新たなる王――「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」7話レビュー&感想

©Yuji Iwahara/LDF/クレバテス製作委員会

下剋上の「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」。第7話ではボーレート軍がアリシアたちを追い詰めていく。これは新たな王の誕生の話。

 

 

クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者- 第7話「魔術奥義」

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1.弱者の勝機は混沌にあり

急襲をなんとか逃れたアリシアだが、メイナードは町の人々を巻き込んで彼女たちを追い詰めようとする。一方、エスリンの師団長ロッドはボーレート軍を止めるべく戦いを仕掛け……

 

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窮地の「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」。第7話は別行動中のアリシアたち、そしてクレバテスが共に追い込まれる展開が続く。優れた力を持つ彼女たちがなぜこうも追い詰められるのか? 今回鍵となるのはその仕組みだ。

 

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アリシアやクレバテスが持つ力とは、端的には強烈な”個”の力である。剣1本で多数の虫を斬り捨て、あるいは声だけで他を圧する2人(?)は、ボーレート軍のハイエストウィザード(最高位魔術士)や将軍とて簡単に勝てる相手ではない。すなわち、この戦いにおけるメイナードやドレルは「弱者」だ。弱者の戦いの手がかりは同様の弱者――例えば彼らより更に力の劣る者たち――にある。

 

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この7話ではエスリンの将ロッドがドレル将軍率いるボーレート軍に戦いを挑むが、兵力で劣りながらも彼には十分な勝算があった。至宝と自軍のウィザードの力で川を凍結させ敵を足止め、兵数の差を無意味にする……ロッドがしたのはつまり、至宝と魔術、大軍と小勢の境目をなくすことだ。混沌を生み出すことだ。ドレルが称賛するのも頷ける、見事な作戦である。

 

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見た目には非力だが怪力のネルルが敵の隙をつけ、また包囲のための虫の大群が追撃の妨げにもなったように、弱者の勝機は混沌にある。そしてそれならば、ボーレート軍が混沌を生み出す力に長けているのは当然のことだろう。敵の魔術士ナイエの磁力操作が魔獣の力をベースとしているように、彼らが戦場へ持ち込んだ魔術とは人と人ならざる力の混沌を生み出す技術なのだから。

 

2.新たなる王

ボーレート軍の強さの源泉は魔術にある。すなわち、その戦場には必ず混沌が伴う。

 

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彼らは強敵と正面から戦わない。メイナードは憎悪を巧みにかき立て町の人々をアリシアへの追手にしてしまうし、クレバテスを挑発したドレルは尾で体を貫かれるがこれはむしろ策の内。そして両者に共通するのは混沌だ。メイナードが使役する町の人々は本来勇者が守る対象だし、ドレルが使う魔術奥義の要は魔血=クレバテスをはじめとした魔獣のものにも関わらず、それらの区別は全く失われている。だから彼らは事態を覆していく。

 

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己の血肉と引き換えにクレバテスを拘束、そして剣から開いた第三の眼から実体を再生……ドレルの魔術奥義は人間の域を超越しており、もはや魔獣より魔獣的だ。どっちが魔獣か分からない、とはつまり「混沌」であろう。この戦いは混沌が摂理を王座から追い落とす戦いであり、ドレルは混沌の体現者へ転生することで下剋上を果たしたのだった。

 

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混沌は摂理もさだめも打ち破る。より大きな混沌を抱えた者こそ、魔術はびこる世界の新たな王なのだ。

 

感想

以上、クレバテスのアニメ7話レビューでした。混沌を描いている内容に、ドレルの再生をクライマックスとすればそれは主導権=王の話であろうと感じました。人間離れどころで済まないから困る、本当に化け物になってしまった。
アリシアたちは危機をどう乗り切るのか、クレバテスは脱出できるのか。次回も目が離せません。

 

 

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