蟻を踏み潰す象になれ――「ゲッターロボ アーク」3話レビュー&感想

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
点と点が繋がってゆく「ゲッターロボ アーク」。3話では拓馬の過去と謎の敵との関係の一端が描かれる。別個と思われたものを結びつける――ゲッター線を巡る戦いの恐ろしさはそこにある。
 
 

ゲッターロボ アーク 第3話「アーク始動」

圧倒的物量で早乙女研究所を包囲する蟲軍。隼人は敷島博士の研究所防衛システムの発動と同時に、拓馬、カムイ、獏のゲットマシンを発進させアークを戦場に投入する。敵と味方の凄まじい砲撃が交錯する中、放たれる拓馬、カムイ、獏。三人は隼人が睨んだ通り、窮地を楽しむかのように気合と情熱を滾らせ、期待以上の働きで敵を掃討した。蟲軍が消えた空に、時空を越え、巨大な立体映像が映し出される。それは拓馬が探し求めていた母の仇・マクドナルドだった。
公式サイトあらすじより)
 
 

1.力の前には差異は霞む

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
りょう「でも、それでこそこのわたしの惚れた人!」
 
「痘痕も靨(あばたもえくぼ)」という言葉がある。恋をした人間には天然痘などの痕も笑顔の時のくぼみに見える、好きになってしまうと欠点も長所に見えるという言葉だ。拓馬の母、りょうの竜馬への愛もそのようなものであろう。食事中の屁や拾い食い、トイレの流し忘れを差し引いても……というより、それらも含めて彼女は夫を愛している。つまり彼女の中では、武道家としての竜馬の美質と人間的な欠点という全然違うものがひとまとめになっている。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
違うものがいっしょくたになる、というのは今回の話を見ていく上で示唆的だ。流家を襲ったマクドナルドの目的はりょうの殺害ではなかったがそれも辞さなかったし、拓馬の母との別れは獏との出会いのきっかけともなった。これらは「違っていても共通点がある」ものなどではない。どこまで行っても別のものがしかし、ひとまとめにされている。
こうした一緒くたは何によって生まれるか?と言えば「より大きな力によって」としか言いようがない。愛にせよ、目的にせよ、運命にせよ。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
あまりにも大きな力の前ではしばしば、違いは些少なものになるし時に正反対のものすら一体化する。敵の兎猿猴はその変幻自在の力で敵味方や自分とインセクターを一緒くたにしてしまうし、拓馬・カムイ・獏の異なる生い立ちや能力も「過去の血」とくくってしまえば同じものになる。
一緒くたを生み出すのは、先に述べたように「大きな力」だ。理屈ではなく、大きな力の前に小さな力はただ屈服するのである。
 
 

2.相手より大きくあれ

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
敷島博士「さあ来い。早乙女研究所の恐ろしさ、見せてやる!」
 
あまりにも大きな力の前に、小さな力は屈服せざるを得ない。だからこの早乙女研究所での戦いも、必要なのは小賢しい作戦よりも力の大きさになる。敵が数の「大きさ」で攻めてくるならば早乙女研究所もミサイルの数の「大きさ」で対抗するし、そのミサイルの雨の下を飛ぶ拓馬達の度胸の「大きさ」にD2部隊は自分達が格下だと納得せざるを得ない。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
そしてもちろん、この場においてもっとも「大きな」力を持つのはゲッターアークである。味方の攻撃の爆風も強敵・兎猿猴も自分の引き立て役にし、無数とも言える敵の数の大きさも攻撃範囲の大きさで問題にしない。その強さはあまりに圧倒的だ。そんなゲッターアークを圧倒しようというなら、敵は更に大きくなる必要がある。例えそれが虚像であろうと、実体を伴わなかろうと。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
遂にその名を名乗る「アンドロメダ流国」は立体映像で実体以上に巨大な男を映し、また自分たちの目的が全宇宙のため(つまり地球より大きい)ことを宣言する。またその男、マクドナルドは拓馬にとって仇というあまりにも大きな存在であり、ゲッターアークをただ喚く少年と同じものに変えてしまう。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
どれほど緻密なものも、それを遥かに上回るスケールのものの前では砂粒に等しい。ゲッターロボの戦いとは即ち、壮大さを競う戦いなのだ。
 
 

感想

というわけでゲッターロボアークの3話レビューでした。ラブライブ!スーパースター!!2話レビューが思ったより楽にかけたと思ったらこっちに悩んで結局一日遅れすみません。
壮大だ壮大だと書いてきましたが、それそのものがこの戦いの鍵とも言えるのはなんだか納得です。敷島博士の武器もメチャクチャですね、「敵の数が多いならそれ以上にたくさんミサイル撃てばいいじゃない」って脳筋ならぬ火力筋……
 
拓馬の個人的な動機とゲッター線、スケール感という点でどういう決着になるのか楽しみです。
 
 

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