試しの「来世は他人がいい」。5話では京都から吉乃のいとこが姿を現す。彼女の役割は一種の試験官だ。
来世は他人がいい 第5話「椿姫」
1.霧島の受けるテスト
体調も回復し、京都から横浜へ引っ越してくるいとこ・明石潟椿と会うことになった吉乃。おしとやかに見えて曲者の彼女と霧島が話すことは……?
椿「まあ、そうなのね。私吉乃ちゃんが初めて抱かれた男なら私も抱かれて竿姉妹になっちゃおうか思ってたんですけど」
霧島「俺は全然構いませんよ?」
吉乃「お前ら二人で勝手にやってくれ!」
穏やかにやり合う「来世は他人がいい」。5話は明石潟椿が登場する回だ。大学進学を機に京都から横浜へやってきた吉乃のいとこ、楚々とした容姿振る舞いと裏腹に貞操観念に乏しく祖父である蓮二が大好き……吉乃の縁談相手である霧島との会話も水面下で火花が散っているようなところがある食えない人物で、上田麗奈のキャスティングも納得のところだろう。
霧島「大丈夫だよ、あと2日もある」
吉乃「2日でどうにかなるわけねーだろ! しかも初日数学あるし」
1つ年上の椿の存在や前回看病してもらったこともあって、今回の吉乃は霧島への対抗意識を前面に出さない。中華街で食べ過ぎたり直後に甘いものを食べたいと言い出すなど目立っているのはむしろ子供っぽさの方だ。勉学も苦手でテストに頭を悩ませ、余裕しゃくしゃくな霧島とは対照的。ただ、だからといって霧島の方はテストは無関係と考えるのは正しくない。彼が今回挑んでいるのは
2.美しき試験官
この5話は霧島が椿のテストを受ける回である。そう解釈した時、霧島という学生は非常に熱心だ。彼は家系図のややこしい吉乃と椿の血縁関係をしっかり”予習”してきたし、女遊びの副産物ではあるが今回の舞台である横浜の地理にも詳しい。椿と話を合わせるのも上手く、大抵の人間ならたやすく合格点を出すことだろう。ただ、椿は大抵の人間ではない。
椿「優しくしてあげたいし、できれば吉乃ちゃんに構ってほしいのね。報われてはいないようやけど」
椿は指摘する。霧島は一見よく分からない人間に見えるが、吉乃と自分で態度が違い過ぎるから分かりやすい。吉乃がしたいことを先回りして他人に割り込ませないようにしているし、彼女に優しくしてあげたいだとか構ってほしいだとか考えている……と。これは霧島にとって、「先生はお見通しですよ」という合図だ。表面的な点数稼ぎはもう十分だと言われているに等しく、故に彼は場所を変えてもっと踏み込んだ部分まで話を進めていく。1話で吉乃が腎臓を売ったツテとは違法な臓器移植も手掛ける医療団体にも近しいあなたなのではないか。腎臓を探しても見つからないのはそもそも摘出していないからではないか……交際人数が何人かなどといった話とは比べて物にならない「やくざ」な話を。
暗い観覧車の中で霧島が披露する、吉乃の腎臓摘出への椿の関与の推理。それを聞く時、椿は自らもまた試される側に立たねばならない。テストはする側とされる側が常に同じとは限らず、時にはそれがかえって公平さを招きもする。一種の裏テスト、闇の答え合わせとでも呼ぶべき問答であらわになったのは、椿が吉乃を心から案じていること――つまり試験官として適切な人間である証明だ。彼女は腎臓の代わりに吉乃が死ぬギリギリまで血液を取ったがそれは彼女の意地を尊重した結果に過ぎないし、霧島がどうしようもないクズ野郎になったら吉乃を整形させてでも一生会わせないと言ってのけるくらいには彼女のことを大切に思っている。だから椿は試験官たりえる。独断と偏見で基準を運用することも許される、霧島にとっても信用できる人間たりえる。今回のラストで2人は連絡先を交換し互いに惚れ込んでいる人物の写真をやりとりするが、それは彼らが互いを認めあった証のようなものなのだろう。
椿「もしあんたがどうしようもないクズ野郎になりさがったその時は覚悟しときや。吉乃ちゃんのこと整形させてでもいい。アンタが一生血眼になって探しても会われへんようにしたるから」
明石潟椿は美しき試験官である。彼女に試される中できっと、霧島は己の何たるかを知っていくのだ。
感想
以上、来世は他人がいいのアニメ6話レビューでした。霧島が試されているみたいだな、という印象と観覧車でのパワーバランスを見ていくとこんな話と言えるかなと。下品な話をした後でそれ以上の肝の座りっぷりを見せる椿の印象がとにかく強烈でした。こえー……さてさて、次回はどんなお話なんでしょうか。