見境の"リミッター"――「境界戦機」4話レビュー&感想

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.
恐怖が牙を剥く「境界戦機」。4話では謎のアメイン・ゴーストがレジスタンスを襲撃する。今回はこの異形の機体とアモウを対比して見てみたい。
 
 

1.見境なきゴースト

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今回は正体不明の敵・ゴーストとの戦いが中心となる回だが、無人機とは言えその悪役らしい立ち回りは強烈だ。生身の人間相手にも容赦なく巨腕を振るい、アタッチメント認証を無視して敵の武器や腕を奪い取る。いざとなれば自爆も厭わぬ暴れぶりにアモウ達は振り回され、追い返すのがやっとだった。
 

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ケイ「戦場に落ちている機体の一部をや武器を取り込み自分のものとする、アタッチメント認証など関係なく……!」
 
所属も目的も不明のゴーストの戦い方は、一言で言えば「見境がない」。敵味方はもちろん、力を振るっていい相手かどうかや生死すら区別しないその行動はあまりに異形で、異常だ。そう、ゴーストの前では"境界"が消滅している。
 
 

2.ゴーストとの対峙に必要なもの

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ケイ「ガシン、落ち着け!」
ガシン「お前は父さんの仇……!」

 

境界が消滅した相手と対峙した時、人は自らもまた境界の消滅の危機に瀕する。父をゴーストに殺されていたガシンは怒り狂って狙撃型のジョウガンで接近戦を挑み、窮地を救ったケンブすら敵扱いしかねない剣幕だった。彼はこの時ゴースト同様に様々な見境を、境界を失いかけていたと言える。
怒りによる支配が冷静さの喪失であるように、境界を消滅させる相手に己も同様の方法で挑んでも勝つことはできない。そういう相手にこそむしろ冷静に、境界を保つことが必要になる。
 

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ゴウケン「2機の連携ができている!」
 
当初こそ息の合わなかったケンブとジョウガンだが、戦いの中で次第に連携は洗練されていく。ただ単に同時攻撃するのではなく交互に仕掛けることで相手を休ませず、ケンブによる足止めからジョウガンの本命が炸裂してゴーストの頭部を破壊……境界を消滅させるのではなくむしろ互いに保っているからこそこうした協力は可能なのであり、同時にゴーストからアモウ達の命の境界も守れている。撃破こそできなかったものの、敵の性質を考えればこうした境界の維持ができただけで十分な勝利と言えるだろう。……ただ、それはあくまでアメイン同士の戦いに限っての話だ。
 
 

3.見境の"リミッター"

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戦いを終えて痕跡隠しに当たったアモウは、ゴーストに殺されたリサの遺品を見つけて涙しレジスタンスへの参加を取り止める。それは自らの死への恐怖もあったが、何より見知った人達の死を見るのが辛いからというものだった。
 

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アモウ「嫌なんだよ!自分が死ぬのも怖いけど、知り合った人達が死ぬのはもっと嫌なんだ!」
 
これまで何度も描かれてきたが、アモウは心優しい少年だ。大した繋がりではないと言いながら1話では友人を見捨てられなかったし、2話ではくれてやるとは言われてもゲンの船を持ち出したことを気に病んでいた。
アモウには、他人の痛みを我が事のように辛く感じる気質がある。それは美質だが同時に、他人を簡単に自分の境界内に受け入れてしまう危険な素質だ*1。だからこそ彼はケンブから降り、レジスタンスへの参加も取り止める。そうやって遮断しなければ、彼の心は他人から感じ取った苦しみで潰れてしまう。これは、ケンブの衝撃や振動を我が事のように感じるアモウが自らに取り付けた"リミッター"なのだ。
 

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リミッター解除に留まらずブースターやアクセラレータまで搭載している可能性のあるゴーストと、逆に自らにリミッターをかけるアモウは"境界"に対する姿勢もまた対極の関係にある。それは日本を分解統治する4つの経済圏より何より、ゴーストこそがまずアモウの立ち向かうべき敵である証明であろう。
アモウはいかにして己の美質を守りつつ戦いに再び身を投じるのか、次回を待ちたい。
 
 

感想

というわけで境界戦機の4話レビューでした。開幕早々のリサの死亡に呆気に取られましたが、アモウをすぐ立ち直らせてまた落ち込ませるには手際がいいと言えばいいのか。ミスズが生き残っただけでも良かった。
 
ゴーストの暴れっぷりはいかにも正体不明の無人機らしい怖さがありましたし、今後の動向は気になるところ。1クールで終わりそうなペースには改めて見えませんが、連続2クールなのかそれとも分割なんでしょうかね。
 
 

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*1:ケンブの衝撃や振動を自分のもののように感じたのも同様の性質によるものだろう