雨と虹の「ラブライブ!スーパースター!!」。3期4話では冬毬と夏美の過去が明かされる。どんなにきれいに晴れたとしても、心の雨は消えたりしない。
ラブライブ!スーパースター!! 3期4話「No Rain, No Rainbow」
1.消えない雨
代々木スクールアイドルフェスでかのんがいた時とはまた違った存在感を発揮してみせたLiella!。トマカノーテとどちらが結ヶ丘の代表としてラブライブ!に出場するのかが校内でも話題になるようになっていた。そんなさなか、練習中に両チームが鉢合わせしたことで鬼塚姉妹の事情が明かされ……?
名残の「ラブライブ!スーパースター!!」。3期4話は鬼塚夏美・冬毬姉妹の過去が明かされる話だ。冬毬はかつて姉が挫折するのを何度も見てきており、スクールアイドルを続ければきっとまた傷ついてしまうからそれを止めるため新スクールアイドル部に入ったことが判明する。……のだが、それを踏まえても2人の状況はややこしい。
一般に、挫折の繰り返しが問題になる場合に落ち込んでいるのは挫折した人間当人だ。例えば失敗を重ねた夏美は今も落ち込んだままで、妹の冬毬の頑張りが折れた心を奮起させるといった展開の方がよほど分かりやすいし物語でもよく見られる構図だろう。けれど鬼塚姉妹の場合、挫折した夏美は2期で既に立ち直っており今もこだわっているのは冬毬の方である。彼女がしているのは余計なお世話、ただの過保護でしかないと批判することだって不可能ではないだろう。にも関わらず本作がそれを許さないのは、ひとえに劇中の冬毬の言葉が重みをもって響くからだ。
かのん「決めつけたら終わりだよ、まだ未来なんて誰も分からないんだから……」
冬毬「だから……続けても構わないと言うのですか? 駄目だったら?」
かのん「それは……」
冬毬「あなた達と姉者との関係はスクールアイドル活動をしている間だけになるかもしれない。けれど私はこれまでもこれからもずっと見ていくのです、姉者のことを。もう傷ついてほしくないのです! 姉者に……」
引用したかのんと冬毬の会話から分かるのは、両者の見ているスパンの違いである。かのんが見ているのは「次がうまくいくかどうか」であり、それが成功する可能性は確かに十分あるだろう。3年生の実力は折り紙付きだしかのんという「主人公」すらいる。けれど冬毬が見ているのはもっと先だ。次がうまくいったとしてその次は? 更に次は? きっとそのどこかで夏美はまた挫折するだろう。当たりくじだけを引く人生などありえず、いずれ夏美はまたハズレくじを引くことになる。それがかつてどれだけ夏美を傷つけたか、今後どれだけ夏美を傷つけるか冬毬は考えずにいられないのだ。確かに昨年Liella!で優勝の栄光を掴みはしたが、だからといって幼い頃に夏美の「夢ノート」がバツマークばかりで埋まった過去が消えたわけではない。雨と共に夏美が涙したあの日が消えたわけではない。
冬毬が象徴するもの。それは天気が変わろうが雨が降った過去もこれから降る未来も消えない事実だ。消えない雨を知るからこそ、姉のことが、そして姉の笑顔が大好きな冬毬はかたくなに夏美に夢を追わせまいとするのである。
2.虹に変わる雨
今回夏美達に立ちふさがった、消えない雨という壁。これを否定するのははっきり言って不可能だ。未来のことなど誰にも保証できないし、次の次にあたるかのん達の引退後、実力に劣る現2年生が挫折する可能性ははっきり言って非常に高い。単純な努力で解決するような問題ではない以上、必要なのは発想の転換である。
先の問答の翌日、夏美は冬毬が持ってきた夢ノートの残骸を他の2年生達が読んだことを知る。夏美が何度も挫折を重ねた証、スクールアイドルも新たにそこに加わってしまうかもしれない辛いノート……けれど、それを読んだ彼女達が感じたのはけして失敗を繰り返す恐怖だけではなかった。
きな子「夢を叶えようと思ったら、傷ついたり落ち込んだりするから笑顔になれる日がくるんすよね」
桜小路きな子は前のめりになって言う。自分はノートを読んで感動したと。夏美はこんなにもたくさん挑戦してきたのかと。
米女メイは最初は照れ臭そうに、けれど最後はまっすぐ正面を向いて言う。たいして失敗もしてないのにクヨクヨしたことのあった自分がかっこ悪く思えたと。夏美はすごいと。
若菜四季は外国のことわざを引用して言う。「No Rain, No Rainbow」……雨が降らなければ虹は出ない、と。そう、「雨」が降らなければ、と。
人生には必ず雨の降る時がある。けれどそれは夢を叶えようと懸命になるからで、虹が出るのは雨あってこそだ。だったら、消えない雨もけして悲しみの涙としてしか残らないわけではない。事実、夏美の夢ノートは他の2年生達を鼓舞したのだ。実力で劣る自分達を十分自覚してなお、挑み続けたいと思わせたのだ。だったら、冬毬にもそれを伝えればいい。
夏美「だからこれからも、私を見ていてほしい! 涙を流したここからもう一度、最高の笑顔を目指しますの! 雨の後のあの虹のように!」
姉に呼ばれて駅にやってきた冬毬は、他の2年生と共に現れた夏美に感謝を告げられる。私の笑顔を好きと言ってくれてありがとう、と。スクールアイドルに出会えて、落ち込んだり傷つく時があっても本当に楽しいと思える笑顔になれると――最高の笑顔になれると信じられるようになったと。だからこれからも私を見ていてほしい、と。冬毬は何も言わないけれど、いや何も言わないからこそその顔は、彼女が夏美に見とれていることをはっきり語っている。冬毬は今、大好きな姉の大好きな笑顔を見ているのだ。今までで一番の笑顔を見ているのだ。だったらもう、彼女にスクールアイドルを止める理由は存在しない。姉が泣いたあの日からずっと雨の降り続けていた冬毬の心にもこの時、ようやく虹の橋がかかった。
雨は消えない。心に降ったそれは、雨上がりと共に虹に変わるだけなのである。
感想
以上、スパスタ3期4話レビューでした。夏美と冬毬の関係がなんでこんなややこしい配置になってるのか、なぜ「No Rain, No Rainbow」で問題が解決するのか最初全然ピンとこなくてですね。冬毬がなぜこんなにも夏美を止めようとするのか考えていくとこんなレビューになりました。最後のシーン、彼女がどれだけ嬉しかったろうと想像すると良かったねえと言ってあげたくなります。
さてさて、次回はなんと上海が舞台? 可可絡みとなれば当然すみれの出番にも期待が高まります。
<いいねやコメント等、反応いただけると励みになります>
消えない雨――「ラブライブ!スーパースター!!」3期4話レビュー&感想https://t.co/mTfrJKaj8H
— 闇鍋はにわ (@livewire891) October 27, 2024
ブログ更新。夏美を思う冬毬の心に降り続けた雨と、そこにかかる虹の橋の話。#lovelive #Liella#ラブライブスーパースター#スパスタ#スパスタ3期