暗闇に消える境界線――「境界戦機」24話レビュー&感想

©2021 SUNRISE BEYOND INC.
終わりが迫る「境界戦機」。24話では新日本協力機構と北米同盟の決戦が描かれる。血みどろのこの大規模戦闘は、境界線が見失われる戦いだ。
 
 

境界戦機 第24話「北陸戦線(前編)」

 

1.見失う境界線

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ホウ「全体的に見ればじわじわと前線が押されている。その状況下で目覚ましい戦果を上げているのが……」
オリバー「八咫烏のメイレス3機ですね」
ホウ「ああ」

 

遂に開戦となったアモウ達の新日本協力機構(新日本軍)と北米同盟だが、戦況は事前予測の通り劣勢だ。ミスズによって強化されたAIでユーラシア、アジア、オセアニア各経済圏のアメインの戦闘力は格段に向上しているが未だ完成前であり、北米同盟の物量や戦術特化型AIの脅威を払拭するまでには至っていない。新日本軍の強みはやはりアモウ達のオリジナルアメインの存在にあり、前線が少しずつ押される中でも彼らは圧倒的な活躍を見せている。……だが、これは弱みと表裏一体でもある。
 
 

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オリジナルアメインが圧倒的な性能を持つことは、逆に彼らが足止めされるだけで新日本協力機構の戦力が大幅に低下することを意味する。事実、アモウ達が北米同盟のブラッド大尉などとの戦闘にかかりきりになっている間に戦局は大きく変わり、じりじりとした劣勢だったはずの彼らの軍は主要な補給線を2つも断たれてしまった。強さにもまた境界線はあり、それを見失えばいかな強者もたやすく弱さへ足を踏み入れてしまうのだ。
 
 

2.暗闇にアモウが見つけ出すべきは

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アモウ「人が乗っているのに……!」
 
境界線を見失うことは危うい。それを示しているのは新日本軍の苦境だけではない。誰あろう、ゴースト搭載機を駆りアモウにとって最大の脅威となっているブラッド大尉も同様だ。
 

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ブラッド「機体を動かす度、骨が軋み内蔵がえぐれる感覚だ……それでもまだ、まだ!」
 
ブラッドの搭乗するブレイディファントムはショックアブソーバーを始めとした安全装置をギリギリまで削って戦闘力に割り振った機体であり、有人制御にも関わらず無人機さながらの機動を可能としている。しかしそんなことをすればパイロットの体に非常な負担がかかるのは言うまでもなく、アモウのケンブ斬相手に有利に戦闘を進めるブレイディファントムの操縦席でブラッドは血まみれになっている。相手を傷つけているのか自分を傷つけているのか、これでは彼自身境界線を見失っているようなものだ。
 

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ガイ「あの時は一緒に死んでもいいと思ってた。けど、お前が生きているって分かった時は……嬉しかったんだ。だから、だから俺は絶対にお前を守る!」
 
境界線を無いもののように扱う時、人は限界を超えた力を発揮することができる。それはブラッドの文字通り命懸けの戦いも証明しているところだ。しかしあらゆる境界線を取り払ってしまえば、そこにはもはや本来あるはずの違いが存在しない。敵同様に安全装置を解除して戦力を向上させようというアモウの提案をガイが断固拒否するのは、絶対にアモウを守ろうとするのは、それが彼をゴーストと違いない存在に貶める一線だからだ。アモウの身の安全を無視して戦えば、彼と二人三脚で戦ってきたはずの自分はもはやパイロットを道具扱いするゴーストと何も変わらない。この境界線を見失ってしまえば、戦いに勝利しようともガイはガイでなくなってしまうのである。
 

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アモウ「……ガイ!?」
 
生死、欲得、夢、野望……世界はなりふりかまうことを許さぬ呵責に満ちていて、人はその厳しさの前に日頃はよく理解しているはずの境界線をしばしば見失う。だが例え手段を選ばぬことで雄飛したとしても、その先に待っているのはブラッドのような破滅的な運命に過ぎない。人が人として生きていくためには、全てを見失うような暗夜でも境界線を見つけ直すことが必要なのだ。今回の話はダメージの影響かガイが突如姿を消しアモウが暗闇に包まれる場面で幕を閉じるが、全てが光を失ったこの状況はその必要性を象徴していると言えるだろう。
境界線を巡る物語は次回、遂に区切りを迎える。最後に引かれる境界線は、果たしてどんなものなのだろうか。
 
 

感想

というわけで境界戦機の24話レビューでした。オセアニア軍のウィルソンとバーンとか、前回再登場を見た時は「君ら三下悪役そのものだったじゃん」と思ってましたが、呆気なく命を落とすのが悲しいのはどういうキャラでも変わらんですね。
 
1クール目が13話だったので2クール目は26話とばかり思っていたのですが、次回までのようで。アモウとガイがどうなるのか、結末を見届けたいと思います。
 
 

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