空騒ぎは平和の証ーー「アクロトリップ」10話レビュー&感想

(C) 佐和田米/集英社・「アクロトリップ」製作委員会

のどかな「アクロトリップ」。10話では色々な事件が起きては楽しく時が過ぎていく。空騒ぎは平和の証である。

 

 

アクロトリップ 第10話「ジャイアント着電」

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1.人騒がせな回?

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明日のベリーブロッサムトとの戦いの作戦をどうするか打ち合わせようとする地図子だったが、なんとクロマは月末前なのに魔力を使い切ってしまっていた。頑張ればクマ怪人くらいなら出せるかも、と力んだところなんと巨大なクマ怪人が出てきてしまって……!?

 

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空転の「アクロトリップ」。10話は「大きな」騒ぎが起きる回である。街に巨大なクマ怪人が出現、対する魔法少女ベリーブロッサムも魔法で巨大化! まるで特撮ものに様変わりしたかのような展開で、ニュースキャスターの三条もいつものようにスタジオからではなくヘリコプターから報道するほどだ。ただ、こうした反応に比して実際の事件は大したものではない。巨大クマ怪人は魔力切れ状態のクロマが起こした事故のようなもので街を壊すつもりはないし、ベリーブロッサムも自分が巨大化したことをよく分かっておらずうろうろしてクロマに「何しに出てきたんだ」とツッコまれるほど。魔力を込めたステッキで攻撃された巨大クマ怪人が破裂して無数の小さなそれとなって空を舞うように、この事件には中身がないーー言ってみれば空騒ぎに過ぎない。

 

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佳寿「わーん、見られちゃった! クロマに見られちゃったよ、前髪切り過ぎちゃったの……」
マシロウ「全然分かんねえよそんなの」
佳寿「うそうそうそ! うわーん!」

 

空騒ぎ。10話では他にも様々な事件が起きるが、それはどれも一種の空騒ぎだ。フルフェイスヘルメットでベリーブロッサムが現れるから何かと思えば前髪を切り過ぎただけだったり、ベリーブロッサムのヒーローショーをやると思って見に行ったらシルエットが似ているだけの別人だったり、上司である大溝社長が急に来ると聞いてクロマは慌てて取り繕おうとするが視察は取りやめになったり……この10話は人騒がせな出来事ばかり起きている回である、とも言えるだろう。けれどおそらく、今回の話を見た人の多くはそこに不快感などは抱かなかったはずだ。代わりにあった気持ちはおそらくーー「平和だなあ」というなごやかな気持ちだったのではないだろうか?

 

2.空騒ぎは平和の証

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空騒ぎの話で平和を味わう。どこか不思議でもあるが、考えてみればこれは当然のことだろう。空でない騒ぎは本当の騒ぎであり、起きる出来事も笑ってみてはいられない。ビルが壊されたり、フルフェイスヘルメットの下がベリーブロッサムを偽る胸に7つの傷を持つ男だったり、ヒーローショーを本物の悪の組織が(ベリーブロッサムに止められることなく)乗っ取ってしまったり、焦ってした模様替えで子どもの遊び場と化した基地を社長に見られてしまったらもはやシャレでは済まない。もう平和ではいられない。

 

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空騒ぎは怖くなく、恐ろしいことはむしろ騒ぎが起きていない水面下にある。先述したように大溝社長は視察を取り止めた=何も起きなかったわけだが、「魔法少女、か」と彼が意味深に微笑むラストはかえって残り2話での急展開を予感させる不穏さを伴っている。それは今ある平和を一変させるような本物の「騒ぎ」なのか、それとも……?

 

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クロマ「器用に連写しているな……」

 

平和とは無風状態を指すとは限らない。くだらないとすら思えることに笑って泣いて、怒って悲しんでーーそんなふうに過ごせる、こんな時間がずっと続けばいいなと思える日々にも私たちは平和を感じることができる。ベリーブロッサムとクロマ、そして地図子たちの空騒ぎをずっと見ていたいと思えるその時、私たちはこれ以上ない至福の平和を味わっているのだ。

 

感想

以上、アクロトリップのアニメ10話レビューでした。ほんとうにみな幸せそうで、みなこれからも幸せでいてほしいな……と。そう思える回だったと思います。なんで残り2話なんですか???

 

さてさて、公式からLINEスタンプやサントラの配信がお知らせされていますね。特にサントラ、単独で聞いても格好良かったり楽しかったりしそうだなと楽しみにしていました。聞いていると自然と地図子たちの声が蘇ってきて、もはやSEが勝手に聞こえてくるゲームのサントラ状態です。グッズにあまり関心がなくて金銭的な貢献がしにくい人間で申し訳ないのですが、お金を使えるところでは積極的に使っていきたい。少女漫画に縁のないわたしに本作に触れるきっかけをくれた人たちに物理的にも感謝を伝えたい……! 次回も楽しみです。

 

 

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