火種が覗く「来世は他人がいい」。3話では吉乃を巡る三角関係が示唆される。だが、本作の三角関係はそれだけではない。
来世は他人がいい 第3話「地獄の三角関係」
1.分からない理由
人の寝ている部屋に鍵を解除して入ってくる、一方で子どものように自分を慕ってくる……吉乃はいまだ深山霧島という男が分からずにいた。そんなある日、任侠組織の親睦団体の会合で祖父が東京へやってきたのと合わせて部下である吉乃の親しい人達も姿を現し……?
勃発寸前「来世は他人がいい」。第3話「地獄の三角関係」は霧島という男の底知れなさが改めて描かれる回だ。吉乃にベタ惚れな彼の女遊びの只中から始まるのだから恐れ入るが、もっと恐れ入るのはその思考だろう。彼女でもできたのかと問われれば好きな人ができたと堂々と話し、大阪から来たその相手(吉乃)が遠距離恋愛してたらどうするのかと聞かれれば最高にゾクゾクするなどと答える。およそまともな恋愛の意識はこの男にはないのだ……と言ってしまいたくなるが、それも一概に正しいとは言えない。
霧島「俺、よく考えたら吉乃の怒ってる顔しか見たことなかったからさ」
今回霧島は鍵やチェーンのかかった吉乃の部屋のセキュリティをアルミのコピー鍵や布で、つまり犯罪そのものの行為で突破して侵入するが、一方でそれは劣情故の犯行や彼女の殺害が目的ではない。彼がこんなことをしたのは自分にはいつも怒ってばかりの吉乃の他の顔を見てみたかったためだったし、更には吉乃がいると毎日が楽しい、吉乃がいるから早く帰りたいと思うし吉乃と一緒にいられるから学校行くのが楽しいと臆面もなく言い放つその姿は子供のようにピュアですらある。いや、実際子供なのだろう。女遊び慣れしているのも犯罪行為にためらいがないのも子供じみているのも、常人からかけ離れているが全ては霧島の偽りなき真実に他ならない。
吉乃「改めてどんな男かって言われると……」
マゾヒストで破滅願望持ち、女たらしで笑顔が嘘くさい。吉乃は霧島という男の本質がまだ分からずにいる。精神の破綻を疑いたくなるほどの矛盾した要素が彼の中には同居して、いや重なっているからだ。そして、重なっているのはけして彼一人に限った話ではない。
2.重なる三角
布袋「おう、吉乃。元気にしとったか」
重なっているのは霧島だけではない。その分かりやすい例は今回登場する染井組の構成員、布袋竹人だろう。吉乃にとって彼は死んだ親の代わりに自分の面倒を見てくれてきた存在であり、つまりこの男には祖父の部下と父親という2つの役割が「重なって」いるからだ。
布袋にばかり世話になったから小さい頃祖父に育てられた記憶がほとんどないとすら言う吉乃に、彼は「そんなこと口が裂けても組長には言うなよ」とツッコミを入れる。コミカルに描かれてはいるが、実際そんなことを聞けば祖父の蓮二は布袋に嫉妬することだろう。そう、嫉妬である。蓮二がそれ理由に彼を冷遇するような器の小さい人間ではないにしても、そこには一種の三角関係の香りが漂っている。
人間という存在は、そしてその関係はいくつもの層の重なりであり層ごとにズレが存在する。今回の話では関東の任侠組織の親睦団体の会合に関西の桐ケ谷組からも蓮二と吾妻という男が参加しているが、吾妻は関東の姫虎尾会理事長である菅と仲のいい蓮二を良く思っていない節があるし、また蓮二は霧島の祖父である萼と旧友であるが同じく付き合いの古い竜舌一家総長・秋目は今回二人が「いちゃついてる」ところに割って入った形に見えなくもない。先述の布袋がそうであるように、層によるズレはしばしば三角関係を生むのだ。もちろん、主人公である吉乃もまた例外ではない。
吉乃「また抗争が起こるってこと?」
翔真「さあ。可能性はあるってだけです。でも、東京に吉乃さんがおる限りは組長がドンパチ起こさへんように手ぇ回すと思いますけどね」
吉乃は自分と霧島の縁談は蓮二の無茶振りだと考えていたが、自分に会いに東京からやってきた蓮二の事実上の養子・鳥葦 翔真(とりあし しょうま)からそれが自分や霧島個人の問題で終わらない可能性を聞かされる。いわく、数十年前にも桐ケ谷組が関東の任侠団体と兄弟盃を交わしたことがあったがそれは関東進出の手がかりとして大規模な抗争に繋がった。平和協調路線を謳う今回の染井組と深山一家の盃も同様の結果に繋がるかもしれない。吉乃がいる間はそんなことにならないよう蓮二が手を回すだろうが……と。つまり吉乃と霧島の婚姻には2人の男女の幸せの問題とは別に、日本を揺るがす任侠組織の騒乱に繋がる層が重なっているかもしれないのだ。加えて年齢の近い翔真と吉乃は極めて親密な関係で2人のやりとりにはデートか何かに見える部分がないではないし、また翔真は吉乃のためならろくでなし同士(つまり重なっている)の霧島を殺しても構わないとすら彼女に伝えてもいる。吉乃にはそんなつもりはないが、もし翔真と霧島の間に何かあればそれもまた抗争のきっかけになりかねないのは否定できないところだろう。この三角関係にもまた、任侠組織の問題という層が重なっている。それが恋愛模様の一言で片付けるにはあまりに厄介な代物なのは言うまでもないだろう。
重なるところ三角関係あり、三角関係あるところ重なりあり。副題が示す通り、吉乃達の重なる三角は地獄の三角関係なのである。
感想
以上、来世は他人がいいのアニメ3話レビューでした。三角関係で見ればいいのは副題通りですが、それが布袋や秋目にも当てはめられるんじゃないかと思いつくのに手間取りました。後者は現状、完全にただの妄想ですが。翔真とのやりとりで吉乃の中に「普通っぽい価値観」「本職顔負けの度胸の座りっぷり」以外の層がまだまだたくさんあるのが見えてきたのも面白かったな。さてさて、次回霧島と翔真はぶつかってしまうんでしょうか。
<いいねやコメント等、反応いただけると励みになります>
重なる三角――「来世は他人がいい」3話レビュー&感想https://t.co/sIyORdRh4d
— 闇鍋はにわ (@livewire891) October 22, 2024
ブログ更新。三角関係は吉乃、霧島、翔真だけではないという話。#来世は他人がいい#raisetanin