう、彼らの共通点とは「見た目で判断すると間違える」こと――ミスコミュニケーション、誤解を誘う点にある。
 
何かをするにあたって、誤解が足を引っ張るのは言うまでもない。状況認識の誤解、努力の方向性の誤解、意思疎通の誤解……それらは容易く過ちを呼び、苦労を徒労に変えてしまう。勝者や強者とは物事をより誤解なく理解できる人間であり、だから彼らを見ることは大いに学びになる。
しかし、誤解はただ過ちしか呼ばないものだろうか?
 
 

2.誤解も理解

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©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会
伴「その日から、宵越さんは俺の憧れになった」
 
新メンバーの1人である伴はかつて宵越に救われ、彼に強烈な憧れを抱いている。しかしそれは伴が一方的に救われたに等しく、宵越はその出来事を全く覚えていない。
 
「自分を振り回す嫌な同級生を、サッカーの対戦相手の宵越がきりきり舞いにした」「悪戯でリーゼントにされた髪型を、目立っていていいと褒めた」「リーゼントから連想した、ポニーテールのプレッシャーに負けず活躍する選手への憧れを語る姿に憧れた」……二人の過去は誤解だらけだ。
伴と面識の無い宵越は別に仕返しで同級生をきりきり舞いにしたわけではないし、声の小さい伴の「無理矢理リーゼントにされた」という説明は聞こえておらず宵越は自分の憧れを勝手に語ったに過ぎない。リーゼントとポニーテールは別物だし、伴が何か最高のプレーができたわけでもない。その後にしても、伴が自分を追いかけていたことを宵越は全く知らず、目の敵にされているとすら勘違いする。正しい理解を探す方が難しいくらいだろう。
 
けれど、誤解だろうと伴が宵越に救われたのは紛れもない事実だ。また伴の宵越への憧れの目線は宵越を怯ませて畦道が掴む隙を生んだし、後の練習で畦道は優しさを誤解しているようでもそれを自分の強さにしている。誤解も理解には違いなく、それ自体が力となる可能性を秘めている。
 

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宵越(見てなきゃ理解できねえだろ……)
 
問題なのはむしろ、誤解よりも無関心だ。伴達と一緒に遊ぶことになった宵越は、彼らを当てにしない自分の態度が優しさと誤解・・されているのをきっかけに己の無関心を知る。無関心からは何の力も生まれない。不足を己の力で補うことはできるが、それ以上にはならない。無関心とは誤解の更に下、コミュニケーションですらないのである。
 

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©2020武蔵野創・小学館/灼熱カバディ製作委員会
誤解だろうが理解だろうが、コミュニケーションとは相互に行われるものでなければならない。試合で相手を出し抜くことだって、相手の誤解を誘うことで――ミスコミュニケーションという名のコミュニケーションをとることで――成立するものなのだ*1
 

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王城「部長としては嬉しいけど、なんか久しぶりに倒される気がしてきたよ」
 
人は人の言動を勝手に解釈する。勝手に誤解する。それはある種の化学反応であり、切磋琢磨もそこから生まれるものだ。新メンバーの加入で宵越達のカバディは、コミュニケーションはいっそう加速していくことだろう。
 
 

感想

というわけで灼熱カバディの8話レビューでした。1日遅れてしまってすみません。伴の宵越への憧れが伝わらないところなどを1本のテーマにまとめて捉えるのがなかなか上手く行かず、「誤解も理解」に至るまでウンウン悩むことになりました。やはりカバディはコミュニケーション。3人同時に加入することに意味がある回だったんだな。
 
次回は2年生組のスポットの当たる回になるようで、どんなドラマが隠されているのか楽しみです。
 
 

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*1:宵越は関と人見の特性を利用し、王城は人見を盾にすることでそれぞれ相手を出し抜く