囲め! 一蓮托生の鍋――「真夜中ぱんチ」6話レビュー&感想

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同じ釜の飯の「真夜中ぱんチ」。6話では苺子の過去が明かされる。皆で囲む鍋こそマヨぱんそのものだ。

 

 

真夜中ぱんチ 第6話「苺子の願い」

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1.苺子に必要な枠

馬鹿騒ぎで晩杯荘を破損させてしまい、全員それぞれ別の場所に移るよう言われてしまったりぶ達。他のヴァンパイアはそれも仕方ないと考える中、晩杯荘に強い思い入れを持つ苺子は断固反対で……

囲む「真夜中ぱんチ」。6話は苺子がクローズアップされる回だ。自分ではしっかり者のつもりだが思考も行動も幼い、晩杯荘のマスコットのようだった彼女は今回、思いもよらぬ暗い過去を抱えていることが明かされる。なんと彼女は生粋のヴァンパイアではなく、望んだわけでもないのに同族に変えられてしまった元は人間の少女だったというのだ。血を飲めば生きていけるヴァンパイアであるにも関わらず「りぶ」を始めとした晩杯荘の住人が食卓を囲んで食事をしているのも、元はと言えば苺子の人間だった時の習慣に端を発していたのだった。

 

元々が人間ながらヴァンパイアになった苺子には、りぶ達以上に「枠」の問題が大きく関わっている。家族の存在は自分が何者か定義づける枠であり、彼らと引き離された苺子はむき出しの状態でヴァンパイアの世界に放り込まれたに等しいからだ。りぶに拾われ暮らすこととなった彼女には晩杯荘という共同体こそ自分を守る「枠」の代替であり、人間だった頃の習慣を持ち込んで食卓を囲むようにしたのも枠を強固にしたい不安の表れだったのだろう。だが、これはあくまで苺子に限った話に過ぎない。

 

馬鹿騒ぎの結果ヴァンパイアの長たるマザーから下された晩杯荘取り壊しの指示に対するりぶ達の反応は、苺子と比べて今ひとつ鈍い。家がどこだろうと彼女達は元々がヴァンパイアであり、その自己定義は保護するまでもなく揺らぎようがないからだ。晩杯荘に自己定義を依拠している苺子とそれを必要としないりぶ達の間では、温度差が生じてしまうのは仕方のないところだろう。

 

今の苺子は、ヴァンパイアとしての自分を保つ枠を守ろうと必死になればなるほどかえってヴァンパイアの枠から外れていってしまう矛盾の中にある。だが、彼女に必要なのはヴァンパイアになりきることではないはずだ。「枠」はヴァンパイアだけのものではない。

 

2.囲め! 一蓮托生の鍋

人間を出自とするためヴァンパイアになりきれず、矛盾に囚われてしまった苺子。主人公にして晩杯荘唯一の人間である真咲に諭されたりぶ達は彼女のため再び一緒に食卓を囲み、取り壊しを止めるための作戦を練る。マザーと再び話す時間をとってもらい、自分達の協調性と成長を伝えようとしたのだが――結果から言えばこれは大失敗に終わった。彼女達が大真面目に努力したのはハンドベルによる「蛍の光」の合奏だったがそんなものが掟を守れるヴァンパイアとしてのアピールに繋がるわけもなく、りぶ達はかえって自分達がいかにズレた存在なのか証明することになってしまったのだ。

 

マザーの掟の下でヴァンパイアが世に潜んで生きている中、無駄に目立ってしまうりぶ達は規律から外れたろくでなしである。劇中引用された古いドラマの台詞を借りるなら腐ったミカン以下……だが、枠に収まろうとしてもかえって枠からズレてしまうこの失敗はそもそも今回の苺子が陥っていた状況ではなかったか。

 

ヴァンパイアになりきれない苺子、そしてヴァンパイアの掟に収まりきれない自分を露呈したりぶ達。つまり今回の失敗をもって、生粋のヴァンパイアたるりぶ達と元は人間の苺子はしっかり同じ「枠」に収まっている。必要もないのに食卓を囲もうとし、必要もないのに苺子の食事に付き合ってやる、ヴァンパイアらしからぬヴァンパイアの「枠」に収まっている。そしてそれは目に見えない心の繋がりではなく、きちんと形を伴った枠だ。そう、このろくでなし達には晩杯荘を拠点として配信している動画チャンネル、「真夜中ぱんチ」という目に見える枠がある。マザーは動画チャンネルの目標である登録者数100万人を半年以内に達成すれば晩杯荘の取り壊しをやめることとしたが、彼女もまた約束によって苺子達(もちろんここには、かつての所属チャンネルを追放された真咲も含む)の所属する枠を目に見える形にしてみせたと言えるだろう。

 

かくて登録者数100万人という真咲の夢はりぶとの約束だけでなく晩杯荘の共通目標となり、一同は改めて食卓を囲む。
一蓮托生の鍋を囲むその姿こそ、苺子達を繋ぐ真夜中ぱんチという枠の象徴なのである。

 

感想

以上、マヨぱんの6話レビューでした。画像は少ないですが書けたので上げちゃおう!ということで、遅れる見込みでしたが更新です。今週分のしかのこがどうなるかは相変わらずまだなんとも言えません。

真咲の個人的な夢がどんどん晩杯荘の皆と繋がっていきますね。あと半年というのも折り返しに相応しい感。さてさて、次回のお話は。

 

 

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