最終局面を迎える「究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら」。本作ではヒロが様々な受難にこそ遭うが、敵というべき相手はこれまでいなかった。この11話はヒロが立ち向かうべき、テーマを司る敵が姿を現す回である。
再びゴブリンが町に攻め込んできた。ヒロはゴブリン以外の脅威とも戦いつつ、町の中心部に向かうが、町王ガバンの屋敷に複数のゴブリンが侵攻しているというのを耳にする。テスラとともに屋敷に急ぐが、そこにいたのはかつてテスラが戦った一つ目のゴブリン「ワンアイ」だった。
（公式サイトあらすじより）
1.最高と最低は反転する
ミザリサ「生でいい漏らしっぷりを拝むチャーンス！……と思ってたらなんとゴブリンもヒロっちを狙ってるじゃないっスか！」
トイレでゴブリンに襲われる羽目になったヒロだが、彼の排泄を見るため追ってきていたミザリサの掩護で辛くも危機から救われる。タイミングは最高、理由は最低。こうした最高と最低の反転、あるいは相互の接近はこの11話でまま見られる。自分を殺しかねなかったミザリサやアリシアが仲間としては心強かったり、レオナに漏らした過去を茶化された腹立ちで緊張が解れることなどもそうだろう。
だが、そもそもこうした反転や相互接近は今回に限った話ではない。
2.本作のもっと許されざる行為とは
ミザリサ「触ってくれてもいいっスよ？」
最高と最低の反転や相互接近は、本作でたびたび描かれてきたものだ。将来を期待される陸上部員だったヒロにとって転倒漏らしは最高から最低への反転だったし、キワクエがまごうことなき最低クソゲーだからこそマーチンとの和解や少女救出成功といった経験は彼の心を揺さぶってきた。衛兵隊最強の新人だったグラナダがいびられて辞めたり、ヒロには屈辱の失禁がミザリサには極上の経験だったりするのも同様の例に数えられるだろう。
人は生きる限り転落や逆転に遭い続けるし、最高と最低は入れ代わり続ける。人生をもがくとは言ってみれば、ままならぬ最高と最低を行ったり来たりすることなのだろう。
だから、人の最高と最低を弄ぶ行為は許されない。
ガバン「そう、全てはわたしとテスラの王国維持のため」
ついに明らかになったテッドの町の秘密は、鎖町という異常事態が町王ザパンとテスラの策謀であるという事実だった。ゴブリンの子供をさらい襲撃させることで町を外界から遮断し、自らの絶対的な支配地域としていたのである。
ガバンとテスラのこの策謀は、言ってみれば彼ら以外の全ての者の最高と最低を玩弄することだ。本来は人を襲わない、ある意味で最高のモンスターであるゴブリンを凶悪な敵に変え、更には外部への防壁および内部への鎖として利用する。ゴブリンが襲い来る限り人々はテスラ達に頼らざるを得ず、本当は最低の指導者である彼らを町の誇りとすら錯覚させてしまう。彼らの支配のためにどれほどの人が――NPCが人生を狂わされたのだろう。いや、価値観を狂わされたのだろう？ マーチンだって鎖町体制でなければヒロを止めようとなどしなかったはずだ。涙を流して親友を救おうとした彼の思いは、実は事故死よりずっと前から裏切られていた。
テスラ「テッドの町の謎を知った者は、そして謎に近づこうとしたものは全て殺さなければならない。もちろんヒロ、お前もだ」
人は誰もが自分の不完全な価値判断で最高と最低を判断し、過ちを繰り返している。それでも必死にもがいて、生きている。だからこそ、他人の最高と最低を自らに都合良く操るガバンとテスラの所業は一線を画した悪辣さを持つ。
しかし他者を弄びこそすれ、最強のNPCから最低の敵へ変化したテスラはけして最高と最低の反転・相互接近から逃れられたわけではない。なら、まともにバトルについていけていない最弱のヒロにも何か、いやそういう彼だからこそ"逆転"のきっかけは残されているはずだ。
お世辞にも立派な人間とは言えない、自分でも認めるクソ野郎のヒロは果たして最後に何を見せてくれるのか。主人公の役割に期待したい。
感想
というわけでフルダイブ11話のレビューでした。ガバンは胡散臭いなーとは思ってましたが、テスラは知らないか騙されてるかだと考えてましたよ。すっかり騙されてた。まあラスボスできる相手なんて他にいないか。
主人公が活躍しないことで物語のテーマが成立する作品も珍しくはないですが、本作は最後には主人公を輝かせるタイプだと思うので次回のヒロの活躍が楽しみです。
しかしEDが「キスイダ！」なの、最高と最低の反転・相互接近が反映されてて核心をついたネーミングだったんだなあ。
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反転を弄ぶ者――「究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら」11話レビュー＆感想https://t.co/Pw3MoirrLs#究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら#フルダイブ#FullDive#Fulldive_RPG#アニメとおどろう
— 闇鍋はにわ (@livewire891) June 17, 2021
