【ネタバレ】姉妹と友達のタテヨコ――「大室家 dear friends」レビュー&感想

© なもり・一迅社/「大室家」製作委員会

まさかのスピンオフ映画後編「大室家 dear friends」。前作「dear sisters」と変わらぬ日々の物語からは、大室家を巡る姉妹と友達のタテヨコが見えてくる。

 

 

大室家 dear friends

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1.姉妹と友達のタテヨコ

ゆるゆり」スピンオフの映像化作品後編にあたる「大室家 dear friends」。いわゆる日常、ゆるい百合ジャンルの作風そのものはいつも通りだが、印象的なのは出来事の区切りごとに小さなエピソードが挿入されていることだろう。大室家長女・撫子が高校の友人の髪を整えてあげた出来事の後では次女の櫻子が友人の向日葵の髪を整え……たはずがくしゃくしゃにしてしまったり、三女の花子が家で小学校の友達とシール交換をして遊んだ後は何故か撫子のノートにそのシールが貼られていたりする。画面を小さくして落とす手法がいっそう挿入という感を強めており、悪く言えば流れを止めてしまってテンポが悪いのだが――その一方、繰り返される挿話からは時間の流れと垂直に・・・交差するもう一つの軸が見え隠れもする。タテとヨコ、言い換えるなら「姉妹と友達」……

 

本作には1つのミステリーが隠されている。撫子は同級生の女の子と交際しているようなのだがそのことを周囲にも姉妹にも明かしておらず、また劇中でもそれが誰なのか決定的な情報は示されない。あどけなさそうな振る舞いに反して撫子をいじる側の八重野美穂、穏やかで優しい三輪藍、明るくて撫子にいじられることの多い園川めぐみの3人の誰が撫子の恋人なのか*1? 「dear friends」では撫子が電話越しに破局の危機を迎える一幕があり、これは学校での反応で分かるのでは……と思わされるのだがそうはならない。翌日の3人は三者三様に調子を悪くしており、しかもその理由はいずれも嘘をついているのではと疑えば嘘らしく思えてくるものでしかないからだ。理由はどうあれ、同じ日に揃って不調になるというのはなんだか姉妹のよう――彼女達は友達なのに。

 

また、三女の花子は今回友人の小学生との会話はそこまで多くないが、出番自体が少ないわけではなく今回は姉の櫻子と一緒にいる場面が多い。自宅でのシール交換に櫻子が乱入してくる、自分も理由の分からないまま気分の沈んでいる櫻子を花子が気分転換に散歩に連れ出す、家でどの映画を見るか長時間議論を重ねてその間にポップコーンを食べ尽くす……櫻子が天真爛漫なこともあって、こうした花子とのやりとりはどこか友人のよう――二人は姉妹なのに。

 

字義において姉妹と友達は当然ながら全くの別物である。姉妹は年齢というタテの軸であり、学校における友人は多くの場合年齢を等しくするヨコの軸だからだ。けれど見方を変えればどちらも軸には変わりなく、90度回転させれば同じものに過ぎない。花子が櫻子に仲直りについて尋ねたように姉妹は時にもっとも身近な友人であり、大室家の近所に住む向日葵が半ば家族じみているように友人は時にもっとも身近な姉妹だ。世界とはそんな風にふとした瞬間回転するものであり、だからこそ私達も撫子達と友人の会話をつい意味ありげなものとして深読みしてしまったりもするのだろう。

 

姉妹というタテ。友達というヨコ。「dear sisters」と「dear friends」の2本によって、大室家は世界の底知れなさと身近さを同時に描いて見せているのである。

 

感想

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以上、大室家の後編レビューでした。「dear sisters」で書いたこと以外の何かを書けるのかしら、と少し不安になりながら映画館に行ったのですが、そちらと違いもすれば重なりもする作りから意外と迷わずレビューを書けました。いささか飛躍した話ですが、人間が分かり合える分かり合えないだとか、賢さと愚かさだとか、幸せと不幸だとかもこんな風にタテヨコの部分があるのじゃないかなとも思います。もちろん、全てが気の持ちようの問題だというのもまた誤りでしょうけども。


改めて、動いて喋る櫻子達を久しぶりに見られたのがとても嬉しかったです。特に花子に相談された時の櫻子と宇宙の天丼っぷりには吹き出してしまいました。スタッフの皆様、ありがとうございました。

 

 

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*1:なお私は「一番なさそうなのがかえっていい」という理由でめぐみだったらいいなという願望持ち