“最強”の修正者――「全修。」6話レビュー&感想

©全修。/MAPPA

協力の「全修。」。6話ではヴォイドへの再挑戦が描かれる。その時ナツ子は“最強”の修正者である。

 

 

全修。 第6話「変化。」

zenshu-anime.com

1.失われた”最強”

ナツ子の絵を打ち破り、最後の街へ侵入しサナギとなったヴォイド。1人で再びヴォイドに挑もうとするナツ子をルークは止めるが……

 

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強力の「全修。」。6話は前回敗北したナツ子たちの反撃回だ。スタンドプレーに走っていたナツ子や負傷で戦列を離れていたジャスティスがルークたちと力を合わせる姿が手に汗握る話であるが、個人的に特に印象に残ったのは「最強」の扱いであった。今回ジャスティスはナツ子を最強の戦士と評してルークから否定されるも、戦いが終わった後にはやはり彼女を最強の戦士だと語っている。そこに起きている変化、あるいは「修正」を考えてみたい。

 

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この6話はナツ子が「滅びゆく物語」の世界にやってくる前、ナインソルジャーが全員揃っていた時期の活躍から始まっている。ジャスティスをはじめ仲間たちが息を合わせて巨大なヴォイドを撃破する姿は彼らの黄金時代と言ってよく、敵の力が日に日に強まっていると感じながらも一同はそこにみじんも恐れを抱いていなかった。どれほど強い相手であっても負ける気がしないその気持ちはつまり、「最強」と呼ぶにふさわしいものだったろう。だがその後の戦いの中で彼らは数を減らしていき、負傷を隠して戦列を離れたジャスティスと戦い続けるルークはかつてのようにグータッチを交わすこともしない。……かつての「最強」はもうそこにない。

 

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現在、ナインソルジャーには新たにナツ子が加わっている。もっと前から彼女がいればヴォイドの狙うソウルフューチャーが残り1つまで減ることもなかったのではと思えるような、隔絶した力の持ち主……けれどルークはナツ子を最強とは認めない。独断専行が目立ち自分たちを振り回してばかりの彼女との関係が、あの輝かしい「最強」のはずがないからだ。だが、それは彼女ばかりのせいなのだろうか?

 

2.“最強”の修正者

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「最強」が今のナインソルジャーに無い理由。それはルークの・・・・独断専行にもある。真面目さゆえに他人の分まで責任を背負い込んでしまう彼は、戦いでは協力していてもある意味で仲間を軽んじているからだ。それがジャスティスがナインソルジャーを離れる一因になったのは前回語られた通り。またジャスティスの方もジャスティスの方で、ルークを気遣うあまり負傷を隠して薄情者の汚名を着るのは彼を子供扱いして軽んじているとも言える。1人で何かしているつもりになってしまっているのはなにもナツ子だけではない。そして奇妙な話だが、そんな2人を変化させているのはナツ子なのだ。

 

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ナツ子はメチャクチャな人物である。それはメメルンに諭され仲間と力を合わせるようになった後ですら同様で、ヴォイドとの決戦ではルークの見えるところまで机ごと自分を載せてほしいとジャスティスに頼んだりすらする。「飛ばなくていい、浮いて!」などというのは分かったような分からないような理屈で、ドラゴン使いが荒いとこぼすようにジャスティスさえ振り回されっ放しだ。けれど、その強引さがあればこそ彼はもう一度戦列に加わることができた。ある意味で身勝手さに救われたのだ。これはルークの方も同様で、ジャステイスの前で彼女を口を極めて罵っている時のルークには真面目過ぎる勇者様の面影はない。そう、ナツ子の行動があまりに破天荒だから彼はそこに自分の責任を感じる余地がないのだ。彼女に悩まされるその時、ルークは1人で全てを背負い込まずに済んでいるのである。

 

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ルーク「ほんと、馬鹿だな」

 

初めて敗北を喫したナツ子は今回、自分ひとりではなく仲間と一緒に戦うことを学んだ。けれどそれは彼女だけが愚かだったのではなく、共闘し再びグータッチできたルークやジャスティスも同様だ。なぜ翼のことを黙っていたんだと尋ねるルークは本当のところ理由を既に察しているだろうし、ジャスティスは見栄のためだと前回と違うことを言うがこれもようやく言えた本音ではあるのだろう。分かってみれば、言えてみればこんなに簡単なこともなかったはずなのに。
ルークの言う「ほんと、馬鹿だな」とは自分のことでありジャスティスのことであり――そしてやっぱり、描き終えて眠るナツ子に向けられた言葉でもある。それはナインソルジャーが9人いた頃とは違うが、けれどかつてルークたちの心にあったのと同じ「最強」だ。ナツ子の存在がそうさせたなら、やはり最強の戦士の称号は彼女にこそふさわしい。

 

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ジャスティス「なるほどねえ。勇者様の心を開いた最強の戦士、ってわけか」

 

広瀬ナツ子は“最強”の修正者である。”最強”とは何かを、一度は壊れたそれへのきざはしを、見事彼女は修正してみせたのだ。

 

感想

以上、全修のアニメ6話レビューでした。本作には「修正する者は修正される側でもあり、両者の間に『全修』がある」……みたいなイメージがぼんやりあるのですが、ますます複雑になってきたなと感じます。意外性に偏重しない展開で思いが入り乱れてるの、視聴し甲斐があるなあ……さてさて、次回予告では校舎が映ってましたが、ナツ子の過去に迫る感じになったりするのでしょうか。どんな内容なのか楽しみです。

 

 

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