境界線上に消ゆ――「境界戦機」13話レビュー&感想

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.
彼方へ飛ぶ「境界戦機」。第一部の終りとなる13話では、ゴーストとの決戦と意外な別れが描かれる。戦いの中、アモウはどんな道を選んだのだろうか?
 
 

境界戦機 第13話(最終回)「隠岐の島戦(後編)」

ケンブ達3機がかりでもゴーストを倒しきれなかった。しかも時間が経つにつれ、ゴーストはケンブ達との戦い方を学習し、猛烈にこちらを攻め立ててくる。アモウたちは熊井たちの協力を得て、逆転のための作戦を練る。
 

1.幽霊の正体見たり

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ブラッド「どっちに転んでも我々の利益に繋がる」
 
激戦が続くアモウ達とゴーストの戦いだが、13話ではそれをこっそりと盗み見る者がいる。八咫烏にゴーストの居場所を教えて戦いを仕向けた北米同盟のブラッド大尉だ。部下との会話の中で彼は、この戦いはどちらが勝っても自分達の利益になると笑ってみせる。
アモウ達が勝てばゴースト討伐の任務が達成されるし、ゴーストが勝てばメイレスに搭載されたAIユニットを回収できる可能性がある。ブラッドは周到だ。戦っている両者には勝敗の境界線は切実なものだが、彼にとってはどちら側でもさして違いはない。
 

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ナユタ「てことは……」
シオン「弱点、見つけた!?」

 

またこれまで無敵・不死身とも思われる戦いぶりを見せてきたゴーストだが、この13話ではついに弱点が明かされる。リミッターを外して常時高出力を発揮するためには相応の放熱が必要で、その機能を持つ腰部背面のアーマーを破壊されればたちまちオーバーヒートしてしまう。アモウ達とゴーストの戦いはけして常識と非常識に分かれるようなものではなく、そこにあったのは単なる敵味方の境界線でしかなかったのだ。
 
これまでの戦いはゴースト相手にいかに境界線を引き直すかが問われていたが、引き直すまでもなく既に境界線は存在していた。ブラッドの見立て同様、どちら側かに分けるだけものだった。なら、戦いの手立ても見えてくる。
 
 

2.境界線上に消ゆ

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ガイ「メイレス・ケンブ!フルブースト!」

 

弱点を見つけたことでアモウ達は反撃に転じる。ここで注目したいのは、両者の手段や結果が互いに似ている点だ。例えばゴーストが敵アメインからバッテリーを強制的に吸い上げればアモウ達はケンブに残りのバッテリーを集中させるし、アモウ達がアジア軍の武器を使えばゴーストはアジア軍のアメインを乗っ取る。ゴーストの強さがリミッターの解除によるものなら、ケンブも短時間ながら同じ事をして互角の戦いを見せる。雌雄を決しようとする彼らの戦いはしかし、よく似ている。
 

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ホウ・グアン「部下達の命に比べれば安いものだ」
 
アモウ達とゴーストの戦いがそうであるように、どちら側かという程度の違いしか無いのなら境界線を守ることも越えることも実はあまり難しくはない。ゴウケンがアジア軍の兵士であっても弱者、同じ人間と見るなら救いの手を差し伸べたように。彼に救われたアジア軍のホウ・グアンが形式的には敵としての態度を保ちつつもゴースト撃破に手を貸したように。両者が互いに恩義には恩義で応え、同時に再び戦場で会えば容赦しないと約して別れるように。こうした境界線は上下ではなく、前後を決めるものでしかないのだろう。
 

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オーバーヒートを起こしたゴーストとそれを制止しようとするアモウの押し合いは境界線を巡る争いだ。海岸という境界線を越えて熱暴走を防ぎたいゴーストと、その境界線を守りたいアモウ。しかし同時に、彼らは逆の立場でもある。あらゆる手段を使って生き延びようとするゴーストは自分の命の境界を守りたいのだし、知らない誰かも守りたいというアモウの考えは自分の周囲数メートルの境界を越えている。
相反し相通ずる両者の押し合いは、故にどこにも行けない。境界線上で爆発し、狭間へ消えるしかない。狭間こそは境界線の此岸彼岸より遥か彼方の場所であり、ガシン達はその遠さに立ち尽くすばかりとなる。
 

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ブラッド「これからは私がお前を使いこなしてやるぞ、ゴースト……!」
 
かくてひとまず戦いは決着し、物語には静寂が訪れる。しかしもちろん、これは終わりを意味しない。ゴーストが敵味方を越えてブラッドへ救援を求めた以上、共に消えたアモウ達も同じように思わぬ場所で姿を現すことだろう。
物語は未だ幕を下ろしていない。ただ境界線を引いたに過ぎないのだ。
 
 

感想

というわけで境界戦機の13話レビューでした。遅れてしまってすみません。自分でもよく分からんのですが、昨日からずいぶん気分が落ち込んでしまってレビューを書く力が出ませんでした。ΖⅡやアンクシャの再販が買えなかったのがそんなにショックだったのか、仕事納めでちょっと根を詰めたので疲れてしまったのか。
 
さて、翌週14話が放送されるんじゃないかという終わりにある程度の納得は見つけられたのですが、作品自体はやっぱりまだよく分からんのが正直なところではあります。現代との地続き感を製作者がどの程度自覚的に入れているのか(コントロールしてるのか)今ひとつ確信が持てない。
この物語がどこへ向かっているのか、まあ春からのもう3ヶ月付き合ってみようと思います。
 
 

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