過去をねじ曲げ直せ――「ゲッターロボ アーク」6話レビュー&感想

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
新たな過去が姿を現す「ゲッターロボ アーク」。6話は原作読者も知らぬ驚愕の展開。今回は未知の話だからこそ「過去」がひときわ大きな意味を持つ回である。
 
 

ゲッターロボ アーク 第6話「竜の末裔」

連合軍から訪れた橘翔によりダメージを受けた早乙女研究所の補強は進んだが、拓馬、カムイ、獏は別命を受けてインド沖を目指す。同時期、ハワイ沖にある敵の巨大転位ゲートに対する連合軍の大規模な作戦が決行されるも失敗。世界中に点在するストーカからも時空を転位して蟲軍が襲来する。連合軍の防衛網もおぼつかない。そんな中、連合軍のドローンステルバー隊が苦戦する戦場に突然転位ゲートが開き謎のロボットが出現する。乗っているのは敵か味方か?!
公式サイトあらすじより)
 
 

1.過去は侮れない

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
6話冒頭、明かされるのは拓馬の仇敵マクドナルドの正体だ。ゲッターに執着する彼の正体はなんと、旧作でゲッターロボに敗れた百鬼帝国の生き残りであった。
また、OP明けの本編では私達は突然洋上を飛んでいる拓馬達に「なぜ?」と思わずにいられない。「何があった?」と考えずにはおられない。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
両者に共通するのは「過去」が大きな要素になっている点だ。マクドナルドの存在は百鬼帝国との因縁がまだ終わっていないことを示すものだし、研究所にいたはずの拓馬達が洋上を飛ぶにはそれなりの理由が必要になる。どちらにおいても、過去の存在なしに語れはしない。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
過去というのは恐ろしいものだ。早乙女研究所は前回確かに敵の襲撃をしのいだが、被害は甚大でもう一度の襲撃に耐える力は残されていない。物語開始時点では数機がいたゲッターD2も激戦によって1機と3に人まで落ち込んでいる。過去の影響というのは侮れない。
過去に立ち向かうには、自らもまた過去を力とする他ない。都合よく新しい未来など生まれては来ない。隼人が頼ったのは元ゲッターチームの一員・橘翔と彼女の所属する連合軍。そしてラストで明かされるがカムイの母国・恐竜帝国であった。
 
 
 

2.過去をねじ曲げ直せ

過去に立ち向かうには己もまた過去を力にせねばならない。しかしアンドロメダ流国は今回、その図式にくさびを打ち込んでいる。彼らには過去をねじ曲げる・・・・・力がある。
これはもちろん比喩だ。この6話にタイムマシンなど登場してはいない。しかし確かに彼らは過去をねじ曲げている。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
例えばシュワルツ……シュワルツコフ提督の指揮する連合艦隊は確かにストーカ01に向けて大量のミサイルを発射した。しかし彼らを待っていたのは、自分が撃ったはずのミサイルが自分達に降り注ぐという因果の(過去の)ねじ曲げられた攻撃であった。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
例えば今回、アンドロメダ流国のインセクター達は巨大な集合体となって早乙女研究所に攻め寄せる。ダメージを受けてもすぐさま他の個体によって補完されるその巨大インセクターの力とはすなわち、攻撃された過去をねじ曲げる力である。両者は技術的には別でも、その本質は全く同じものなのだ。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
だが、過去がねじ曲がるのはこうした時だけだろうか?否。新たな事実が明かされた時、私達の認識する過去は大きく姿を変える(TVでは優しい雰囲気の芸能人が家庭では暴力を振るっていた、だとか)。新事実とはねじ曲がっていた過去をねじ曲げ直し、矯正するものだとも言える。
だから過去をねじ曲げるアンドロメダ流国に対し、真ゲッター生存の新事実は何よりのカウンターになる。事実、その圧倒的な力は戦場をあっさりとねじ曲げ直してしまった。
そして、黒き真ゲッターがねじ曲げ直すのはけして、戦いの趨勢だけではない。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
原作「ゲッターロボアーク」は本来未完の作品だ。掲載誌の休刊、そして石川賢の急死によりゲッターロボサーガは完結を許されなかった。詳しくない僕が「虚無る」スタイルに言及するのは控えるが、石川賢が生き続けていれば何かしらの続きの機会はあったかもしれない。ともかく本作は、迎えるべき終わりを「ねじ曲げられて」終わってしまったのである。なら、アニメにおいて本作が完結するためには「ねじ曲げ直さなければ」ならない。
それを可能にするのは存在しなかったはずの新事実――原作という過去には存在しなかった何かの登場によってしかない。原作にも他シリーズにもない新たなゲッターロボの登場ほど、それに相応しいものもないだろう。本格的なアニメオリジナル展開の始まりは、かくてこれ以上なく明確に告げられた。
 

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©永井豪石川賢/ダイナミック企画・真早乙女研究所
過去には存在しない黒き真ゲッター。それは、終わらなかった物語(過去)を終わらせる戦いの狼煙なのである。
 
 

感想

というわけでゲッターロボアークの6話レビューでした。やー手こずった。「竜の末裔」という言葉から過去との関連が一つ重要になりそうだと思ったのですが、連合艦隊のミサイル自滅等を「過去をねじ曲げる」ものだと解釈できるまでが大きな山でした。で、そこから「アレ」の役割についてゲッター線を浴びるのにこれまた時間がかかった。
 
それにしてもブラック真ゲッターロボ(仮)の登場、ビックリですね! ブラックゲッター自体スパロボでしか知らんのですが、さすがにこれが原作に出てないのは知ってました。いかにも真ゲッターでしょってシルエットからあの顔が出てきた時の驚きと言ったら。
ワクワクが止まりません、次回が楽しみです!
 
 

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