話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選

(C) 佐和田米/集英社・「アクロトリップ」製作委員会 「アクロトリップ」第3話より

個人ニュースサイトaniado」さんが集計してくださっている、話数単位TVアニメ10選企画に今年も参加します。ルールは以下の通り。

 

・2024年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2024年中に公開されたものと致しますので、集計を希望される方は年内での公開をお願いします。

 

昨年の記事はこちら。

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No.01 メタリックルージュ 第12話「仮面の墓場」

© BONES出渕裕/Project Rouge 「メタリックルージュ」第12話より

ジャロン「あなたがどんな未来を選ぶのかとても楽しみです、ナオミ・オルトマン……いえ。アデュー、ファースト?」

 

人に極めて近い存在・ネアンによって人間を問う作品からは、その象徴的な「人間らしさ」が覗く12話を。誰もが特別さを剥奪されていくこの回ですが、擬態能力を駆使するジャロンと何重にも嘘をついてきたナオミが同様の存在である=特別でないと示されることに大きな発見がありました。だからこそ「お前、このままだと自分と同じ空っぽの存在になるよ?」とジャロンに言われたも同然のナオミがルジュのところへ戻り、命令や合理性とは関係なく彼女と共に行くことを決める=ジャロンと違う道を進むことに大きな感動がある。

コードイヴの正体、本作のメッセージとでも呼べるものが示される最終回もとても好きなのですが、「人間とネアンは全く違う。けれど人間とネアンに何の違いもありはしない」世界を描く本作の一つの頂点はこの回にあると思うのです。

 

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No.02 ダンジョン飯 第13話「炎竜3/良薬」

©九井諒子KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会 「ダンジョン飯」第13話より

チルチャック「頼むライオス、ここは耐えて地上に戻ってくれ! 俺はお前たちを失いたくない!」

 

食とダンジョンという取り合わせから受ける印象に反しどんどんと深みを増していく作品からは、1クール目の終わりにして転変の13話を。せっかく助けたファリンを再び、そしてあまりにも突然に奪われてしまったライオス一行。目を覚ませば無謀にも追跡を再開するであろう彼をどうやって止めるか、「苦い良薬」をどうやって飲ませるか……ゾン族長の妹リドが薬を飲ませたように、口移しするかのごとくまっすぐ伝える、という結論が本当に苦くて、けれど飲み込めてしまうのが素晴らしい。
センシ絡みの7話23話など他にも素敵な話はたくさんあったのですが、半年経って振り返ってみると食べることの奥深さを一番感じたのはこの回だったなと思います。

 

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No.03 響け!ユーフォニアム3 第13話「つながるメロディ」

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024 「響け!ユーフォニアム3」第13話より

久美子(いろんなことがあったこの3年間。思い出せばどれも特別で、大切な時間だった。辛かったことも悲しかったことも嬉しかったことも、それがどんな結果をもたらそうともーーもう何も悔いはない)

 

響き続ける物語からはその最後、最終回となる13話を。久美子が自分たちのイズムを貫けるかどうかのクライマックスは前回12話にあり、盛り上がりでは私もそちらに軍配を上げるのですが――より「腑に落ちた」と感じたのはこの13話でした。


吹奏楽コンクールで演奏を終えてもう悔いは無いと思えたあの瞬間久美子は「卒業」したのであり、故に証書であるゴールド金賞をもらった後の皆の様子は卒業式にオーバーラップしている。同時にエンドロール後に明かされる久美子の数年後は彼女の進路選択である以上に高校の吹奏楽への最大の肯定でもあって。本当に全てがきれいに収まったこの終わりに、私は心からの賛辞を送りたいのです。

 

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No.04 ブルーアーカイブ The Animation 第9話「アビドス砂漠へ」

(C)NEXON Games / アビドス商店街 「ブルーアーカイブ The Animation」第9話より

ホシノ「いやあ、あの時はあちこちウロウロしまくって、ホントに馬鹿みたいに何も知らないままでさ……」

 

砂漠を行く作品からは、アビドスの置かれた状況とホシノの過去が描かれる9話を。
テキストベースの物語をそのまま映像化した感のある本作はお世辞にもあまりアニメ映えしていたとは言い難いのですが、回想も多いこの回は出来事自体がテキストよりでホシノの心情に寄り添って感じられました。
現在と過去、奇跡と現実。ホシノの目にはそのオッドアイの瞳と同じように二重写しの景色が映っている。それがとても切ない回だったと思います。

 

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No.05 負けヒロインが多すぎる! 第12話「俺はひょっとして、最終話でヒロインの横にいる」

©雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会 「負けヒロインが多すぎる!」第12話より

杏菜「そういうとこだよ、温水くん」

 

今夏最大の話題作と言えるラノベ原作アニメからは、原作者原案オリジナルエピソードの最終回を。
この回の八奈見杏菜はいつも以上に何を考えているのか語られず、あまつさえ重要な場面はカメラに映ることすらありません。偽装デートという設定によって温水が緊張せずに済んでいることからいくらか推理はできますが、結局のところそれが合っている保証はどこにもない。30分すべてが「どういうことだよ、八奈見さん」になっている。けれど私たちはそれがまるで不快ではなく、むしろ彼女により一層引き込まれてしまう――キャラクターというより、人間としての彼女が大好きになってしまう。そこが温水の、そしてこのアニメの到達点なのじゃないかと思うのです。ドラマチックな回は他にも本当にたくさんあり甲乙つけがたいのですが、意義としても見終えた時の何とも言えない満たされた気持ちからも、この最終回を選ぶのが自分には一番素直な選択だと感じました。

 

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No.06 しかのこのこのここしたんたん 第8話「ゆくシカ、くるシカ」

©おしおしお講談社/日野南高校シカ部 「しかのこのこのここしたんたん」第8話より

虎子「い、いや……あの子はどう見てもただのシカですよ。神様だなんてなにかの間違いじゃ……」

 

ハチャメチャかと思いきや意外とパロディよりだったギャグアニメからは年明けの8話を。何が何だかよく分からないようでほぼ全てが「ガール・ミーツ・シカ」なのが本作だと思うのですが、この8話は他のキャラ全てがのこをシカ神様として受け入れているのに対し、虎子ただ一人だけが「鹿乃子のこ」として見ているのがとても好きです。そのツノで世界の全てを書き換えてしまうような力を持つのこが虎子の前でだけは一人のシカ(?)でいられて、何考えてるのか分からないけど彼女はきっとそれが嬉しくて仕方ない。まさに「のこし、てぇてぇんじゃ〜」なんです。

 

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No.07 真夜中ぱんチ 第10話「暴走×因縁の対決!」

©2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT 「真夜中ぱんチ」第10話より

ゆき「そ、そそそそそんな~! てっきり新メンバーは私だと……」

 

日の当たる場所に出られない者たちと動画配信の不思議な取り合わせ作品からは、物語がクライマックスへ動き出す10話を。
バカバカしいことをやっているかと思えばシビアな世界を覗かせたりと振り幅の広い本作、ベスト選出にもってこいな感動回も4話を筆頭にたくさんあるのですが、私はこの10話のゆきの暴れっぷりを差し置いて他を選ぶことがどうしてもできません。一応は堅物の皮をかぶっていた彼女の意外な趣味や活動、恥ずかしさで悶死しかねない勘違いといった様子があまりにも滑稽にしてかわいらしい……! この回を語る度に触れていますが、おまけとして公開されているルックブック動画と合わせて茅野愛衣さんの声を存分に堪能できる回です。

 

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No.08 ラブライブ!スーパースター!!3期 第2話「トマカノーテ」

©2024 プロジェクトラブライブ!スーパースター!! 「ラブライブ!スーパースター!!3期」第2話より

かのん「いつか分かるよ!」

 

3度目の物語からは、3人の初めてのステージを描いた第2話を。この話で結成されるかのん、マルガレーテ、冬毬の「トマカノーテ」はLiella!が11人になるまでの一時的なグループです。いずれLiella!と一緒になるのは分かっていて、そういう意味では茶番に過ぎない存在……けれど3人で歌うからこそ彼女たちが見つけられるものは確かにあって、それはけして無意味な時間ではない。どこか斜に構えて見ていた私ですがフェスへの出場が叶わないと分かってなおステージに立つトマカノーテの歌には自然と居住まいを正さずにはいられませんでしたし、久しぶりに「やっぱりいいな、ラブライブ!って」とも思えた。茶番とも思える時間に無限の意味を見出していく3期の魅力がギュッと詰まった回だと思います。

 

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No.09 来世は他人がいい 第1話「負け犬に出る幕はない」

©小西明日翔講談社/来世は他人がいい製作委員会 「来世は他人がいい」第1話より

吉乃「正直ドン引きやったけど……だから売ってきたったわ、体。腎臓片方400万」

 

尋常ならざる恋愛譚からは始まりの1話を。正直、吉乃の行動がいまだに理解できません。一生関わらずにいようと思えばできなくもない霧島に舐められないために腎臓片方売るって本当にどうかしてる……同時に、このわけの分からなさに不思議に引き込まれもしてしまいます。ドMクソ野郎だった霧島へのドン引きを確かに凌駕していて、2人してもう人生メチャクチャ。会ったばかりの彼らのぎこちなさも今見ると微笑ましい(?)。

 

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No.10 アクロトリップ 第3話「推しにもしもし」

(C) 佐和田米/集英社・「アクロトリップ」製作委員会 「アクロトリップ」第3話より

地図子「わ、わしゃ……わしゃ迷子センターか!」

 

魔法少女と悪の組織と魔法少女のファンの話からは、三者が揃う第3話を。本作は私の年間ベストなのですが、その中で一番記憶に残っているのは?と考えた時思い浮かんだのが電話後の地図子の台詞「わしゃ迷子センターか!」でした。なんで!?
この3話は地図子たち4人+おじいちゃんの距離感、地図子の魔法少女ベリーブロッサムへの熱烈ながらも下品さのないファン感情の昂り、わけの分からないところへ移っていく笑い……その全てが観ていて幸せな気持ちになります。本当、このアニメを視聴対象に選んで良かった。

 

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雑感

以上が私の10選でした。胸をギュッと掴まれるような感覚を覚えたのはどこだったかを振り返って選んだ話数が多く、自分が作品のどこを好きになったのか再認識させられました。来年もこんな気持ちを味わっていきたい。どんな作品に出会えるか楽しみです。