星々の「ラブライブ!スーパースター!!」。3期11話ではLiella!が遂に全国大会のステージに立つ。11人だからこそ歌える曲、それは「時を結ぶ11人の歌」である。
ラブライブ!スーパースター!! 3期11話「スーパースター!!」
1.未来の先行体験
東京大会を突破し、全国大会進出を決めたLiella! 最後のラブライブ!に向けて気合の入る中、かのんは卒業後の進学手続きのためウィーンへ行くことになり……?
最高のステージを目指す「ラブライブ!スーパースター!!」。3期11話はかのんたちLiella!が目標としてきたラブライブ!全国大会で歌う回だが、一方で私たちをハラハラさせる回ではない。メンバーの誰かにトラブルが起きるだとか強力なライバルが出現するといったことはなく、卒業後の留学準備で一時ウィーンへ向かったかのんが困難に直面するわけでもない。全国大会までの日々は淡々としており、どれか1つの出来事が中心にはならない今回は意地悪な言い方をすれば起伏に乏しい。これは勝敗があるといっても採点基準なども不明な「ラブライブ!」シリーズの限界なのだろうか? そうではあるまい。11話の11人の日々には、Liella!が昨年に続き優勝するためのロジックが確かに埋め込まれている。
今回の話でまず目を向けるべきもの。それはLiella!の現在に未来が挿し込まれているところだろう。例えばかのんは初めて訪れるウィーンで緊張したりビクビクしたり寂しくなったりと心が揺れ動くことしきりだが、こういったことは実際に留学した時にも直面するであろう出来事だ。またメイをはじめとした2年生は3年生に頼ることなく他校を分析したり全国大会の曲作りをしているが、彼女たちはきっと来年も同じようにラブライブ!に挑んでいることだろう。全国大会後の進路が話題になる他の3年生や1年生も含め、Liella!はこの11話で現在にいながらにして未来の先行体験をしているのである。
可可「今はまだないしょデス」
すみれ「何よそれ!」
可可「ステージには立ち続けますよ!」
すみれ「だからそれを教えなさいよ!」
なんでもないような日々の中で現在と未来を結ぶこと。それが始まりの時は「現在」だけだった彼女たちを強くするのは言うまでもない。だが、時間には現在と未来だけではなく過去がある。次節では今回Liella!が結んでいる過去について見てみよう。
2.時を結ぶ11人の歌
Liella!は現在と未来だけでなく過去をも結んでいる。そのもっとも顕著な例はオーストリアからやってきた1年生、マルガレーテの場合だろう。彼女はウィーン国立音楽学校への進学を切望しており、だから昨年は中学生相当ながらラブライブ!に出場しLiella!を敵視すらした。けれど両親の指示で渋々ながら入学したこの結ヶ丘での日々はマルガレーテを大きく変えていて、今の彼女は明らかにかつてとの整合性が取れていない。過去と現在を結べていない。……だが、結ぶべき過去とは果たして1つだけだろうか? マルガレーテと同じく1年生である冬毬の存在は、過去との新たな関係の築き方があることを私たちに見せてくれている。
冬毬「みんな喜ぶと思います。……誰より、私も」
冬毬は彼女の下宿先である澁谷家を訪れウィーンに戻らずLiella!に残らないかと誘たが、同時に指摘したのは彼女と自身の内面であった。興味なんてなかったはずのマルガレーテがスクールアイドルがどんどん好きになっていることを――そして、自分も同じであることをだ。そう、冬毬がスクールアイドルを始めたのは姉である夏美の覚悟を確かめるためであり、そこだけ考えるなら姉の本気を知れた時点で辞めてもよかったはずなのだ。かつてと整合性が取れなくなっていたのはマルガレーテだけでなく、実のところ冬毬も同様であった。そんな彼女がスクールアイドル活動を続けようとしているのは、スクールアイドルを好きになれたのはなぜか? 決まっている。かのんとマルガレーテとの3人での日々があったからだ。接触も練習も最小限に抑えようとしていた自分を受け入れてくれたあの時間が、トマカノーテという「過去」があったからだ。だから冬毬は他のみなと一緒にではなく、遠い牛久から電車に乗ってマルガレーテのところまで単身やってきた。他の誰よりも彼女自身がマルガレーテに残ってほしいのだと言わずにはいられなかった。冬毬は当初の目的という過去ではなく、マルガレーテたちとの日々という過去に現在を結び直したのだ。
マルガレーテ「ラブライブ!に優勝してウィーンから声がかかったとしても蹴ってやるわ!」
冬毬の説得を受けたマルガレーテは後日自ら牛久へおもむき、ウィーンからの入学の誘いを蹴ってでもLiella!に残る意思を伝えるが、これは冬毬との過去を重んじたからこその行動であり、入学を認められなかった挫折の過去を彼女が乗り越えた証と言えるだろう。マルガレーテにとって回り道でしかなかったはずの日本での日々の先に待っていたのは、かつては想像もできなかった新しい自分であった。そう、過去を結び直した先には未来が待っていたのだった。
いったい、未来とは未来だけでは生まれないものである。嬉しかったことも苦しかったことも全てひっくるめて過去があるから現在があり、現在があるから未来に向かえる。Liella!が目標としてきたラブライブ!連覇にしても、先に挑んだサニーパッションを始めとした先輩たちや昨年優勝した過去があるからこそ目指せるものだ。そして3学年が揃った今のかのんたちの歌には、Liella!の歌には過去・現在・未来の全てが詰まっている。これが最高の歌でないはずがないし、楽しく歌える歌でないはずがない。ラブライブ!連覇を――前人未到の未来を切り開く歌でないはずがないのだ。Liella!が、結ヶ丘がもう一度トロフィーを手にするのは確かに必然の結果だったと言えるだろう。
Liella!がたどり着いた歌とは、結ヶ丘の歌とは時を結ぶ歌である。時を結ぶために、本当の未来に向かうためにこそ彼女たちは11人でなければならなかったのだ。
感想
以上、スパスタ3期11話レビューでした。直感的にこれは過去・現在・未来の話だなと感じたのですが、マルガレーテと冬毬が過去を示す重要な役割を担っているのはレビューを書いている最中に気が付きました。出番が限られる中でここまで2人を結びつけているのに脱帽です。冬毬がいなかったらきっと、マルガレーテはかのんのいないLiella!に残るまでは踏み出せなかったでしょうね。未来と過去が1つになって本当の未来にたどり着く話、とも言えるかも知れません。
さてさて、3期もいよいよ来週で最終回。卒業式を見届けたいと思いますが、この11話時点で既にハンカチとティッシュがほしい!
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時を結ぶ11人の歌――「ラブライブ!スーパースター!!」3期11話レビュー&感想https://t.co/0qsyJSDa65
— 闇鍋はにわ (@livewire891) December 15, 2024
ブログ更新。11人だからこそ歌える曲とはなにか?についての話。マルガレーテと冬毬の結びつきに悶絶。#lovelive #Liella#ラブライブスーパースター#スパスタ#スパスタ3期