新世代にあらず――「ラブライブ!スーパースター!!」3期3話レビュー&感想

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

革新の「ラブライブ!スーパースター!!」。3期3話では次なるセンターに若菜四季が立つ。「白色のセンター」が見せるのは新たな世代ではない。

 

 

ラブライブ!スーパースター!! 3期第3話「白色のセンター」

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1.新世代にあらず

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代々木スクールアイドルフェスへの出場こそ叶わなかったものの、大きな話題を呼ぶことになったトマカノーテ。新たなスクールアイドルの誕生に危機感を抱いたLiella!は自分達も新しさを得るべく、四季をセンターとした新曲で代々木スクールアイドルフェスへ臨むことにしたのだが……?

 

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可可「可可達、すっかり影が薄くなってるデス!」

 

不在の「ラブライブ!スーパースター!!」。かのん、マルガレーテ、冬毬の「トマカノーテ」にスポットを当てた前回と打って変わって、3期3話はLiella!側を中心とした回だ。トマカノーテのライブはマルガレーテが負ってしまった悪評をはねのけ注目を集めることに成功したが、序盤で可可など一部メンバーが不安がるようにこれはLiella!にとって悩ましい話でもある。同じ結ヶ丘のスクールアイドルである以上どうしても両者は比較されるが、Liella!は前回のラブライブ!優勝以降何かがパワーアップした、成長できたわけではないからだ。

 

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夏美「それにしても、四季がセンターとは」
きな子「千砂都先輩の言う通り、新しい風が吹きそうッス!」

 

昨年Liella!が成長できた大きな理由は、きな子を始め4人の新入部員が入ったおかげだった。彼女達の実力は上級生に比べ明らかに劣っていたが、その問題に向き合うことでLiella!は新たな自分達に生まれ変わることができた。しかし今年はと言えばそもそも新入部員がいないし、それどころかセンターだったかのんは諸事情からLiella!を脱退してしまってすらいる。ライバルとのコラボレーションや新入生といった新要素をトマカノーテに奪われ、パワーダウンまでしているのがLiella!の現状と言えるだろう。

 

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四季「先輩……まぶしい……」

 

パワーアップのために必要な新しさ。スクールアイドル部部長である千砂都は、その鍵を2年生に求め次のセンターに若菜四季を指名する。確かに、来年以降のことを考えても2年生を前面に出していくのは正解だろう。彼女達は今後のLiella!を引っ張っていく新世代なのだ。しかし、その重圧は四季にとってあまりに重いものだった。
試しにとセンターのスポットライトを浴びた四季は、メンバーからは好評を受けるもまぶしさに倒れてしまう。そう、センターとはまぶしいものだ。脚光を浴びるアイドルの中でも更に中心に立つトップオブザトップ、そのグループの象徴的存在。しかもかつてそこに立っていたのはウィーン国立音楽大学から留学の招きを受けるほどの巨星、澁谷かのんである。代わりに浴びるそのスポットライトがまぶしくないわけがない。

 

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本人も語るように、四季は確かに目立たない性格ではある。だが、だからといって本作は「普段引っ込み思案な子も、前に出てみたら意外な一面が現れてくる」などといったよくあるストーリーを採用しない。四季自身センターをやりたい気持ちがないわけではないし、そんな話で済ませるにはLiella!のセンターの座は重過ぎるからだ。ただの新世代ではかのん不在のLiella!を背負っていくことは、これまでにない新しさを提示することはできないのである。

 

2.白は何の色

単なる新世代では次代を背負えない。だが、見ようによってはこれは新世代以外の成長の機会も意味する。悩んでいるのは四季だけではなく、部長である千砂都も同様だからだ。

 

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千砂都「やっぱり私じゃ、かのんちゃんみたいには上手くいかないか……」

 

千砂都は今回、壁にぶつかっている。確かに彼女は昨年スクールアイドル部の部長になり、時にはかのん以上に皆を引っ張る力を発揮するようにもなった。けれどそれはあくまでかのんが隣にいた状況での話であり、彼女がいない今はかつてと同じではない。けして横暴だったり頼りないわけではないが、かのんがいた時のようにはなぜか皆を導けない……だから彼女は悩むわけだが、それは四季がセンターの重責を担えない悩みと同種のものではないか? どちらもかのんがいないことに、かのんの後で上手くやれない自分に悩んでいるのは一緒なのだ。いや、おそらくこの悩みを抱えているのは二人だけではない。可可達他のメンバーも皆かのんがいないぎこちなさにまだ戸惑っていて、千砂都や四季の悩みはその一番分かりやすい例でしかない。逆に言えば千砂都はスクールアイドル部の皆の悩みをまとめているし、四季はLiella!の皆の悩みを象徴している――それはすなわち、彼女達ほど部長やセンターに相応しい人間が他にいない証である。だったら、そんな自分達がまとめ象徴しているものを形にすればいい。かのんの真似事ではなく、自分達の「色」を出せばいい。

 

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悩んだ末に千砂都は言う。いろんな人がいるからスクールアイドルで、いろんなセンターがいてもいい。目立たないセンターがいてもいい、と。その言葉が象徴するように、彼女達が新体制で初めて披露した曲「Special Color」では四季はそこまで目立っているわけではない。中学時代からの友人の米女メイとのダブルセンターのようでもある。けれどここでセンターに立っているのは間違いなく四季だ。メイは目立つのが苦手な四季のために注目を集めているだけで、そのおかげで四季はかのんの次という重責に歪まされることなくセンターを務められている。「普段引っ込み思案な子も、前に出てみたら意外な一面が現れてくる」などではなく、「いつもの四季の魅力をみんなに知ってもらいたいんだ」というメイの言葉通りの形で――いや、色でいることができている。それはライブを見に来た自信家のマルガレーテをして、自分達ももっと練習を重ねなければと緊張感を抱かせるに十分な「新しい」Liella!の姿そのものであった。

 

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「白色のセンター」の副題が示す通り、今回四季が見せた色は白色である。それ自体はまるで透明みたいに目立たないが、いろんなきれいな色の中にあっても一番輝いて見える色。けれどそれは彼女の色であって彼女の色ではない。もちろん新世代の色などでもない。白色は若菜四季の色であり、トマカノーテとはまた違うスクールアイドルを象徴する色であり――そして、「かのん不在のLiella!」という新時代の担い手の色なのだ。

 

 

感想

以上、スパスタ3期3話レビューでした。なんだかかなり意外な内容の回だったなと思います。こういった話は本文でも触れたように「普段引っ込み思案な子も、前に出てみたら意外な一面が現れてくる」内容になる場合がほとんどなわけで、そうならない話にできるのはこの状況だからこそ。
トマカノーテも8人のLiella!も、けして11人になる前の単なる不完全なグループではない。本当に切磋琢磨していくんだと感じられました。次回も楽しみです。

 

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可可のほどけた紐を妄想の演出に使いつつ、それが済めばすみれが何の説明もなく直してあげている。あまりにも完璧な流れ。

 

 

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