生き延びろ! 無人島は人無き島――「真夜中ぱんチ」5話レビュー&感想

©2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT

サバイバルの「真夜中ぱんチ」。5話ではりぶ達が無人島サバイバル企画に挑戦する。ヴァンパイアの彼女達にとっても「無人島」は人の本質を問う場所だ。

 

 

真夜中ぱんチ 第5話「血死!無人島サバイバル」

mayopan.jp

1.ヴァンパイアで無人島サバイバル企画は成立するのか

「動画撮影に対する意識が低い」と、4人だけで1週間無人島でのサバイバル生活&動画撮影を真咲に指示されたりぶ達。ヴァンパイアの彼女達にとっては火起こしも魚獲りも余裕、のはずだったのだが、なんと血液パックを忘れてきてしまったことが判明し……!?

 

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りぶ「ミナミーノ島……」
真咲「その無人島で1週間、サバイバル生活ね」

 

血死の「真夜中ぱんチ」。5話はりぶ達が無人島での動画撮影に臨む回だ。前回の譜風の「歌ってみた」動画を始め個人企画が好調なのにも関わらず、そのチャンスに自覚のない一同に痺れを切らした真咲の指示で真夜中ぱんチの4人はミナミーノ島という島を訪れることとなる。比較的コミカル寄りの今回だが、いつものように「枠」の概念で観るにあたって今回は無人島に注目してみたい。

 

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りぶ「なんと今回からは、女子だけの1週間無人島サバイバル企画を行っていきたいと思いまーす!」

 

フィクションで無人島が舞台に採用されることは多い。生活インフラがなく、また海に囲まれ脱出も叶わない状況は人間性を問い直すのにうってつけの場所だからだ。社会から隔絶された無人島という「枠」によって人は自分を見つめ直す機会を得る、と言ってもいいだろう。……普通の人間の場合は。

 

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十景・苺子「ビクトリー!」
りぶ「だから自由過ぎるっつーの!」

 

今更言うまでもないが、りぶ達は普通の人間ではなくヴァンパイアだ。太陽の下に出られない代わりに人間より遥かに長い寿命と頑健な肉体を持つ彼女達にとって、無人島の生活基盤の乏しさはほとんど問題にならない。のこぎりがなくとも肉体だけで木を切ることができるし火起こしも簡単、生水を飲んでも腹を壊したりしないわカジキマグロを生身で捕まえるわ……企画のまとめ役のりぶは演出として自分達の能力を人間並みに抑えて動画を撮影しようとするが、そこにはどうしても人間との違いが出てしまう。無人島を人間が訪れるから物語が生まれることを考えれば、人間がいない・・・・・・この状況は物語が始まってすらいないのだ。だが、企画そのものが失敗かと思えたこの無人島生活は思わぬ形で転機を迎えることとなった。りぶ達はなんと、自分達にとって大切な食料である血液の入ったパックを家に忘れてきてしまったのだ。

 

2.生き延びろ! 無人島は人無き島

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血液がない。この事実が判明した瞬間、りぶ達のサバイバル生活は人間並みに力をセーブしたお遊びではなく本当に生死のかかった危機となってしまった。人間と同じものを口にはできるがあくまで血液の摂取によってエネルギーを接種している彼女達にとっては、水や魚などいくら簡単に取れようと意味がない。人間の血がなければ――人間がいなければ・・・・・・・・生きていくことができない。意外や意外、ヴァンパイアにとっても無人島は極限的な「枠」であった。

 

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真咲「りぶ、りぶ……おつかれー!」

 

台風でテントを吹き飛ばされ洞窟暮らし、血液不足で飛んで帰ることもできない。空腹時は消費エネルギーを抑えてコウモリになる機能があるヴァンパイアはすぐに死にはしないが、一人また一人と仲間がコウモリに姿を変えりぶがやせ衰えていく姿はまさしくサバイバルそのものだ。それでも彼女はどうにか期限である7日目の撮影を終え、そのまま倒れてしまったのだが――渇望する真咲の血を吸う夢を見たりぶは直後、自分が真咲の膝の上で血液パックを口にしていることに気が付き仰天する。真咲が血液パックの置き忘れに気付き、りぶ達の監視役のヴァンパイアであるゆきと共に助けに来てくれたのだ。

 

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りぶ「違うじゃん、ちゃんとした動画ってそういうんじゃないでしょ!?」
真咲「いや、そういうのでしょ」

 

命こそ助かったものの、りぶはトラブル続きで計画通り撮影できなかった=「ちゃんとした動画を撮れなかった」申し訳なさから逃げ出してしまう。けれど真咲の反応はむしろ反対で、ハプニングの数々すら高評価だった。辻褄なら編集で合わせられるし、思った通りでない時に必死に頑張る姿も含めていい絵になる。それが「ちゃんとしてる」ことなのだ……と。
そう、「ちゃんとしてる」というのは意外といい加減である。ヴァンパイアであるりぶ達がきっちり人間と同じようにサバイバル生活をしても私達からすれば面白くはないし、後半でりぶ達が本当に死にかけたようにヴァンパイアだって人間のように貧弱なところがあったりする。また動画撮影は今回の事実上の遭難のきっかけだが、一方で動画撮影がなければおそらくりぶは最後までは正気を保てず真咲もピンチに気付きはしなかったはずだ。無軌道なほどいい加減なのに、それなしではこの5話はお話としてちゃんと成立してはくれない。

呆れるほどに大雑把で自分勝手で、良くも悪くも水に流して反省しなくて、けれどそれで物事が噛み合ったりもする。動画とは、いや種族としてではない「人間」とはそういうものだ。そして、無人島サバイバルものとは一つには人間らしさの何たるかを私達に問うものではなかったか。

 

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サバイバルするのがヴァンパイアでも目的が動画撮影でも、無人島は人間性を問い直す。真夜中ぱんチ5話は軽やかにそして面白おかしく、本作が「ちゃんと」無人島サバイバルを描けることを証明してみせたのである。

 

感想

以上、マヨぱん5話レビューでした。パロディは最近ツボから外れて感じることが増えたのですが、十景の「一条くんに釘の調整もお願いしちゃったし!」はさすがに予想外で笑ってしまいました。
あと、ゆきが毎回美味しいところを持っていくのについやられてしまいます。彼女に真咲が泣きつく場面を描かないのもナイス編集。さてさて、次回は苺子が主役なのかしらん。

 

 

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