境界を防壁に変えて――「境界戦機」5話レビュー&感想

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.
意思を固める「境界戦機」。5話ではアモウが再びレジスタンスへの参加を決めるまでが描かれる。仲間が傷つくのを恐れた彼が今回見つけたものは、いったいなんだろう?
 
 

境界戦機 第5話「決意」

 
 

1.懐は境界の内側

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能瀬「何もないところだが、ゆっくりできるならしばらくいるといい。リサのいた町だ」
 
前回ゴーストとの戦いで命を落としたリサの形見をいだいてその故郷を訪れたアモウは、彼女の知り合いから温かく迎えられる。後にアモウ自身が言うように、本作の人々は優しい。パーツ集めだけの関係のつもりだったのに友人と思ってくれていた少年達、野菜泥棒しようとしたのにかくまってくれたゲン夫妻、共闘を提案しながらも無理強いはしなかったレジスタンスの人々。そしてリサの知り合いの人達は、自らもアジア自由貿易協商に追われる状況でありながらアモウを逃がそうとしてくれる。その優しさがありがたいからこそ、アモウは自らは逃げるばかりの状況に涙する。
 

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アモウ「俺は卑怯者だ。今まで色んな人に助けられて、でも一人で逃げ出してこんなところにいる……!」
 
アモウが触れてきた人々の優しさはすなわち、誰かの懐に抱かれる優しさだ。自分の「境界」の内側に迎え入れてくれる優しさと言ってもいいだろう。……ただ、自分の「境界」の中に迎え入れるのはけして優しい人々ばかりとは限らない。
 
 

2.境界を防壁に変えて

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リウ「知ってますか。人を支配するのは暴力と権力と財力です」
 
今回は敵として、アジア自由貿易協商の総督府代理リウ・フウ少佐が登場する。彼は自分の立場を利用し、無実の人々を反政府思想の持ち主と決めつけては逮捕や誘拐し、人身売買まで行っていた。アモウをリサの友人に引き合わせてくれた能瀬や彼を助けようとした人々が次々と彼によって捕まるが、それは彼が勝手に拡大した「境界」の内側に捕えられるのに等しい。理念や哲学がしばしば悪用されるように(自己責任論が己への戒めではなく、他者の訴えを封じるための言葉に変質したことは記憶に新しい)、人は良くも悪くも「境界」を拡大させ自らの中に取り込もうとする生き物なのだ。境界が拡大する所に戦いや弾圧があり、そして多くの場合、権力を持った者の境界の拡大に比して個々人の境界は微力だ。
ただし、アモウにはガイがいてケンブがある。万能過ぎるほど自在に情報を取得したり書き換えられる自律思考型AIと、軍用機を凌駕する性能を持った有人アメイン。それは蝕まれる「境界」に抗うに足りる力となる。
 

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アモウ「いいか、今後同じように日本人達を虐めてみろ。この俺が、ケンブがお前たちを必ず倒す!いつでもお前たちのことを見ているぞ!」

 

捕えられた人々が処刑されようとしたところに現れたケンブは彼らの前に防壁を張り、また支配者が日本人*1を迫害しようとすれば自分が許さないと言い放つ。これは宣言だ。アモウはこの時、自分が市井の人々を守る防壁に――「境界」になると高らかに宣言したのである。
 
 

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境界の内側に誰かを抱え込めば傷つく理由になる。しかしアモウは、それは誰かを守ることでもあると今回認識した。
だから彼は再びレジスタンスへの参加を決める。他者の境界を尊重する彼だからこそ、それを守るための戦いに身を投じるのだ。
 
 

感想

というわけで協会戦機の5話レビューでした。概略は昨晩で浮かびましたが、最後の一文をひねり出す力が無さそうだったので翌午前に。睡眠は要と分かっていても後回しにしがちで、それで頭が回らなくなるんだから世話がありませんね。
 

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さてさて、次回は兄弟機3機目のパイロット紫々部シオンの本格登場となるようで。男の子のようにも見えるが特に記載がなくどうなんだろう?と当初思ったんですが、フィギュアライズスタンダードでは以前から女性と明記されてたんですよね。別に意図的にボカしてたわけじゃなさそう。活躍に期待です。
 
 

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*1:対象をこの場の人に限らぬための形容だろうが、現代の「日本に住む人」へのスタッフの素朴過ぎる意識が現れているようで少々モヤッとする