脱がされたら終わり――「吸血鬼すぐ死ぬ」9話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20211201222658j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
赤裸々満載「吸血鬼すぐ死ぬ」。9話では様々な吸血鬼が登場し画面が肌色に満ちる。だが、晒されているのは肌だけだろうか?
 
 

吸血鬼すぐ死ぬ 第9話「市民野球ケーン」「鉄の左手イマイチ地味で」「渚の帝王様」

吸血鬼・野球拳大好きは、催眠術と結界を同時に操る高等技術で人々に野球拳を挑む。 結界に入ると仕掛けられた勝負を拒否することができない故、歴戦の吸血鬼退治人も次々と脱がされ、ドラルクやロナルドも巻き込まれてしまう。
 

1.脱がされるのは服だけか

f:id:yhaniwa:20211201222727j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
マイクロビキニ「私は吸血鬼マイクロビキニ。貴様ら人間の支配者となる者!」
ロナルド「またまた変なのが出てきた畜生!」

 

今回は脱衣要素の多い回だ。1本目「市民野球ケーン」の吸血鬼・野球拳大好きはそのままズバリ退治人達を脱がせにかかるし、3本目「渚の帝王様」に登場する吸血鬼・マイクロビキニは噛んだ相手をマイクロビキニにしてしまう。一方で2本目「鉄の左手イマイチ地味で」の脱衣要素と言えばサテツがゾウさんパンツを披露させられたくらいで浮いている……と考えるのは早計だろう。
 

f:id:yhaniwa:20211201222740j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
サテツ「俺なんか全然ダメでさあ、ずっとオドオド影薄いまんまっていうか、自伝まで出すお前のメンタリティ羨ましいっていうか」
ロナルド「自虐ついでに俺をディスってくるんじゃねえ」

 

2本目序盤でサテツは自分の地味さを嘆いていたが、この時彼は酒を飲んで酔っていた。酔っていたから、地味で心優しい彼はつい心の内をさらけ出してしまった。そう、酒はサテツの目に見えない心の服を脱がして悩みをむき出しにしたのだ。
 
 

2.脱衣のプロフェッショナル達

f:id:yhaniwa:20211201222800j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
野球拳大好き「邪魔な男は全員Tシャツになった。これで残るはボインちゃんだけだあ!」
 
脱ぐものは目に見えるものとは限らない。そう考えてみると、1本目や3本目もけして服だけが脱げたわけではない。野球拳大好きは当初野球拳は保護すべき文化などど言っていたが女退治人のマリアを前にすれば建前を脱ぎ捨て欲望丸出しだったし、マイクロビキニにされたサテツは改めて自分の地味さへの悩みの深さをさらけ出している。
 

f:id:yhaniwa:20211201223026j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
マナー違反「飲みかけのジュースをベンチに放置してやる!肘が当たるとこぼれるようにな!」
 
欲望、守るべきだが法律では規制されていないマナー破り、しょうもなさ……9話で登場する吸血鬼は、その多くが手段こそ異なれそれぞれある種の脱衣のプロフェッショナルだ。退治人達が苦戦するのもこれはこれで一つの道理だろう。だが、脱がすプロだからといって脱がされる方にも耐性があるとは限らない。
 
 

3.脱がされたら終わり

f:id:yhaniwa:20211201223045j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
サテツ「ま……マイクロビキニはいいぞ」
ラルク「腕の人ー!」

 

今回登場する吸血鬼は手強い相手ばかりだ。1本目の野球拳大好きは催眠術と結界を同時使用する高等吸血鬼だし、2本目に登場した吸血鬼・マナー違反はじゃり投げでドラルクの砂を混ざりものにして地味に復活を妨害したりする。3本目のマイクロビキニは一般人を盾に仲間を増やすことで一時は退治人すら使役してみせた。だが、彼ら自身も敗因はいずれも脱衣にある。
 

f:id:yhaniwa:20211201223105j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ラルク「それならば、内部の人がボコボコにすればよいのでは?」
ジョン「ヌー」

 

結界に相手を閉じ込め相手に野球拳を強制する野球拳大好きは、結界の中の人間に攻撃されればひとたまりもなかった。あくまで子供のようなイタズラをするに過ぎないマナー違反は、うっかり元不良の本性を現したサテツには子供のように従った。世界をマイクロビキニに染めようとしたマイクロビキニは、実は全裸に対しては極度の恥ずかしがりやだった。
3人の吸血鬼の弱点はいずれも身もふたもないところにある。一見無敵にも思える彼らも、衣を脱がされれば本性に生死を左右される脆弱な存在に過ぎなかったのだ。
 

f:id:yhaniwa:20211201223325j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
サテツ「黙ってる約束だったろ!」
 
衣服というのは暑さや寒さなどから人を守るだけの存在ではない。己の全てがあらわでは弱点や欠点もむき出しになり、生物的にだけでなく社会的にも死の危険にさらされることになるのだ。法律で規制されていなくともマナーを破れば迷惑なように。サテツが不良だった過去を掘り返されたくないように。マイクロビキニを倒しても、全裸のままではどう帰ればいいのかロナルド達が途方に暮れてしまうように。
 
 

f:id:yhaniwa:20211201223123j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ロナルド「……どうやって帰ろう」
 
人は衣服なしでは、隠すものなしでは帰るべき場所へたどり着けないのだ。
 
 

感想

というわけで吸死9話の感想でした。千葉繁降臨!地上波アニメで声を聞く機会は減りましたが、やはりこの声は愉快さの塊みたいなところがあって聞いてるだけで楽しいです(冷酷なキャラなんかももちろん上手いのだけど)。斉藤壮馬演じるマナー違反の調子に乗った子供っぽさや安元洋貴演じるマイクロビキニの色っぽさなんかも素晴らしく、豪華メニューといった感じの賑やかな回でした。いやしかしかわいいなサテツさん
 

f:id:yhaniwa:20211201223353j:plain

©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
野球拳大好きを殴る時のラッシュ、拳がこっそりじゃんけんしてるのがまた楽しい。
 
 

<いいねやコメント等、反応いただけるととても嬉しいです>