鉄格子を見つけ出せ――「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」7話レビュー&感想

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©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT
密やかに果たされる「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」。7話ではDISCを取り戻す暗闘が描かれる。戦いは光の下にあるとは限らない。
 
 
農場で二人の囚人が行方不明になった。徐倫エルメェスは捜索チームに立候補する。徐倫たちの目的は、農場のトラクターのタイヤに隠されているホワイトスネイクのDISC。しかし捜索中、エルメェスが奇妙なことに気づく。5人いたはずの捜索チームに、なぜか6人いるのだ。チームに違和感が広がるなか、やがて看守の姿も消え…
 

1.不自由は見えない

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©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT
看守「そのブレスレット型手錠を外そうとして衝撃を加えたり、もしくは破壊したらただちに爆発する!」
 
ホワイトスネイクという明確な敵を追い始めた徐倫達だが、彼女達の戦いはこれまでのシリーズと比較しても制約の多いものだ。囚人である以上移動や行動はごく制限されており、周囲の人間も好意的でない可能性は比較的高い。今回の舞台、刑務所内農場はそれを考える上で好適な場所だ。
 

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©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT
シャーロット「今日の午前中、2人の囚人が農場で行方不明になったんです!」
 
前回エルメェスが撃破したマックイイーンの記憶からホワイトスネイクがトラクターのタイヤにDISCをコレクションしていると知った徐倫だが、だからといって刑務所内を自由に探し回れるわけではない。可能性のもっとも高い、しかし扉に隔てられた農場へ彼女とエルメェスが来られたのは、行方不明になった囚人2人の捜索に立候補したからだ。
 

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©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT
看守「やったァァァーーーッざまーみろ ワニのウンコの上へ……」
 
また囚人2人の捜索は一切報酬のない慈善行為として募られたものだが、それに立候補し慈悲の心を見せた囚人が敬意を持たれるかと言えばそうではない。脱走防止として彼女達の腕には爆弾付ブレスレット型手錠が取り付けられ親機を装備した看守から50m以上離れることを許されないし、その看守は徐倫達に嫌がらせもしてくる。
懲罰房からようやく出され四肢を縛られてはいなくとも、徐倫には勝手気ままな行動は許されない。爆弾付ブレスレット型手錠ライク・ア・ヴァージンの別名が「見えない鉄格子」なのは、彼女が置かれた状況を端的に表していると言えるだろう。
 
 

2.束縛の見えない敵

束縛は目に見えるものだけとは限らない。これはけして囚人の行動だけではなく、本作における超能力・スタンドもだ。
 

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エルメェス徐倫、編んだ糸の上を……まさかそれって、どんどんお前の体が減ってるってことじゃあないのか!?」
 
弾丸も弾くスピードとパワー、ものの大きさを換えたり数を増やしたりと超常現象を引き起こすスタンド能力だが、その力はけして万能ではない。一人一能力に限られたり本体との距離次第で力が増減するなど、普通の人には見えないスタンドにもやはりまた見えない制約は課せられている。そこからすれば今回の敵は異常だ。
 

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©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT
徐倫(何者なんだ……スタンドは本人から距離が遠ければパワーもスピードも弱くなるはず!)
 
今回の敵は本体よりも先にスタンドが襲ってくる点で遠距離操作型のスタンドに思えるが、そのパワーは近距離型のストーン・フリーにも引けを取らずスピードも徐倫が引き戻す糸の速度を上回るほど。スタンドの常識からすれば、これは本来ありえないことだ。
本体がいつの間にか捜索グループに紛れこんでいるらしいこと、看守やエルメェスを他の人間が気付く前に襲った点も含め、この敵は徐倫達に「見せない」ことを徹底している。尻尾を掴ませないことに長けている。しかしそれはけして、自分を無敵の存在にしているわけではない。
 
 

3.鉄格子を見つけ出せ

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©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT
正体を見せない敵の攻撃に、今回の徐倫は防戦一方だ。場所も分からぬ内に襲いかかられたり、距離などおかまいなしにパワーやスピードを発揮されれば苦戦するのは当然だろう。事実上、徐倫達は正面からの戦いを断念させられている。だが、だからといって敗北が決まったわけではない。
 

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エルメェス(バケツの中には何もいなかったんじゃあない、よく見なかっただけで水の中には既に無数にいたんだ!)
 
危機に陥りながらも、徐倫達は敵の行動から確かに法則を見つけ出している。敵は突然姿を現すわけではなく小さなスタンドが集まって一つの塊になっていること、襲ってくるのは水中だけであること……敵も神ではないのだから法則性を無視することはできない。見えない束縛からは逃れられない。
 

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徐倫「やれやれだわ。体から糸を大量に出していなかったらやられていた、こいつのパワー……!」
 
束縛は厄介なものだが、けして不利にばかり作用するわけではない。例えば徐倫ストーン・フリーの糸を放出すれば自分の体がなくなっていくことを利用して作った空洞で敵の攻撃を無効化したし、エルメェスのキッスのシールが剥がれる際に破壊を伴うというデメリットを脱出や攻撃に転用してもいる。重要なのは見えない束縛――いや"見えない鉄格子"を発見することだ。
徐倫達は今回の防戦を経て、敵の本体こそがDISC入手の前に立ちふさがる見えない鉄格子であることを発見した。ならばその時、既に道は半ば開かれているのである。
 
 

感想

というわけでジョジョ6部アニメ7話のレビューでした。外出する用事もあったりして早い時間には仕上げられませんでしたが、今回は書き始めて見ると迷わず最後まで行けたのが嬉しい。ここ2回は書いてる途中に筆が止まる=テーマが不十分なのをなんとなく感じてしまう状況に陥ってしまい、筆致にも迷いがあったので……
 

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©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT
しかし徐倫エルメェスのコンビは決まりますね。承太郎と花京院、仗助と億泰、ジョルノとブチャラティ的な並び立つ格好良さというか(ジョセフとシーザーはまた別口)。助けに来るのを止めようとするエルメェス、それに構わずやはり助けに行く徐倫のやりとりが友情パワー。あと徐倫が敵を蹴っ飛ばすシーンも格好良かった。
 
「継承」だけだとちょっと行き詰まりますが、「脱獄」も下敷きに見ていけば今後のレビューを書く道筋になるかなと感じた回でした。次回の決着も楽しみです。
 
 

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