11人への道――「ラブライブ!スーパースター!!」3期7話レビュー&感想

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

立ち向かう「ラブライブ!スーパースター!!」。3期7話では対決の時が迫る。Liella!が11人になるためには「道」を探さなければならない。

 

 

ラブライブ!スーパースター!! 3期第7話「Liella!に勝つために」

www.lovelive-anime.jp

1.11人になる前に

夏休みが終わり、いよいよ今年のラブライブ!の開催が発表された。1校に1組だけの出場枠はどうなるのか? 校内ではLiella!とトマカノーテの合流を期待する声があり、上海での11人のライブに両グループも手応えを感じてはいるのだが……?

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

理事長「お互い事情があって今2つのグループになっているのは理解しています。ですが、ラブライブ!にエントリーできるのは1組だけ……いくら頑張ったとしても、もう1組はラブライブ!に参加できません」

 

並び立つ「ラブライブ!スーパースター!!」。3期7話は2つに分かれたグループの今後が問われる回だ。様々な事情から結ヶ丘女子高等学校には現在「Liella!」「トマカノーテ」の2つのスクールアイドルグループがあるが、晴れ舞台となる大会「ラブライブ!」には1校から1組しか出られない。この問題をどう解決すればいいのか?というのが一応の問題ではあるのだが――ぶっちゃけてしまえば答えは既に出ている。両グループが合流して1つになれば、11人になればいい。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

冬毬「いいのですか? まだ返事の変更は間に合うかと」
マルガレーテ「冬毬だって、Liella!に入る気はないんでしょう? 敵なんだから当然よ!」

 

Liella!とトマカノーテ、2つのグループが切磋琢磨し、いつか1つのチームになる。それは主人公であるかのんがLiella!を離れた1話で提示され、上海での合同ライブで既に具現化してすらいる未来だ。トマカノーテの残り2人、冬毬やマルガレーテもそれは分かっている。11人で歌った時の感動が、また皆で歌いたい気持ちが胸の中にあるのを彼女たちは否定しない。……だが、彼女たちは一緒に歌おうというLiella!の2年生4人の誘いに乗れない。意固地になっているから? 否。それは2人の中に11人になりたい気持ちと共に、「今はまだ」なりたくない相反する気持ちが同居しているためだ。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

合同ライブを通して、答えはもはや誰の目にも見えている。結ヶ丘の生徒たちにも、Liella!の8人にも、そして冬毬とマルガレーテにも。だが、2人にはどうすれば自分たちが首を縦に振れるのかが分からない。奇妙な話だが、答えが分かっているからこそ彼女たちは悩んでいるのだ。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

かのん「今度、冬毬ちゃんをうちに呼んでみない?」
マルガレーテ「はぁ!?」

 

どれだけ答えがはっきりしていても、道のりが分からなければ結局人は迷子になってしまう。そして、逆に言えば道さえ分かれば人は歩いていける。遠回りだとしても馬鹿げたやり方だとしても、たどり着くための道を必要としているのがマルガレーテと冬毬の置かれた状況と言えるだろう。その道を指し示したのはLiella!の元センターにしてトマカノーテの一員、今回は家の水「道」も直してみせている澁谷かのんであった。

 

 

2.道のりが見える時

悩む2人にかのんがしたこと、それは話し合いの場を設けること……ではない。彼女が企画したのは冬毬を招き、自分の家に下宿しているマルガレーテと共にお泊り会をすることであった。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

冬毬「ところで……なんなのです? この格好」
マルガレーテ「私が聞きたいわよ」
かのん「上海のお土産! 楽しくなれるでしょ?」
冬毬「アグリーしかねます……」

 

要件があるから呼び出したのではないかと冬毬が問うように、これは彼女たちの置かれた状況からすれば無駄なことのように見える。すべきことに相反している・・・・・・ように思える。けれどかのんは言う。上海で11人でいいライブができたのは同じ目標に向かって手を取り合えていたからで、こんな風におしゃべりすることはきっと無駄ではない。いいパフォーマンスをするために必要なのだ……と。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

かのん「今こそ、2人の気持を解放させる時が来たんだよ」

 

かのんの言ったことは相反するものの肯定、いわばアンチテーゼの肯定である。テーゼとアンチテーゼは片方が完全否定されるのではなく乗り越えられることでジンテーゼとなる(正・反・合)が、逆に言えばアンチテーゼなしにジンテーゼは生まれない。つまり「今はまだ」11人になりたくない相反する気持ちをないがしろにしたままでは、合流したとしてもそれは形ばかりに留まるだろう。11人のLiella!がジンテーゼになるためには2人が自分の中のわだかまりを、アンチテーゼをしっかりと消化する必要があるのだ。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

冬毬「私は姉者を敵だと思っていません。ただ、夢を中途半端に追いかけてほしくない。姉者の悲しむ顔はもう見たくないですから」

 

冬毬の持つアンチテーゼ、それは姉にしてLiella!の一員である夏美の覚悟を問いたい気持ちだ。大好きな姉の悲しむ顔はもう見たくない、だから中途半端な気持ちで夢を追いかけてほしくない……それを確かめるまではLiella!と一緒にはなれない。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

マルガレーテ「私はLiella!に勝ちたい。ただそれだけよ」

 

マルガレーテの持つアンチテーゼ、それはLiella!に勝ちたい気持ちだ。去年自分と競いそして自分を打ち破った相手を乗り越えなければ、彼女は自分の気持ちの整理がつかない……その決着をつけるまではLiella!と一緒にはなれない。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

かのん「二人とも、いっぱい考えてくれてたんだね!」

 

かのんが冬毬とマルガレーテから引き出したのは、他でもない彼女たち自身の思いである。言い換えるなら、2人の持つアンチテーゼは彼女たちを一個人たらしめる必要不可欠な核だ。それを再確認したことで彼女たちは単なる追加メンバーではなくなった。自分の目的だけを考える存在でもなくなった。Liella!が本当の意味で「11人」になるために必要だったのはまず彼女達が「一人の人間」になることであり、だから2人は自分たちの気持ちを大切にしてくれたかのんのために彼女の思惑を超えた動きを見せるようになったのだろう。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

「3人」になったトマカノーテはLiella!に合流するのではなく、学園祭で対決する道を選ぶ。遠回りで馬鹿げた道かもしれないが、それは間違いなく11人の未来が繋がった瞬間だ。11人がそれぞれ一人の人間になったこの時、答えまで彼女たちが走るべき道のりは既に見えているのである。

 

感想

以上、スパスタ3期7話レビューでした。「敵じゃなくて競い合うライバル、いつか一つになる」という本作の作劇は私がレビューを書く時に用いる弁証法がほとんどそのまま当てはめられるものなのですが、今回はジンテーゼではなくアンチテーゼを探す(そしてそれがやはり今回のジンテーゼにもなっている)、まるで回転させたような構造になっている点を文章化するのに難儀しました。これからの話は手強くなってきそうな気がします。

 

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!

冬毬と話を進める際に茶々を入れないよう猫舌を発揮するマルガレーテの仕事ぶりよ。この飲み物の熱さってかのんの情熱の温度でもあるんでしょうけども。

 

 

<いいねやコメント等、反応いただけると励みになります>