アリシアの魔術――「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」4話レビュー&感想

©Yuji Iwahara/LDF/クレバテス製作委員会

不思議な「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」。第4話ではアリシアの魅力が炸裂する。彼女には魔術とは違う「魔術的」素養がある。

 

 

クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者- 第4話「魔術の適性」

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1.魔術と魔術「的」なもの

至宝「滝割」を求め水中へ潜ったアリシア。だが、水底と思われた場所はなんと古来種の魔獣の頭の上で……

 

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勇敢なる「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」。第4話はアリシアの活躍が目立つ回だ。ひどい目にばかり遭っているが、今回の話で彼女が好きになった視聴者は多いのではないだろうか。今回はその魅力を「魔術的」素養として捉えてみようと思う。

 

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私は前回、魔術を摂理に反したことを実現する技術と定義した。この点、今回のブロコは実に魔術「的」である。彼は使役するトロールを撃破され圧倒的な不利に陥りながら、ルナを人質にとることで逆に状況を有利に運び至宝の情報を聞き出し逃げようとする。切れる頭でこねる奸計はそれだけで魔術に等しいのだ。

 

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一方、アリシアはブロコのような策に走れない。クレン(魔獣王クレバテス)には言いように使われているし、ルナの正体に気づかれればブロコの言う通りにせざるを得ない……彼女が魔術の適性を持たないのは必然であり、つまり彼女には嘘つきの才能が無い。けれど最初に書いたように、それはアリシアに魔術「的」素養が無いことを意味しない。

 

 

2.アリシアの魔術

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ブロコ「あれーーーっ!?」

 

魔術の適性がなくとも、アリシアは魔術「的」素養を備えている。それがもっとも分かりやすいのは、逃走したブロコの位置を見破り彼を両断した場面だろう。隠密の魔術で姿を消した彼にとって、居場所を見破られたのはそれこそ魔術を使われたごとき驚きだったはずだ。しかしもちろんアリシアは魔術など使っておらず、彼女はルナの泣き声から位置を割り出したに過ぎない。ここにアリシアの力が魔術「的」たるゆえんがある。

 

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マルゴ「アリシア。お前は腕力でこそ男に劣るが、剣の力を引き出す才能にかけては誰より勝る。お前は、いい勇者になれる……!」

 

アリシアの持つ力。それは物事をまっすぐ見て、その本質を引き出すことのできる力だ。至宝を手にすれば即座に特性を把握するし、その力に(文字通り)溺れて強大な魔獣に1人で挑んだりもしない。極めつけはクレンに乳母としてのネルの得難さを説く場面で、彼女はこれがネルとの初対面だったはずなのた。状況を見ただけで信頼に足る人物と判断できるこの慧眼は、まさしく魔術「的」と呼ぶ他あるまい。

 

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アリシア「構わん、私は勇者だ。守るべき人々の未来と希望のために命を捧げるのが私の仕事だ。父もそう言っていた。……それにどうせ、私は一度死んでいる」

 

アリシアの強さは、それだけなら絶対的なものではない。腕力では山賊の1人にも劣るし、古来種の魔獣の強さは人間の限界を超えている。けれど初めて見る魔術にクレンが手こずったように、強さとは複雑なものだ。ネルを助ける間は再び死ぬと言われても莞爾と笑う彼女のような強さを持つ者は、種族を問わずそういるものではない。

 

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クレン「礼ならそこの勇者に言うがいい。最終的に救う決断をしたのはそやつだ。……人属の割には、そこそこ芯の強いやつだ」

 

アリシアに魔術の適性は無いが、彼女にはそれにも勝る勇者としての適性がある。芯の強さこそはアリシアの持つ魔術「的」素養なのである。

 

 

感想

以上、クレバテスのアニメ4話レビューでした。一度書き上げた後にこれではアリシアの魅力を言葉にできてないな、という悔いを感じまして。何度か再視聴した結果ほぼ丸々書き直しました。しょうがないじゃないかそれくらい面白いんだもの。

本作での千葉繁の悪役声が聞き納めなのは残念ですが、次回からの新章はどんな話になるんでしょうね。

 

8/5時点での最新話(5話)レビューはこちら。

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