明日は組み合わせの先――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」2期2話レビュー&感想

見方の変わる「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」。2期2話でも嵐珠は孤高の道を歩もうとする。しかし、そんな彼女からも明日の可能性は見えている。
 
 
着々とフェスティバルの準備を進める中、YG国際学園より合同ライブの誘いを受ける同好会。エマは同じ留学生だからとランジュにも声をかけるが、あっさりと断られてしまう。また、音楽科の補習に四苦八苦の侑は、課題を軽々とこなすミアが実は世界的な音楽一家・テイラーファミリーの一員であり、さらに14歳という事実に衝撃を受ける。
そんななか、ランジュが再度ゲリラライブを行うという噂が流れ、どうしても気になるかすみ、璃奈、彼方、そしてエマの4人はこっそりランジュの後をつけることにするのだが……。

公式サイトあらすじより)

 

1.組み合わせの持つ可能性

かすみ「二人とも何してるんですか?」
 
1期は同好会のアイドル一人ひとりにスポットを当てて物語を描いてきた本作だが、この2期2話はその点からすると特殊だ。物語の焦点は2期になって登場した嵐珠に合わせられているが彼女が内心を吐露したりするわけではなく、進行は同好会のエマ、彼方、璃奈、かすみの4人によって為されている。2期の切り口は1期と同じではない。また付け加えれば、先に挙げた4人の取り合わせもまた1期とは異なっている。
 
愛「もしかして果林、エマっちを取られちゃって怒ってる?」
果林「別に」

 

先に書いたように一人ひとりにスポットを当てるのが1期のスタイルだったが、それは同好会の面々が一人だけで気ままに振る舞うというものではなかった。エマなら果林、彼方なら妹の遥、璃奈なら愛、かすみならしずくとセットになる相手がおり、1話という短い時間で一人のキャラを掘り下げられたのはそういった取り合わせがあったからだ。そして並べてみて分かる通り、今回の4人はセットの相手と一緒にいない。嵐珠のことが気になって追いかけるエマ達は、いつもとは少し違うように「組み合わせ」られているのである。
 
彼方「落ち着け」
かすみ「離してください、かすみん行かなくちゃ!」

 

いつもの相手と一緒におらず、見慣れたやりとりを見せてくれないエマ達の姿はちょっと寂しく、しかし新鮮でもある。「エモエモ」とか「尊みが深い」といった現代的表現にすっかり馴染んでいるエマやそれにツッコミを入れるかすみであったり、ぐいぐい話していく璃奈であったり、かすみの暴走をお姉ちゃんらしく抑える彼方であったり……これらはいつもの相手と一緒なだけでは見られなかった新たな一面だ。
 
彼方「皆となら、見慣れた街だってまるで違う景色になる」
エマ「それぞれの色が混ざり合う、明日を作ってみよう」

 

2話のアバンで彼方とエマが言っているのはつまり、「組み合わせ」の持つ可能性についてなのである。そしてこの対象となっているのはけして、エマ達4人だけではない。
 
 

2.変化と組み合わせからは逃れられない

エマ達以外で新たな組み合わせの対象となっている者、それは誰あろう現時点で物語の中心におり孤高であろうとする人物、嵐珠だ。
 
璃奈「ここで一人暮らししてるの?」
嵐珠「ええ、人を招いたのはあなた達が初めてよ」

 

前回私は嵐珠を既に完成形に達している、純度の高いアイドルであると書いた。実際それは今回も同様で、彼女はの行動は前回と変わっていない。同好会と他校の合同ライブへの参加の誘いをにべもなく断り、同好会でやりたいことが妨げられることはないとエマ達に言われても耳を貸さない。ゲリラライブを見るためこっそり尾行するエマ達の前で見せる姿も暮らす家も全てに隙がなく、嵐珠は今回も無欠のソロ・スクールアイドルであり続けている。まるで、完璧とは不変によってなされるとでも言わんばかりだ。
 
嵐珠「『ファンと一緒』なんて言ってる同好会に入ったら、パフォーマンスにも悪影響が出るわ」
 
新たな他者や事象に接した時、人には必ず変化が訪れる。些細な言葉一つに傷つくこともあれば、逆にちっぽけな幸せが心を満たすこともある。私達はそういうとても不安定な生き物であり、だから揺るぎない存在はしばしば人から憧れの対象になる。嵐珠が体現しようとしているのはきっとそういうアイドルであり、故に彼女は己を不変の完璧な存在のように振る舞うのだろう。ソロでの活動にこだわるのもおそらく、同好会入会で生まれる変化を恐れているからだ。だが実際のところ、嵐珠が望むような不変はありえない。
 
嵐珠「よく来たわね!今日も嵐珠がみんなを夢中にさせてあげる!」
 
ゲリラライブが行われれば何もない広場が熱狂に包まれるように、アイドルとは周囲を変化させる存在である。当人が不変を志向しようと、観客やそこに生まれる空間は否応なしに変化している。アイドルは周囲と「組み合わさる」ことで「見慣れた街をまるで違う景色にする」のであり、その時点で完璧不変のスクールアイドル・鐘嵐珠も組み合わせや変化と無縁でいられない。先に私はエマ達4人の新しい取り合わせについて書いたが、より正確に言えばあれは嵐珠を尾行するエマ達という1+4の「組み合わせ」だ。ソロであろうとしても、不変であろうとしても、本作の舞台に上がった時点で嵐珠は組み合わせとそれによる変化から逃れられなくなっているのである。
 
 

3.明日は組み合わせの先

エマ「最初はわたしと同じ、スクールアイドルになりたくて日本にまで来た子だから気になってた。でも嵐珠ちゃんを見ていたら、本当のことを言ってないんじゃないかって思えたんだ」
 
嵐珠とそれを追いかけるエマ達、1+4の「組み合わせ」。前回の同好会10人と嵐珠から引き算して生まれているのが今回の組み合わせだが、これはけして可能性を狭めてはいない。大きな組み合わせは得てしてその中にいつもの組み合わせを作ってしまうし、別に当人に問題があるわけでなくとも3人より2人の方が話が弾むということはある。侑達5人を引き算したエマ達が見つけたのは、嵐珠の言葉は本心とは違うのではないかということだった。4人は前回と変わらぬ嵐珠の言葉を組み替えて――「組み合わせ」を変えて、その意味するところに変化を見出したのだ。
 
かすみ「わたし達があの人の本音を引っ張り出してやりましょう!そしてもし『同好会に入りたいです』って言ってきたら全力で歓迎してやるんです!」
 
不変であろうとする嵐珠への見方を変えたエマ達は、故に彼女達自身も変化する。お節介のようなことは続けるが、それは嵐珠を同好会に入れるためではなくその本心を引き出すため。そしてそのために彼女達は、「偶然集まった4人」から「嵐珠の本心を引き出すための4人」へと組み合わせの内実を変える。他校との合同ライブに嵐珠を招き、自分達4人で一緒に歌う歌で思いを届けようとする。
 
エマ「今度の合同ライブ、4人でやってみない?」
 
これはもちろん、継続的なグループではない。スクールアイドルフェスティバルの時に同好会の皆が一度だけ一緒に歌ったような、心が揃った時にだけ生まれる一時的な「組み合わせ」に過ぎない。だが組み合わせの妙味とは本来そういう、バラバラのものが揃うところにこそあるものだろう。めいめい気ままにこいでいたブランコが揃うように。エマ達のライブを見て日本へやってきた嵐珠との距離の問題が、自分達とファンの距離やソロで歌う同好会メンバー同士の距離に置き換えて考えられるように。既知が未知へと変わるには、そういう些細なことがあれば十分足りるのだ。
 
世界の変化とは塗り替えるような出来事によってではなく、バラバラなものの組み合わせによってこそ生まれる。
組み合わさるところに色は混ざり合い、だから見慣れた今日の先にも新しい明日が待っているのである。
 
 

感想

というわけでニジガク、アニガサキ2期2話のレビューでした。ちょっと曖昧な書き方になってしまったかしらん。「一人を大切にする話」から「一人を皆が大切にする話」になっていく部分もあるのかなこの2期は。
一人でいようとする嵐珠の登場がむしろ新しい組み合わせを生む、というのが逆説的でとてもいいなと思います。エマ達4人が一緒に歌う歌ってなかなか想像もつきませんし、新しいものが見られそう。
 
あと前回は見落としてたんですが栞子、八重歯キャラなんですね。アクティブなキャラに設定されがちな要素がこういう子にあるのって珍しくて、これも組み合わせが生み出す新鮮さなんでしょう。嵐珠にばかり目が行ってましたが、急に彼女が気になってきました。次回のライブと栞子の今後、楽しみです。
 
 

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