隙間の学び――「魔法使いの嫁 SEASON2」3話レビュー&感想

続く学びの「魔法使いの嫁 SEASON2」。3話ではカレッジの授業は描かれない。しかし放課後であっても学びはある。
 
 

魔法使いの嫁 SEASON2 第3話「Birds of a feather flock together.Ⅱ」

チセの前に現れた凛とした青年、リアン。
魔法の教えを乞う彼に、アリスの使い魔ウィル・オー・ウィスプは適性の欠如を宣告する。
リアンは悲しげな表情を浮かべるも、気にした様子は見せない。
彼の案内によってエリアスと合流したチセは食堂の訪問を提案される。
そこにはチセのクラスメイトが集まっていた———

公式サイトあらすじより)

 

1.今日は放課後の回

トーリー「あー、寝過ごした……久々の魔法の授業だったのに」
 
今回は魔術師の一人、トーリーの目覚めから始まる。カレッジでの久しぶりの魔法の授業に興味津々だった彼はしかし、窓から差し込む赤い光に自分が寝過ごしたことを悟る。すなわち時刻は既に"放課後"だったわけだが――といって彼が魔法に触れる機会を失ったわけではなかった。部屋を出た彼が目にしたのは、師弟関係にあるというカレッジの学生・リアンが主人公のチセに魔法を教えてほしいと頼む姿だったからだ。
 
チセ「皆もよろしく」
皆「よろしく」

 

放課後とは文字通り学課から放たれた後の時間であるが、学課が終わった瞬間に学校の全てが終わってしまうわけではない。部活動に勤しむ者や級友との時間を楽しむ者等もいて、放課後には学校の残滓のようなものがある。それはカレッジに通い始めたチセや臨時の教師を務める師匠のエリアスにしても同様で、エリアスは前回生徒が危うく死にかけた責任について今回大目玉をくらっているし、チセは食堂で同じクラスの学生達から食事に誘われている。授業としての学校は終わっているが、彼女達は今も学校というくくりの中にいると言えるだろう。
 
以前に起きたことそのものではないが、その影響を色濃く残している。放課後とはそういうものだ。そして、この定義に当てはめるなら放課後は必ずしも学校の後だけとは限らない。
 
 

2.隙間の学び

エリアス「疲れてる?」
チセ「正解です。今週はいろいろあり過ぎて……」

 

放課後は学校の後だけとは限らない。これは今回のBパートで家に戻った(週末だけ戻るスタイルと思われる)チセがいつもより疲れを覚えていることからも言える。1年半ぶりの学校でたくさん喋って授業に出て、呪い持ちのスレイ・ベガとして検査も受けるカレッジの生活は実際大変なものだろう。同時に彼女はそこに充実感も覚えていて、家での安らかな時間は以前と同じものではない。「以前に起きたことそのものではないが、その影響を色濃く残している」……すなわち、チセは広義の放課後の中にいる。
 
チセ「ハロウィンで使うのってこのタイプでしたっけ」
エリアス「うん。カボチャをランタンに使い始めたのはアメリカに渡った移民達だね。それまでは主にカブが使われていたんだ」

 

私達は過去からの繋がりによって生まれ、過去にあった出来事を忘れながらも受け継いでいる生き物だ。今回はハロウィンではかつてサマインと呼ばれる祭りでカボチャではなくカブでランタンを作っていたこと、その頃信じられていた神が今は欠片がこの世界に染み付いているような状況であることなどが語られるが、これも見ようによっては私達が太古の昔の人々の"放課後"を生きている一例に挙げることができる。
 
ヨセフ「その目玉を取り出しても、もうお前は逃げられない」
 
私達が生きているのは常に現在であり、同時に過去の残滓の中でもある。チセの生活は穏やかなようだがドラゴンの呪いの力の加減にまだ慣れていないし、片目を交換した不死の呪いの持ち主・ヨセフへの答えもまだ見つけられていない。カレッジにしても純粋な学び舎というわけではないらしく、教師のナルシスと副学長のグレゴリーの会話やチセのルームメイトのルーシーの言葉らはここにも何かしら大人の(つまり子供達より過去からの)勢力争いの影響が示唆されている。まるである種の呪い、魔法のようだが、それは放課後が夕暮れであることを思い出せばさほど不思議なことではない。
 
ウィル・オー・ウィスプ「魔法使いってのはそうさな。要はさだめに捕まっちまったとろい連中さ」
 
日が沈みきった薄明の時間は「マジックアワー」と呼ばれる。そう、魔法の時間である。この魔法の時間は、以前のものそのものではないが影響の色濃く時間であるが故に普段は見えないものが姿を現す。表情をあまり変えないリアンが覗かせるトーリーへの敬慕しかり、彼との問答で妖精ウィル・オー・ウィスプが口を滑らせた「魔法使いは運命に捕まった人間」という意味ありげな言葉然り。逆説的に見れば、今回のラストで魔法と思しき力で別の場所へ連れてこられたチセとその使い魔ルツは強制的にマジックアワーに引きずり込まれたとも言える。カレッジではなくとも、彼女はそこでも何かを学ぶことだろう。
 
チセ「さだめ……」
 
放課後はマジックアワーである。明るい時間とも夜の時間ともまた違う、隙間の学びとでも呼べるものがそこにはあるのだ。
 
 

感想

というわけでまほよめの2期3話レビューでした。すみませんちょっと疲れております……アバンから「放課後」がまず浮かびましたがそれだけだと出力が足りず、マジックアワーを思いついてどうにか形にできたかなといった次第。Bパート部分についてはもっと検証が必要な気もしますが。
カレッジを主な舞台としつつ、そこだけになるわけでもなく。予告からは次回いろいろ動きがありそうにも見えますが、この2期はどういう展開になっていくんでしょうね。
 

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