あんたとわたしのタイマン――「来世は他人がいい」8話レビュー&感想

©小西明日翔講談社/来世は他人がいい製作委員会

激突の「来世は他人がいい」。8話では関西での事件がタイマンを引き起こす。ただし、吉乃たちが戦う相手は小津ではない。

 

 

来世は他人がいい 第8話「本音を言えば結婚したい 前編」

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1.小物は敵にあらず

霧島と出し抜き、小津の居場所を突き止めていた吉乃。そこには以前の騒動で2人に恨みを持つ半グレも姿を見せていた。吉乃を危険に巻き込みたくない霧島と自分の意地を通す吉乃、2人の駆け引きが向かう先は……?

 

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小津「いや、あんたの頼みだから最後までやりますけど……」

 

あなたしか見えない「来世は他人がいい」。8話は吉乃と霧島を狙う相手のちっぽけさが明らかになる回だ。霧島の元カノ・汐田菜緒を恐喝する小津がなぜ霧島にまで絡もうとしているのかはこれまで謎だったが、その理由は彼のマンションで張っていた吉乃によって明らかになった。小津と一緒にいたのは2話に登場した半グレ……東京のクラブで霧島に重傷を負わされた上、吉乃にもドライヤーで殴られた連中だったのだ。復讐のためにわざわざ関西までやってくるというのだから随分な恨みようだが、端的に言えば彼らはただの小物でしかない。小津にしても背後にいる薊(あざみ)という男こそ只者ではない雰囲気をまとっているが、そんな彼に小津は言われるがまま従うことしかできない。これまた小物である。

 

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移動先を誘導されたり足止めをくらったり、霧島と吉乃の前では半グレや小津は手のひらの上で踊るちっぽけな存在でしかない。はっきり言えば、彼らは霧島や吉乃とは勝負自体が成立していないのだ。この8話で行われている勝負は――タイマンはもっと別のところにある。

 

2.あんたとわたしのタイマン

8話の勝負は半グレや小津との戦いの中にはない。それが起きているのは彼らからすれば共通の敵の中……戦う必要のない者たちの中でだ。そう、吉乃と霧島である。

 

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吉乃は霧島の言うことを聞かない。関西で勝手をされるのは人の土地を土足で踏みにじられるようなもので我慢ならず、だから霧島を出し抜いて小津の居場所を突き止めまた彼を足止めもする。

 

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霧島は吉乃の言うことを聞かない。彼は吉乃の祖父である蓮二と何か取引をしているようだが、それだけでなく吉乃を危険に巻き込みたくない気持ちがあるから彼女の裏をかく。作戦通りに動かず、その義兄弟の翔真すら利用してみせる。

 

2人にとって、小津や半グレの思惑に大した意味はない。一枚二枚上を行くのも赤子の手をひねるようなものだ。本当に戦っている相手は、上手を取りたい相手はお互いであり、逆に言えば2人が表向き協力している状態はかえって遠回りでしかない。裏をかきあってもかえって苛立ちが強まるばかりだ。それを解消するにはむしろ2人が堂々争った方がいい。勝負した方が、いい。

 

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吉乃「あんたが日付変わるまでに全部カタつけて、その後私にも勝ったら恋人でもなんでもなったるわ」
霧島「さすが吉乃、すげえやる気出た」

 

堪忍袋の緒が切れ筋を通すためなら”やくざ”なやり方も辞さない吉乃に対し、霧島は提案する。刻限までに全て処理できたら自分を吉乃の彼氏にしてほしい、と。吉乃がその後で自分と勝負してからと条件を追加することからも明らかなように、これは2人の争いだ。他の誰でもない吉乃と霧島の勝負だ。小津だの半グレだのといった連中でややこしく見えていたが、たどり着いた事件の構図はむしろシンプル極まりないものだった。だから今回の話は最後に喧嘩の仕方の話題に移り、タイマンしやすい場所を見つけたという霧島の台詞と共に幕を閉じる。

 

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吉乃と霧島が戦う相手は小津でも半グレでもなく、その瞳の先には互いだけが映っている。戦うべき相手を見定めたその時、「あんたとわたしのタイマン」が始まったのだ。

 

感想

以上、来世は他人がいいのアニメ8話レビューでした。なんというかクリアになる回だったなと思います。退場したいのにできない菜緒みたいな人もいますが。ホストみたいな新キャラを演じているのが佐藤せつじさんなのも驚かされたり……さてさて、霧島は刻限までに事態を解決できるんでしょうか。

 

 

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