見えない道を導く者――「ゲッターロボ アーク」1話レビュー&感想

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
石川賢の遺産が動き出す「ゲッターロボ アーク」。本作の舞台は平和な日本ではなく、荒廃した世界。これは先の見えぬ未来への道標を見つけ出す1話だ。
 
 

ゲッターロボ アーク 第1話「天の鬼」

19年前の大戦終結から復興もおぼつかない地球。早乙女研究所とゲッター線の研究を受け継いだ神隼人は謎の敵から地球を守るためD2部隊を組織していた。強力な敵を前にD2は苦戦。新たなるゲッターロボ・アークは完成していたが、それに見合った能力を持つパイロットは、まだカムイ一人しかいなかった。パイロットはあと二人必要だった。一方、母の仇を追う流拓馬は手掛かりを追い、相棒の山岸獏と共に早乙女研究所を目指していた。
公式サイトあらすじより)
 

1.道の失われた世界で

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
1話は、主人公の拓馬と獏が早乙女研究所を目指す場面から始まる。草を抜き整備されたその研究所への道は簡単な一本道……のように見えて、厳重に警備されており拓馬達は入ることを許されない。ここにあるのは「目に見える道が正しいとは限らない」というストレートな隠喩だ。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
実際、シベリア戦線からの復興すらおぼつかぬ本作の世界は道を見失っている。非管理区域のコンビニは北斗の拳の世界に片脚を突っ込んだヤンキーに狙われるし、商品価格もメチャクチャ。ゴミ捨て場も埋もれた家電や車がむしろお宝になるほどだ。謎の敵との戦いでも司令の隼人は「(この戦いは序の口に過ぎず)この程度の戦いで死ぬなら今死なせてやったほうが幸せ」とすら言い放つ。倫理も価値も全てはぐちゃぐちゃで、ここではあらゆる泣き言が許されない。
 
道を見失ったこの世界は壊れている。主人公・拓馬はそんな末期的な世界を腕力でねじ伏せて進んでいくわけだが――それは単に「道なき道を進む」という程度のものだろうか?
 
 

2.導き導かれ

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所

拓馬「悪いな、俺の体は頑丈にできてるんだ」

 
拓馬という男は一見すると無茶苦茶だ。鉄バットで殴られるどころかナイフで刺されても意に介さず(殺す道が見えない)、初めてゲッターに乗るというのにマニュアルすら読まない。彼の歩みは、対する者をいつも驚かせずにおかない。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
しかし無軌"道"にも見える拓馬はその実、確かに道の上を進んでいる。早乙女研究所ではなくゴミ捨て場へ行ったのは相棒の獏の予知能力に基づくものであったし、彼がゲッターロボに関して無茶な行動をすればするほどそれは隼人へのスムーズなアピールに繋がっていく。本能によるゲッターロボの操縦も、言ってみれば生存への最適な"道"の選択である。
 
拓馬に無軌道にも見える道を歩ませるものは何か?言うまでもない、本作の鍵となるゲッター線だ。獏は自分の予知にゲッター線が大きく影響したと語っているし、ゲッター線の申し子である拓馬は劇中で描かれているように異常な頑丈さと操縦適性を持つ。彼らは道なき道を歩んでいるようでその実、ゲッター線に導かれて荒野を進んでいる。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
 
ただもちろんこれは、拓馬達が単なるゲッター線の操り人形であることを意味しない。いくらゲッター線を使おうとパイロットに合わせてスペックの抑えられたゲッターD2は謎の敵に歯が立たないし、早乙女博士の遺産であるゲッターアークも3人のパイロットがいなければ力を発揮できない。拓馬が敵の装甲を剥がしたからこそゲッタービームをくらわせられたように、ゲッター線もけして全知全能の存在とはいかないのである。だから拓馬達が行くのは道なき道ではないが、けして目に見えるものでもない。
 
ゲッター線に導かれ、同時にゲッター線を導く。見えない未来への道標はきっと、そこにあるのだ。
 
 

感想

というわけでゲッターロボアークの1話レビューでした。楽しいですね。乱暴にやってるようでちゃんとルートがあって、そこにゲッター線の導きを感じる。熱いと言うよりは壮大さで全てを飲み込んでいく作品のように思います。見返してる内に拓馬のキャラクター性も随分きにいってしまいました。内田雄馬、シャウトの上手さはもちろんですが粗野な感じがとてもいい。「いーわけねーだろ、ボロボロだよ」の飾らなさ加減とかたまらん。
 
原作未完の作品をアニメ化するにあたって、アニメなりにどういう結末を迎えるのか(テーマを見出だせるのか)期待の高まる出だしでした。ワクワクです。
 
 

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