教え教わる「ラブライブ!スーパースター!!」。3期9話ではオーストリアのお菓子が理想形になる。その菓子が示すように、11人は等しき山々である。
ラブライブ!スーパースター!! 3期9話「ザルツブルガー・ノッケルン」
1.対立する「気を遣う」「気を遣わない」
紆余曲折を経てついに11人となったLiella!。しかしマルガレーテは気を遣われるのが嫌で今ひとつ打ち解けられない。ラブライブ!地区予選までに皆の心は一つになれるのか……?
並び立つ「ラブライブ!スーパースター!!」。3期9話の副題は「ザルツブルガー・ノッケルン」であり、響きから察せられるようにウィーン・マルガレーテを中心とした回だ。オーストリアの音楽一家の生まれで2期ではLiella!に壁として立ちふさがり、3期では新メンバーとなった彼女はしかし、今ひとつ他のみなになじめていない。かつては対立する立場だった自分に気を遣ってくれるのがかえって嫌で、つい距離を取ってしまうのだ。Liella!を敵視する気持ちはなくなり一緒に歌いたいと思えるようにはなったが、だからといってすぐ笑い合えるわけでもないのは当然のことだろう。11人にはなれたが1つにはなれていない、そういう難しいところに今回のLiella!は立っている。
気を遣われるのが嫌なマルガレーテが自然体でみなと一緒にいられるにはどうすればいいか? 班分けや2年生の遊びの誘いなどが今ひとつ上手くいかない中、自分の家に下宿している彼女が妹のありあにお菓子作りを教えているのを見たかのんは一計を案じる。それはなんと、ラブライブ!地区予選のダンスフォーメーションをマルガレーテに決めてもらおうというものだった。
かのん「託してみたいな、って思ったんだ」
かのんはなぜマルガレーテにフォーメーションを決めてもらおうとしたのか。意図したところは明確には語られていないが、部長の千砂都の説明に現状との符合は見ることができる。「メンバーの性格や実力も分かってるからこそ客観的に判断できない時もある」と彼女は語ったが、それはフォーメーション決めに「気を遣ってしまう」のと同義だからだ。つまりマルガレーテと他の10人の間の問題はLiella!全体の問題でもあり、ならば新たに加入したマルガレーテのフラットな視点=「気を遣わない」裁定は彼女たちの新たな1歩たり得る。11人の関係もより自然なものになるかもしれない。だからこそかのんはラブライブ!地区予選を、自分たち3年生最後の大会の始まりをマルガレーテに託してみたいと考えたのだろう。ただ、実際にはこれは簡単な話ではなかった。
翌日、全員の練習の様子を分析し意見を求められたマルガレーテは厳しい裁定を下す。2年生のきな子と夏美は動きのレベルが違い過ぎる、目立たないポジションに置いた方がいい……と。まさしく「気を遣わない」判断だが、2人にとってショックなのは言うまでもない。フラットな、自然な視点や関係は嬉しいことばかりではなかったのだ。
2.等しき山々
変に気を遣う関係は不自然だが、かといって気を遣わないことで傷つくものもある。マルガレーテを発端とした問題は矛盾にぶつかり、暗礁に乗り上げてしまったかのように見える。だが、それを解決したのはかのんではなかった。
かのんが部屋を訪ねた際、マルガレーテは言う。外から来た自分の方が冷静な判断はできるかもしれないが、それだけが正しいとは思わない。スクールアイドルには技術と同じくらい心も大切で、みなと心を1つにできなければいいライブは生まれない……と。かのんや冬毬と3人で活動した前回までの日々を通して、マルガレーテも「気を遣わない」だけが正しいわけではないことは分かっていた。
きな子と夏美はマルガレーテのもとを訪れ、指導を乞う。年齢差を気にせず指導してほしい、くらいついていきたい……と。「気を遣わない」マルガレーテの指摘は2人にとってショックだっただけではなく、未熟な自分に負けないための発奮材料ともなっていた。そうして練習を繰り返す中に一体感のある動きは、つまり自然な関係はあった。
マルガレーテときな子たちは、「気を遣う」「遣わない」の矛盾はけして敵ではなく、むしろ互いを高めあえる関係にあった。そして同時に、彼女たちの成長はもう一つの「気を遣う」「遣わない」の壁も壊している。誰あろう、それはかのんたち3年生との間の壁だ。
かのん「じゃあね!」
今年のラブライブ!が終われば、かのんたちには引退が待っている。卒業後の進路がどうあれスクールアイドル部にはもういられない……だからこの3期で彼女たちは時に前に出たい気持ちをぐっとこらえ、下級生に問題や課題の解決を託してきた。下級生も弱音を吐きそうになりながらもかのんたちを頼らず、自分たちで道を切り開いてきた。それは間違いなく正しい判断だが、見ようによってはこれは互いが「気を遣う」関係だ。そこにはほんの少しだけぎこちなさが、マルガレーテと他のみなの間のような不自然さがある。だったら、そこにもまた前に進む余地はあるはずだ。
かのん「さあ、11人で新しい扉を開いていくよ!」
いよいよ迎えた地区予選の日。3年生にとっては最後の大会……だが、これは昨年の繰り返しではない。これまでラブライブ!を連覇したスクールアイドルはおらず、かのんたちの1年上で先輩同然だったサニーパッションも優勝の翌年には涙をのんだ。昨年ラブライブ!を制覇したLiella!にとっても、このラブライブ!は初めての挑戦だ。そして、マルガレーテが言うように11人で挑める機会がもう二度とないのは下級生も変わらない。これが最初で最後のラブライブ!なのは変わらないーーそういう意味で、彼女たち3学年の置かれた状況はフラットでもある。3年生も2年生も1年生も変に「気を遣う」必要などなく、そこにあるのは対等な関係性だ。
11人が1つになって歌う「Let's be ONE」、OPで使われてきたこの曲とともにいよいよ今年のラブライブ!は幕を開け、モニタ越しにそれを応援するかのんの母や妹の前にはマルガレーテが教えたお菓子がある。「ザルツブルグの山々」の名前通りその菓子には3つの山があり、しかしそのどれにも高さの違いはない。かのんたち3年生が、きな子たち2年生が、マルガレーテたち1年生がそうであるように、異なる山には違いないがそれは1つのお菓子だ。これ以上なく彼女たちの今にふさわしいお菓子だ。
期間限定の新メニュー、11人が1つになったから生まれた新たなLiella!。それを象徴しているからこそこの9話の副題は「ザルツブルガー・ノッケルン」なのである。
感想
以上、スパスタ3期9話レビューでした。なぜかのんがマルガレーテにフォーメーション決めを任せたのか最初はよく分からなかったのですが、ましてわけの分からなかったザルツブルガー・ノッケルンが3つの山でできているのを元に考えていくとこんなレビューになりました。なんだか既に寂しい気分になってきていて、これは一度優勝した後だからこその話ですね。次回はきな子が中心の話のようですが、そういった気持ちの先に進む話になっていくのかな。
2人1組と言われて無言で近寄るこの2人よ。
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等しき山々ーー「ラブライブ!スーパースター!!」3期9話レビュー&感想https://t.co/dOmjApzjTs
— 闇鍋はにわ (@livewire891) December 1, 2024
ブログ更新。マルガレーテが主軸の今回、なぜ副題は「ザルツブルガー・ノッケルン」なのか?という話。#lovelive #Liella#ラブライブスーパースター#スパスタ#スパスタ3期