話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

Ⓒ2022コトヤマ小学館/「よふかしのうた」製作委員会 「よふかしのうた」 第9話より
個人ニュースサイトaniado」さんが集計してくださっている、話数単位TVアニメ10選企画に今年も参加します。ルールは以下の通り。
 
・2022年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。・順位は付けない。
・集計対象は2022年中に公開されたものとします。 

 

 

 No.1 ルパン三世 PART6 第20話「二人の悪女」

©モンキー・パンチ/TMS・NTV 「ルパン三世 PART6」 第20話より

オムニバスによるてんでバラバラの話がむしろルパンとは何かの追求となっていた「ルパン三世 PART6」。珠玉の短編揃いでしたが、レビューを書いていて特に心地良かったのがこの20話でした。敵役のグレイソンが「専有の泥棒」、不二子達が「共有の泥棒」に当てはめられ、そこから犯罪であるはずのルパンの泥棒稼業がなぜ爽快なのか見えてくるのが非常に面白かったです。

 
 

No.2 平家物語 第5話「橋合戦」

©️「平家物語」製作委員会 「平家物語」第5話より
古典を現代に蘇らせたアニメ「平家物語」からは、徳子の「赦す」という語りが印象的な5話。橋の一部が落とされて渡れない宇治橋や亡き重盛の代役を果たせない弟達や息子といった「正当な継承の失敗」を描き、一方で現代的過ぎるはずの徳子の心情に私達が感じ入ることで「非正当な継承の成功」が生まれる。
 
過去を描いた作品はいかにそれを忠実に再現しているか、「正当に継承しているか」が問われることが多いですが、それだけでは登場人物は外面が正確なだけの架空の人物や単なるキャラクターになりかねない。そうではなく、画面の向こう・時間の向こうにいるのが私達と同じ人間だと感じられる作りを重視することでこそ継承されるものもあるはずで。本作の徳子や維盛は、それを強く感じさせる存在だったと思います。
 
 

No.3 境界戦機 第19話「記念日」

©2021 SUNRISE BEYOND INC. 「境界戦機」 第19話より

サンライズビヨンドのロボットアニメからは、アモウ達の「秘密作戦」を描いたこの19話。本作は「境界線は見た目通りじゃない」ということを描いた作品なんじゃないか……というのがFani通2022上半期号への寄稿を書きながら感じたことだったのですが、AIであるガイ達の誕生日を祝おうとするアモウ達が戦いの時と同じような大仰さで描かれるコミカルさ、サプライズにすべく秘密にしたことがガイ達の不信を招く展開などはまさにそういうテーマを現していました。種明かしでいざパーティとなった際、MR(複合現実)によって同じ空間に立ったアモウとガイ達がグラスを合わせる場面が手間のかかるカメラワーク(下記動画の22分頃)で描かれているのも納得。

 

本作は手放しで褒められるものとは言い難く(この回にしても2022年のアニメとしては結婚観等に古さを感じる)、どう受け止めたらいいか悩みながら視聴したのも確かですが、やっぱり私はこの作品を見て良かったなと思うのです。

 

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No.4 BIRDIE WING -Golf Girls' Story- 第8話「ファイナル・バレット」

©BNP/BIRDIE WING Golf Club 「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-」 第8話より

2022年のダークホースとなったバーディーウィング。破天荒さと愚直さを併せ持つイヴの活躍が魅力的な作品でしたが、1話だけ挙げるとすればローズ・アレオンのための回と言っても過言ではない8話になります。

 

かつて自らの過ちで光の射すゴルフ界への道を閉ざされたローズが、それを果たさんとする妹弟子イヴに勝利することで自分は彼女に代わり得たと証明しようとする。けれど二人の差は決定的というより根本的で、ローズは自分がイヴに代わることなどけしてできなかったと思い知らされることになる。でも、それがいいのです。

ローズがイヴの代わりになれないのと同様にイヴもまたローズの代わりではなく、アンダーグラウンドに堕ちざるを得なかったローズの人生もまたかけがえがない。それは成功だとか失敗だとか、正しさや過ちではくくれない無二のものです。だから私も、半ばにして退場する彼女のことがずっと胸に残っている。敵役だからできることをきっちりやってのけた、ただひとつの魅力を持つキャラクターでした。

 

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No.5 まちカドまぞく 2丁目 第6話「夕日の誓い!まぞくたちの進む道」

©伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく 2丁目製作委員会 「まちカドまぞく 2丁目」 第6話より

まぞく再びの2期からは、一区切りになる6話。柔らかな雰囲気を崩すことなくハードな問題に取り組む本作、そこで見える逆転の発想を私は「まぞく的発想」と呼んでいますが、この回は特にそれが素晴らしい。不完全なものを組み合わせて完全を作るなどといったよくある話ではなく、むしろ不完全さを作った先にこそ幸せがあるというのがポッキンアイスで表されていることに感じ入りました。そう、ポッキンアイスは割って不完全にしなければ食べられない! 上手さという意味ではリコに私達視聴者まで化かされる8話も良かったのですが、意義深さでこちらに軍配を上げました。

 

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No.6 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2期 第6話「“大好き”の選択を」

©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」2期 第6話より

ソロ・スクールアイドルの新たな形を見せてくれた「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」2期からは6話。眼鏡の似合う優等生・中川菜々と情熱的スクールアイドルの優木せつ菜という、鏡のように対照的な姿を併せ持つ少女の回です。

 

眼鏡っ娘は眼鏡を外す姿がハイライトとなることがしばしばあり、そういう時私は、殻を破るその輝きに魅せられつつも眼鏡が失われたことに寂しくなってしまいます。けれど、この6話はそうではない。眼鏡を外して正体を明かす彼女は優木せつ菜だけになるわけではなく、そこにはむしろ菜々とせつ菜の循環が生まれている。どちらの彼女も否定されることなく、一方通行でない関係がある。それが私にとってとても嬉しいことでした。まだにじよんがありますが、楠木ともりさんが彼女を演じてくれて本当に良かった。ありがとうございます。

 

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No.7 ラブライブ!スーパースター!!2期 第9話「勝利のために」

©2022 プロジェクトラブライブ!スーパースター!! 「ラブライブ!スーパースター!!」2期 第9話より

小さな星達が繋がって輝きを増す「ラブライブ!スーパースター!!」2期からは9話を。メイと四季の「赤と青の化学反応」が見られる4話も良かったですが、Liella!の中ではすみれが一番好きな人間としてはやはりこの回が一番。憂う姿も悩む姿も正直な気持ちを打ち明ける姿も、30分全ての彼女に胸を打つ美しさがある。最高でした。

 

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No.8 よふかしのうた 第9話「ずるい」

Ⓒ2022コトヤマ小学館/「よふかしのうた」製作委員会 「よふかしのうた」 第9話より

少年の一風変わった、けれど確かな成長を描いた「よふかしのうた」からは自称恋愛マスターの吸血鬼・桔梗セリが中心の9話。恋愛が食料確保の手段であり息を吸うように人を魅了してしまう彼女にとっては恋愛よりも友情が得難く、故に恋に落ちるように友情に落ちる……という倒錯がなんとも切ない。少し前の回で主人公のコウのピュアさに悶えていたセリですが、この回の彼女も負けず劣らずピュアだと思います。

 

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No.9 ヤマノススメ Next Summit 第10話「新しい季節」

©しろ/アース・スター エンターテイメント/『ヤマノススメ Next Summit』製作委員会 「ヤマノススメ Next Summit」 第10話より

4度に渡ってアニメ化され、付き合いも長くなった本作。その中から10話を選んだのは、主人公のあおいの感じる些末と言えば些末な心の襞を丁寧に拾っているのが好きだから。

 

消極的な子が何かに出会って積極的になっていく……といった作品は多く本作もそこから外れてはいないのですが、あおいの場合は本当に少しずつなのでクラスの皆と打ち解けるとまではいかない。クラスも替わる1年の終わりになってから大勢で記念撮影をすることになって、成長を見せると同時に皆ともっと触れ合えば良かったと後悔する……という、ちょっとした苦味に胸が締め付けられます。そう思ったにも関わらず、後半ではクラス替え後に馴染めるか不安で早く1年が過ぎてほしいと願ってしまうところなんかも含め、あおいが特に人間的に感じられた回でした。

 

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No.10 ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン 第22話「天国の時! 新月の時! 新(ニュー)神父!」

©荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社ジョジョの奇妙な冒険THE ANIMATION PROJECT 「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」 第22話より

承太郎の娘・徐倫を主人公とした第6部のアニメ化。2022年にTVで放送されるシーズン2で1話選ぶなら?と考えた時、見終わる前からきっとこれだろうなと感じたのがこのF・F退場回でした。

 

実際にアニメで見て驚かされたのは区切り方で、この回はDIOプッチ神父ルーブル美術館に関するやりとりから始まります。DIOモナリザやミロのヴィーナスは魂を目に見える形にしたものと評しますが、ならば徐倫が目にするF・Fの魂の姿はそれらと同じものになる。プランクトンから生まれ、人間からかけ離れた姿だったはずの彼女の魂が徐倫達と共に戦った時の女囚エートロの形をしていることは、肉体よりも遥かにF・Fの本質を目に見えるものにしているわけです。だから別れの場面がこんなにも美しい。

アニメを見て、「これがあたしなの」というF・Fの言葉の意味がようやく分かったように感じました。本当に素晴らしかったです。

 

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選外候補

プラネテス 第15話「彼女の場合」

今年の再放送で初見。「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の台詞「ダブスタクソ親父」がTwitterのトレンドになった2022年ですが、ダブルスタンダードというものを考えるにあたって学ぶところの多い回でした。

 

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機動戦士ガンダム 水星の魔女 第9話「あと一歩、キミに踏み出せたなら」

シャディクとミオリネのありえたかもしれない、しかしもはやけしてありえない未来との決別。その切なさに心揺さぶられます。

 

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雑感

以上、2022年の話数単位10選でした。視聴できる作品の本数が減ったので選択肢も限られ、これはこれで逆にどれを外すか悩む部分があります。個人的な今年の振り返りみたいなことを今回も書こうと思ったのですが、結構な分量になり脱線も甚だしく、読んで面白いものでもないのでこちらは新年の挨拶に回すことにしました。

 

1作品のレビューに費やすエネルギーは年を追って増すばかり。とうとう1クールに3本各話レビューを書くのが精一杯になってしまいましたが、来年もこの企画に参加できるよう頑張りたいと思います。

 
 

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